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炎国への旅路編
32話 なぜサウザール公爵の名が?
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「どうしたの?」
泣いている鬼族の子供に声を掛けました。金色の涙に濡れた目を向けられました。
「ぼく、よっわいから。ひっく。先生に。ひっく。叩かれた。ひっく。」
叩かれた?鬼族の子供が顔を上げたことで、今まで見えなかったものが見えました。子供が押さえている脇腹から血が出ているではありませんか!叩かれただけでこんな血が出るはずはないじゃないですか!
鬼族の子供に手をかざし光の魔術をかけます。
「『癒やしの光』・・・ねぇ。君は剣士になりたいのかな?」
「あれ?いたくない。ぼくいたいのはイヤ。でも、カタナは好きだから鍛冶師になりたい。」
「そう、だったらそれをお父さんとお母さんに言ってみればいいと思うわ。」
「え?鍛冶師になりたいって?」
「そう。」
「そっか、言えばいいんだ。あの・・・お姉さんは巫女様ですか?」
「はい?」
ミコサマ?そう思った瞬間意識が途切れました。
そして、波に揺れる船の中で両腕に腕輪をはめられ、船の柱に縛られているのです。はぁ。こんなところで魔力も魔道具も封じる私が作った捕縛の腕輪を付けられるなんて思いもよりませんでしたよ。
あの鬼の子供のせいで捕まったとは思いませんが、私を狙ってこんな強引なことをしたのでしょうか?しかし、サウザール公爵からの命で動いているのなら、私のすぐ側に小隊規模の軍を置くと思うのですが、そうではないのでしょうか。
ん?ドアの外で話声が聞こえます。耳を澄ませて聞きますと
『おい、あの女で間違いないのか?』
『船員の証言と一致しているから間違いない。』
船員?フィーディス商会の船員のことでしょうか。
『それに光の魔術が使えて自由にしていられるのは帝国とこの国ぐらいだろ?』
ああ、確かに今まで忘れていましたけど、光魔法が使えるとわかった時点で教会に保護されるのでしたね。マルス帝国の教会にエルフ族はいませんので、保護という名の強制連行はされないのです。
『確かに船員が光の魔術で治癒をしてもらったと言っていたしな。』
『ああ、この目で治癒の魔術を確認したから間違いはないなずだ。それにあの国で黒髪ではない人族と言うだけで光の巫女だと言っていいだろう。』
ミコ・・・光の巫女!え?私、巫女じゃないですよ。確かに人族ですがヒト間違いじゃないですか!
『光の巫女を使えばあの実験も完成する。サウザール公爵様もお喜びになるだろうな。』
光の巫女を使う?実験?一体、サウザール公爵は何をしようとしているのでしょう。
『俺はあの実験は好きじゃないな。どれだけ奴隷がいようと足りないんじゃないのか?』
『そう言うな。この巫女がいれば全て解決だ。数千、数万の奴隷の犠牲も浮かばれるというものだ。まぁ。巫女一人の命なんて数万の奴隷如きと比べるのもおこがましいがな。』
数千!数万の奴隷を犠牲にしたですって!ってこのままだと私は殺されるってことじゃないですか!
取り敢えず、この捕縛の腕輪をなんとかしなければなりません。ふふふ。一度エルフ族に捕まってから、このようなことが起きるかもしれないとちゃんと用意していたのですよ。私が作った魔道具で身動きがとれなくなるのは避けたかったですからね。
指輪の魔道具を発動させます。これは捕縛の腕輪専用の解除装置です。この指輪に使っている魔石は鉱石を元に人工的に作り出した魔石を使用しているのです。ですから、人の魔力とも魔物の魔力とも違うので、この魔道具は阻害されないのです。
しかし、屋敷の地下に良質な魔力を帯びた鉱石があるなんて、運がいいですよね。
カチャリと腕輪が外れ落ちる音がして、腕が自由になりました。腕輪が外れたことにより、魔力が自由に使えることになり、魔道具も使えるようになりました。さっさと出ていきたいところですが、また、炎国に戻られて光の巫女という人が犠牲にならないように船の動力部を壊しておかないといけませんね。
この船の人達を何とかするべきなのでしょうが、この人達は命令を受けて行っているだけ、代わりが用意されて終わりなので意味がありません。
時間稼ぎとして、海を漂流してもらいましょう。運が良ければ陸にたどり着くことでしょうね。それが、この大陸か魔の大陸かは知りませんが。
亜空間収納のペンダントから防御力・身体能力特化の腕輪を取り出し両腕にはめます。そして、魔剣を腰に下げ、ハンドガンを両手に一丁ずつ持ちます。
あ、魔剣は普通の魔剣ですよ。過剰な攻撃力は船をも破壊してしまいますからね。それだと意味がありません。
そして、ドアを開け、未だにドアのところで話をしている二人に向かって発砲します。安心してくだい銃弾は雷撃仕様ですので、1刻痺れる程度ですよ。
______________
補足
屋敷の地下に良質な鉱石があった件について
これはユーフィアが言っていた運がいいとかではなく、王都メイルーンという場所が特殊な土地なのです。ユーフィアの話では詳しく語ることはないと思いますので、そういう場所なのだと思っていただければいいかと思います。
泣いている鬼族の子供に声を掛けました。金色の涙に濡れた目を向けられました。
「ぼく、よっわいから。ひっく。先生に。ひっく。叩かれた。ひっく。」
叩かれた?鬼族の子供が顔を上げたことで、今まで見えなかったものが見えました。子供が押さえている脇腹から血が出ているではありませんか!叩かれただけでこんな血が出るはずはないじゃないですか!
