60 / 78
炎国への旅路編
26話 香ばしい匂いはお腹が空きます
しおりを挟む
襲われていると聞こえた方を見ますと、窓越しに外を見ているクストがいました。そして、隣接している部屋の扉が勢いよく開け放たれ
「ウネウネの襲来です!」
寝癖がつき、はねた髪のまま部屋に入って来たセーラが報告に来てくれましたが、そのウネウネに名前はないのでしょうか。
「大丈夫なのでしょうか?」
「今のところは対処出来ているようだ。船に接触される前に触手を切り落としている。まぁ。そのための船員だろ?ここの船員は全員戦闘ができるように鍛えられているようだしな。」
クストの横に行って窓の外を見てみますが、まだ日が登る前の空が白み始めた時間帯なので、薄暗くよくわかりません。クストには見えているのですね。
また、下から突き上げるような振動が来ました。立っている事が出来ず、よろめいてしまいましたが、クストに抱きあげられ
「ユーフィア。立っていると危ないから座っていろ。セーラ、マリアはどうした。」
「マリアさんは外の様子を見に行くと言って部屋を出て行きました。直ぐに戻って来るとは思い「奥様!」す。」
セーラの話している途中でマリアが戻ってきました。
「奥様。人手が足りないようなので私も戦闘に参加してまいります。」
「マリア。その前にどういう状況か説明してからいけ。」
「はい。ただいま。クラーケンにこの船は襲われています。ただ、産卵時期のクラーケンは凶暴化しておりまして、ただいま3匹に襲われております。」
3匹!
「それは大丈夫なのですか?」
「このマリアがいるから大丈夫です。奥様はここにいてくださいませ。」
そう言ってマリアが部屋を出ていってしまいました。
「クスト、大丈夫でしょうか。」
私はクストを仰ぎみます。クラーケンを実際に見たことはありませんが、3匹同時は危険ではないのでしょうか。
「クラーケンはAクラスの魔物だ。この狭い船の上では少々キツイかもしれんな。」
「私、手伝ってきます!」
クストの腕から降りようとしますが、がっしり抱かれていて動けません。
「奥様。海に落ちたら死んでしまいます。そんな危険なところへ奥様を行かすわけにはいきません。」
セーラが両手を広げ部屋の外に私を出さないように構えています。セーラ、海に落ちたぐらいでは死にませんよ。それに海を渡ると聞いていましたのでそれなりの備えはしてあります。
「セーラ。大丈夫ですよ。いつも使っているスクーターを海でも使えるようにしたものを用意していますし、特別な魔道具も作ってあります。」
そうです。こういうこともあろうかと、水上バイクを用意しているのです。
「なので、行きますのでクスト降ろしてもらえませんか?」
クストに頼みますが、降ろしてもらえません。しかし、そのまま部屋の外に出ていきました。えっと?
「俺も行くから。」
そうですか。でも、水上バイクは私が乗るために作ったので一人用ですよ。
甲板に出ますと水平線から太陽が顔を出し、私の目にも状況がわかるようになっていました。水しぶきが掛かった甲板に幾つもの吸盤が付いた長い触腕が船体にからみ付いており、それを船員たちが斬ってはいるのですが、斬ったところから再生していってます。クラーケンの腕は再生するものなのですか?
