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26章 建国祭

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「ミゲルロディア大公閣下は、既に魔王が存在していると結論つけましたよ」

 シェリーの爆弾発言にイーリスクロムの声が室内に響き渡る。

『君はあと数年は猶予があると言っていたはずだ!』

「正確には5年以内です」

 イーリスクロムの曖昧な言い方にシェリーは訂正をする。それも魔王の情報を与えたのが白き神ということで、それなりの信用性はある。

「何事にも予想外はつきものです。一国を治める者であるなら、柔軟な対応をしていただきたいですね」

 その言葉にイーリスクロムのため息が白い板から聞こえてきた。

『はぁ。僕のように試行錯誤しながら国を治めている者を、そこにいる御仁方と比べないで欲しい』

「だから、教えているではないですか。前回はグローリア国が主導で動いたのですよね。では、今回はどの国が主導権を握りますか?」

 魔王という強敵に向かうために国々をまとめ上げる中心となる国はどこかとシェリーは問いかける。

「ラース公国ですか?しかし、ラース公国は戦える組織はありません。ギラン共和国ですか?あの国はきっと今回も守りに徹するでしょうね。フェクトス総統閣下もシド総帥閣下も自国のことには熱心ですが、他のことに気が回るタイプではありません」

 シェリーは口にはしないが、マルス帝国は論外であり、炎国もわざわざ大陸に人員を派遣してまで、魔王という存在と戦おうとはしないだろう。強いて言うのであれば、シェリーが炎王を引っ張り出してくるぐらいだ。

「だったら、どこが指導権を握らなければならないかわかりますよね」

『頭ではわかっているよ。でも、すべきことがありすぎるんだよ』

「以前から言っているように、この期に命令系統を1本化すべきです。それともクロードさんにおんぶに抱っこしてもらわなければ、立てませんか?」

 シェリーはイーリスクロムに対して、死人の手を借りなければ、何もできないのかと、嫌な言い方をした。

『君にはわからないだろうが、正論を言っても、できることとできないことがあるんだよ』

 国という巨大なものを動かすのであれば、正しいことばかりで進めない。そこには人の思惑が絡み合って、一筋縄ではいかないものだ。

「佐々木さん。web会議できないだろうか」

 シェリーとイーリスクロムの平行線の話に、炎王が別のやり方はどうだと提案してきた。

「炎王。ネット回線はありませんよ」

 シェリーの鋭い一言でぶった切られる。そのことに炎王は苦笑いを浮かべた。インターネットが存在しないことぐらい理解していると。

「あの発明家のユーフィア・ナヴァルなら、カメラと映し出すモニターぐらい作れるんじゃないのか?」

『ドラゴンの瞳と幻視蝶の鱗粉があれば、できますよ』

 突然、ここには居ない人物の声が聞こえてきた。

「ユーフィアさん。盗聴は犯罪です」

『シェリーさん。法整備はされていないので、法律では罰せられません』

 シェリーとイーリスクロムの通信を傍受していたユーフィアだった。確かに通信に関する法律がなければ、罰則規定に引っかからない。

『そちらに、どのような方がいらっしゃるか存じませんが、私はユーフィア・ナヴァルと申します。国王陛下。通信に割り込んでしまって申し訳ありません。説明書だけ渡して保留機能を言わなかったのは落ち度でした。これは私の責任ですので、謝罪させていただきます。すみませんでした』

 ユーフィアは始めから通信を傍受して、聞いていたようだ。

『勿論、作らせていただきますが、先程言った素材がないので、厳しいですわ。それをいくつ作ればいいのですか?20個「ユーフィアさん」……つい、興奮してしまいました』

 ユーフィアのいつも通りのテンションで、物作りの意欲を押し出した言葉をシェリーは遮る。このままだと、話し合いも何も出来ないと。

「ユーフィアさん。それは後で話し合うので、黙って盗聴に専念しておいてください」

「佐々木さん。もう少し言い方というものがあると思う」

 シェリーの犯罪臭い言葉に炎王がたしなめる。別の言い方というものがあるだろうと。

「炎王。ユーフィアさんはただ単に、通信の長距離での安定性を調べているだけだと思うのでそれでいいのですよ」

『あら?シェリーさん。あとは高い山脈は障害になるのかと、どれぐらいの期間一回で通信し続けられるかですわね』

 シェリーの言葉に補足をいれるユーフィア。確かにラース公国とシーラン王国の間には高い山脈がある。普通であるなら、衛生通信をすべきところだ。

「という感じですのでいいのです」

「佐々木さんの口の悪さに動じないのならそれでいいか。ああ、それでweb会議だと物だけを送って、決められた日の時間に魔道具を起動させれば、国主となる者たちが自国に居ながら、議会を開ける。説明が一度で済むだろう」

『では、それで行こう』

 炎王の説明が一度ですむという言葉にイーリスクロムは、即決したのだった。

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