鬼族の子供に手をかざし光の魔術をかけます。
「『癒やしの光』・・・ねぇ。君は剣士になりたいのかな?」
「あれ?いたくない。ぼくいたいのはイヤ。でも、カタナは好きだから鍛冶師になりたい。」
「そう、だったらそれをお父さんとお母さんに言ってみればいいと思うわ。」
「え?鍛冶師になりたいって?」
「そう。」
「そっか、言えばいいんだ。あの・・・お姉さんは巫女様ですか?」
「はい?」
ミコサマ?そう思った瞬間意識が途切れました。
そして、波に揺れる船の中で両腕に腕輪をはめられ、船の柱に縛られているのです。はぁ。こんなところで魔力も魔道具も封じる私が作った捕縛の腕輪を付けられるなんて思いもよりませんでしたよ。
あの鬼の子供のせいで捕まったとは思いませんが、私を狙ってこんな強引なことをしたのでしょうか?しかし、サウザール公爵からの命で動いているのなら、私のすぐ側に小隊規模の軍を置くと思うのですが、そうではないのでしょうか。
ん?ドアの外で話声が聞こえます。耳を澄ませて聞きますと
『おい、あの女で間違いないのか?』
『船員の証言と一致しているから間違いない。』
船員?フィーディス商会の船員のことでしょうか。
『それに光の魔術が使えて自由にしていられるのは帝国とこの国ぐらいだろ?』
ああ、確かに今まで忘れていましたけど、光魔法が使えるとわかった時点で教会に保護されるのでしたね。マルス帝国の教会にエルフ族はいませんので、保護という名の強制連行はされないのです。
『確かに船員が光の魔術で治癒をしてもらったと言っていたしな。』
『ああ、この目で治癒の魔術を確認したから間違いはないなずだ。それにあの国で黒髪ではない人族と言うだけで光の巫女だと言っていいだろう。』
ミコ・・・光の巫女!え?私、巫女じゃないですよ。確かに人族ですがヒト間違いじゃないですか!
『光の巫女を使えばあの実験も完成する。サウザール公爵様もお喜びになるだろうな。』
光の巫女を使う?実験?一体、サウザール公爵は何をしようとしているのでしょう。
『俺はあの実験は好きじゃないな。どれだけ奴隷がいようと足りないんじゃないのか?』
『そう言うな。この巫女がいれば全て解決だ。数千、数万の奴隷の犠牲も浮かばれるというものだ。まぁ。巫女一人の命なんて数万の奴隷如きと比べるのもおこがましいがな。』
数千!数万の奴隷を犠牲にしたですって!ってこのままだと私は殺されるってことじゃないですか!
取り敢えず、この捕縛の腕輪をなんとかしなければなりません。ふふふ。一度エルフ族に捕まってから、このようなことが起きるかもしれないとちゃんと用意していたのですよ。私が作った魔道具で身動きがとれなくなるのは避けたかったですからね。
指輪の魔道具を発動させます。これは捕縛の腕輪専用の解除装置です。この指輪に使っている魔石は鉱石を元に人工的に作り出した魔石を使用しているのです。ですから、人の魔力とも魔物の魔力とも違うので、この魔道具は阻害されないのです。
しかし、屋敷の地下に良質な魔力を帯びた鉱石があるなんて、運がいいですよね。
カチャリと腕輪が外れ落ちる音がして、腕が自由になりました。腕輪が外れたことにより、魔力が自由に使えることになり、魔道具も使えるようになりました。さっさと出ていきたいところですが、また、炎国に戻られて光の巫女という人が犠牲にならないように船の動力部を壊しておかないといけませんね。
この船の人達を何とかするべきなのでしょうが、この人達は命令を受けて行っているだけ、代わりが用意されて終わりなので意味がありません。
時間稼ぎとして、海を漂流してもらいましょう。運が良ければ陸にたどり着くことでしょうね。それが、この大陸か魔の大陸かは知りませんが。
亜空間収納のペンダントから防御力・身体能力特化の腕輪を取り出し両腕にはめます。そして、魔剣を腰に下げ、ハンドガンを両手に一丁ずつ持ちます。
あ、魔剣は普通の魔剣ですよ。過剰な攻撃力は船をも破壊してしまいますからね。それだと意味がありません。
そして、ドアを開け、未だにドアのところで話をしている二人に向かって発砲します。安心してくだい銃弾は雷撃仕様ですので、1刻痺れる程度ですよ。
______________
補足
屋敷の地下に良質な鉱石があった件について
これはユーフィアが言っていた運がいいとかではなく、王都メイルーンという場所が特殊な土地なのです。ユーフィアの話では詳しく語ることはないと思いますので、そういう場所なのだと思っていただければいいかと思います。
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