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27章 魔人と神人

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「あ!ここの空島も動かないよ!」

 ラフテリアが天井を指して言った。それは天井の更に上。カイルが門の残骸があると言っていた島とも言えない浮遊していた空島だ。

「それは元々あった空島ね」

 シェリーは魔女の言葉に口元に手を当てて考えている。竜人が住まう国。セイルーン竜王国。そこは大陸と海を隔てている島としか聞いていない。セイルーン竜王国の空島は神があるべきものと定めたために、大陸と同じ様に動かない存在。
 しかし、シェリーが知る空島は見える人と見えない人が存在し、常に移動している。なぜ、移動しなければならなかったのか。

「見える見えないは隠蔽の魔術が中途半端だから?でも、元々空島が存在しているのなら、見えなくする必要は無かったはず」

 そもそも見えなくする必要はないとシェリーは結論づけた。何故なら、空島にはたどり着けないのだから……いや目の前の大魔女エリザベートは空島に行っているということは、空島に行く条件があるはず。

「それね。自分たち以外空島にたどり着けないようにしたからね」

 エリザベートの言葉にシェリーは首を傾げる。エリザベート自身は空島に行っているではないかと。

「結局ね。竜人とアーク族。どちらが勝ったと思う?」

 エリザベートは竜人のカイルを見て言った。それも“思う”と聞いたのだ。史実を知っているカイルに対してにだ。

「史実では引き分けです。竜人族もアーク族も互いの領分を侵略しないと誓約されたと」

「竜人側から見れば引き分け、けれど、アーク族から見れば惨敗……だったらしいわ。魔導兵を見たでしょ?いくらアーク族自身が戦わなくても、多くは量産できなかったようだし、竜人族と比べれば断然的に弱い」

「エリー。違うよ」

 エリザベートの言葉をラフテリアが否定した。そう、エリザベートはシェリーが気付いた真実を知ってはいなかった。魔導兵がアーク族だと。

「あのおもちゃは、アーク族だったよ。六番目が見つけたよ」

「え?アーク族?あの魔導兵が?」

 エリザベートはあまりにもの以外性に立ち上がって、シェリーを見た。

「どういうこと?」

「シュロスという名は聞いたことはありますか?」

「アーク族の王。シュロス王ね」

 やはり、エリザベートが言っていた永遠に生きている王とは、シュロスのことだった。

「その者が持つ能力は、普通ではなかったのです。人の心を力として動く物を作り出す能力だったのです」
「なになに!その興味がそそられる話!聞きたいわ!」

 立ったエリザベートはテーブル越しにシェリーに近づくように前のめりになって、聞いてきた。

「心ってどうやって力にするの?そもそも取り出せるの?」

「私はシュロスではありませんので、知りません。ただ……ただ、考え方とすれば、人という存在がいる限り、その魔道具は動き続ける」
「永久的に動く魔道具。凄いわ……永久……永遠?永遠に生きる王……あら?てっきり私は同類と思っていたけど、違いそうね」

 同類。それは一度死んで白き神の楔から解き放たれ、他の神々の力を得て生きた者のことだ。
 エリザベートは白き神から解き放たれたものの、女神ナディアの血と力からは逃れられず、愛し子のエリザベートは番という存在に捕まるまで、生き続けることとなった。

「ふーん。これは面白いわ。あの魔導兵はアーク族だった。面白みがない攻撃をしてくるものだと思っていたけど、元がアーク族なら納得ね。そして、量産ができない。できないのかしら?あいつらなら、誰も彼もを魔導兵にしそうなのに?」

「それはラフテリア様が魔導兵に触って壊れたことと、同じです」

「あら?それはラフテリアの魔人の力が強すぎて壊れたのでしょ?」

「そうです。魔人の力は人の負の心の塊……」

「「人の心」」

 魔女と聖女の声が重なった。そもそもだ。なぜ、人の心というものが具現化したのだろうか。具現化しなければ、魔物も存在せず、魔人も存在せず、魔王も存在しなかったはずだ。

 シェリーは木の板の天井しか見えない上を見上げる。そして、何かを掴んだかのように目を見開いた。

「空を移動する空島。それは同じ軌道を移動している。まるで大きな円を描くように」
「何十にも渡る円。魔術の陣ね。それもかなり巨大な」
「それは世界全てに影響を与えた。こころの具現化」
「まるで自分たちが神だと言うようね。それはいわゆる……」
「「世界の変革」」

 最初の変革。それがすべての始まりだったとすれば、どうだろうか?


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