特殊個体でたまにそういうクラーケンがいると、一匹なら対処できるが、三匹は流石にキツイと。
船内の入り口を守っている船員さんが肩で息をしながら教えてくれました。
クストがやっと降ろしてくれましたから、亜空間収納から魔道馬車を作ったときに遊び心で作った反重力場を生み出す腕輪を取り出しつけます。そう、これがあれば空を飛べるのです。だから、海に落ちても水面に出れば問題ないのです。
火炎放射器を取り出し、まずは絡みついている腕を焼切ることにします。このままだと船ごと海に引きずり込まれそうですからね。
「では、行ってきますので、危険ですから私にあまり近づかないでくださいね。」
そう言って私は腕輪に魔力を流し込み、重力から解放されました。
「うぉ!」
クストが驚いていますが、スクーターも馬車も浮くのですから、私が浮いたぐらいで驚かなでほしいです。
「奥様。素晴らしいです。奥様は御使い様だったのですね。」
セーラが何か言っていますが、私はミツカイなんて怪しい者ではありませんよ。
火炎放射器を使って浮遊しながら船体に絡み付いている6本の触腕を焼ききっていきます。辺りには香ばしいイカ焼きの匂いが・・・朝ごはん前にこの匂いはダメですよね。思わずお腹がグーと鳴ってしまいました。
あながちセーラのお兄さんの言葉は間違っていなかったのかもしれません。焼き切ったら食べたくなってしまいました。
「ウネウネの襲来です!」
寝癖がつき、はねた髪のまま部屋に入って来たセーラが報告に来てくれましたが、そのウネウネに名前はないのでしょうか。
「大丈夫なのでしょうか?」
「今のところは対処出来ているようだ。船に接触される前に触手を切り落としている。まぁ。そのための船員だろ?ここの船員は全員戦闘ができるように鍛えられているようだしな。」
クストの横に行って窓の外を見てみますが、まだ日が登る前の空が白み始めた時間帯なので、薄暗くよくわかりません。クストには見えているのですね。
また、下から突き上げるような振動が来ました。立っている事が出来ず、よろめいてしまいましたが、クストに抱きあげられ
「ユーフィア。立っていると危ないから座っていろ。セーラ、マリアはどうした。」
「マリアさんは外の様子を見に行くと言って部屋を出て行きました。直ぐに戻って来るとは思い「奥様!」す。」
セーラの話している途中でマリアが戻ってきました。
「奥様。人手が足りないようなので私も戦闘に参加してまいります。」
「マリア。その前にどういう状況か説明してからいけ。」
「はい。ただいま。クラーケンにこの船は襲われています。ただ、産卵時期のクラーケンは凶暴化しておりまして、ただいま3匹に襲われております。」
3匹!
「それは大丈夫なのですか?」
「このマリアがいるから大丈夫です。奥様はここにいてくださいませ。」
そう言ってマリアが部屋を出ていってしまいました。
「クスト、大丈夫でしょうか。」
私はクストを仰ぎみます。クラーケンを実際に見たことはありませんが、3匹同時は危険ではないのでしょうか。
「クラーケンはAクラスの魔物だ。この狭い船の上では少々キツイかもしれんな。」
「私、手伝ってきます!」
クストの腕から降りようとしますが、がっしり抱かれていて動けません。
「奥様。海に落ちたら死んでしまいます。そんな危険なところへ奥様を行かすわけにはいきません。」
セーラが両手を広げ部屋の外に私を出さないように構えています。セーラ、海に落ちたぐらいでは死にませんよ。それに海を渡ると聞いていましたのでそれなりの備えはしてあります。
「セーラ。大丈夫ですよ。いつも使っているスクーターを海でも使えるようにしたものを用意していますし、特別な魔道具も作ってあります。」
そうです。こういうこともあろうかと、水上バイクを用意しているのです。
「なので、行きますのでクスト降ろしてもらえませんか?」
クストに頼みますが、降ろしてもらえません。しかし、そのまま部屋の外に出ていきました。えっと?
「俺も行くから。」
そうですか。でも、水上バイクは私が乗るために作ったので一人用ですよ。
甲板に出ますと水平線から太陽が顔を出し、私の目にも状況がわかるようになっていました。水しぶきが掛かった甲板に幾つもの吸盤が付いた長い触腕が船体にからみ付いており、それを船員たちが斬ってはいるのですが、斬ったところから再生していってます。クラーケンの腕は再生するものなのですか?
特殊個体でたまにそういうクラーケンがいると、一匹なら対処できるが、三匹は流石にキツイと。
船内の入り口を守っている船員さんが肩で息をしながら教えてくれました。
クストがやっと降ろしてくれましたから、亜空間収納から魔道馬車を作ったときに遊び心で作った反重力場を生み出す腕輪を取り出しつけます。そう、これがあれば空を飛べるのです。だから、海に落ちても水面に出れば問題ないのです。
火炎放射器を取り出し、まずは絡みついている腕を焼切ることにします。このままだと船ごと海に引きずり込まれそうですからね。
「では、行ってきますので、危険ですから私にあまり近づかないでくださいね。」
そう言って私は腕輪に魔力を流し込み、重力から解放されました。
「うぉ!」
クストが驚いていますが、スクーターも馬車も浮くのですから、私が浮いたぐらいで驚かなでほしいです。
「奥様。素晴らしいです。奥様は御使い様だったのですね。」
セーラが何か言っていますが、私はミツカイなんて怪しい者ではありませんよ。
火炎放射器を使って浮遊しながら船体に絡み付いている6本の触腕を焼ききっていきます。辺りには香ばしいイカ焼きの匂いが・・・朝ごはん前にこの匂いはダメですよね。思わずお腹がグーと鳴ってしまいました。
あながちセーラのお兄さんの言葉は間違っていなかったのかもしれません。焼き切ったら食べたくなってしまいました。
54
あなたにおすすめの小説
婚約者の番
ありがとうございました。さようなら
恋愛
私の婚約者は、獅子の獣人だ。
大切にされる日々を過ごして、私はある日1番恐れていた事が起こってしまった。
「彼を譲ってくれない?」
とうとう彼の番が現れてしまった。
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
運命の番?棄てたのは貴方です
ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。
番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。
※自己設定満載ですので気を付けてください。
※性描写はないですが、一線を越える個所もあります
※多少の残酷表現あります。
以上2点からセルフレイティング
あなたが「消えてくれたらいいのに」と言ったから
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
「消えてくれたらいいのに」
結婚式を終えたばかりの新郎の呟きに妻となった王女は……
短いお話です。
新郎→のち王女に視点を変えての数話予定。
4/16 一話目訂正しました。『一人娘』→『第一王女』
前世で私を嫌っていた番の彼が何故か迫って来ます!
ハルン
恋愛
私には前世の記憶がある。
前世では犬の獣人だった私。
私の番は幼馴染の人間だった。自身の番が愛おしくて仕方なかった。しかし、人間の彼には獣人の番への感情が理解出来ず嫌われていた。それでも諦めずに彼に好きだと告げる日々。
そんな時、とある出来事で命を落とした私。
彼に会えなくなるのは悲しいがこれでもう彼に迷惑をかけなくて済む…。そう思いながら私の人生は幕を閉じた……筈だった。
番(つがい)はいりません
にいるず
恋愛
私の世界には、番(つがい)という厄介なものがあります。私は番というものが大嫌いです。なぜなら私フェロメナ・パーソンズは、番が理由で婚約解消されたからです。私の母も私が幼い頃、番に父をとられ私たちは捨てられました。でもものすごく番を嫌っている私には、特殊な番の体質があったようです。もうかんべんしてください。静かに生きていきたいのですから。そう思っていたのに外見はキラキラの王子様、でも中身は口を開けば毒舌を吐くどうしようもない正真正銘の王太子様が私の周りをうろつき始めました。
本編、王太子視点、元婚約者視点と続きます。約3万字程度です。よろしくお願いします。
2番目の1番【完】
綾崎オトイ
恋愛
結婚して3年目。
騎士である彼は王女様の護衛騎士で、王女様のことを何よりも誰よりも大事にしていて支えていてお護りしている。
それこそが彼の誇りで彼の幸せで、だから、私は彼の1番にはなれない。
王女様には私は勝てない。
結婚3年目の夫に祝われない誕生日に起こった事件で限界がきてしまった彼女と、彼女の存在と献身が当たり前になってしまっていたバカ真面目で忠誠心の厚い騎士の不器用な想いの話。
※ざまぁ要素は皆無です。旦那様最低、と思われる方いるかもですがそのまま結ばれますので苦手な方はお戻りいただけると嬉しいです
自己満全開の作品で個人の趣味を詰め込んで殴り書きしているため、地雷多めです。苦手な方はそっとお戻りください。
批判・中傷等、作者の執筆意欲削られそうなものは遠慮なく削除させていただきます…
【本編,番外編完結】私、殺されちゃったの? 婚約者に懸想した王女に殺された侯爵令嬢は巻き戻った世界で殺されないように策を練る
金峯蓮華
恋愛
侯爵令嬢のベルティーユは婚約者に懸想した王女に嫌がらせをされたあげく殺された。
ちょっと待ってよ。なんで私が殺されなきゃならないの?
お父様、ジェフリー様、私は死にたくないから婚約を解消してって言ったよね。
ジェフリー様、必ず守るから少し待ってほしいって言ったよね。
少し待っている間に殺されちゃったじゃないの。
どうしてくれるのよ。
ちょっと神様! やり直させなさいよ! 何で私が殺されなきゃならないのよ!
腹立つわ〜。
舞台は独自の世界です。
ご都合主義です。
緩いお話なので気楽にお読みいただけると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる