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炎国への旅路編
38話 クストの側が一番安心できます
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「奥様。あんたは何をやらかしたんだ?」
小舟で迎えに来てくれたザックさんに聞かれてしまいました。何って・・・ちょっと失敗しただけです。
「ヒレのある蛇?を撃退するために氷雪弾を撃ったらこのようなことに不思議ですね。」
小舟はクストが待つ船に向かって行っています。これも魔石を動力源としているようです。これを作った人と一度お話しをしてみたいです。
「奥様。全然反省していないよな。なんで船の後ろや操縦桿をチェックしているんだよ。」
「気になりますよね。」
「ならねーよ。それに、マルスの魔武器でそんな威力は無いはずだ。続きは上にあがってからだ。この縄梯子を登ってくれ。」
ああ、もっと観察していたかったのに、もう船に着いてしまいました。船の上から垂れ下がっている梯子に手をかけ、登っていきます。やはり、救助ボートというよりフィッシングボートと変わらない作りのようでした。港が無い島にはあのような船も必要なのでしょう。炎国に戻れば同じ様な船が購入できないか探してみましょう。ぜひ、ばらしてみたいです。
そんなことを考えて手を次の縄に伸ばしていると腕を掴まれ引っ張り上げられてしまいました。
「ユーフィア!すまなかった。」
どうやら、引っ張り上げたのはクストでした。そのまま、抱きしめられましたが、腰の骨が折れそうです。そんなに力を込めないでください。
「駄犬!何度言えばわかるのですか!奥様は人族です。」
セーラのその言葉とともにミシミシという圧迫感から解放されました。そして、セーラに抱きしめられ
「奥様!駄犬に奥様を任せずにセーラが奥様と手を繋いでいればよかったのです。このセーラが!」
ギブギブ!セーラもクストと変わらない圧力で締めてきました。い、息が・・・。
「奥様。」
マリアの声と共に息ができるようになりました。目の前にはセーラの代わりにマリアがおり、私の手を握っていました。
「奥様。申し訳ございませんでした。奥様を喜ばせようと内緒でセーラと共にこれを購入している間に奥様がさらわれてしまうなんて、奥様の侍女失格です。」
そう言いながらマリアは桜の柄がついた便箋用紙を差し出して来ました。私があの少女からもらった便箋用紙を気にしていたので、マリアとセーラは探して購入してくれていたそうなのです。でも、私が気にしていたのは桜の便箋用紙だからではなかったのですよ。これは多分こちらの世界で作られた物なのでしょう。紙に少しザラつきがあります。
「ありがとう。マリア、わざわざ探してくれていたのね。嬉しいわ。」
「しかし」
マリアが言葉を続けようとするのを止めます。
「いいのよ。みんな無事なんだから。」
「よくねーよ。」
振り返ると、キョウさんがそこにいました。なんだか怒っているようです。
「なぁ。俺の話し聞いていたよな。一人で行動するな。路地に入るな。何かあるなら誰かに声をかける。言ったはずだよな。」
確かに言っていました。でも・・・
「気がつくと誰も居なくなっていましたし、周りの方の視線が気になってしまって」
「それに関しても言ったよな。炎国の人達は大陸の人にいい感情を持っていないと」
それも聞いていました。けれど、どういうものかわかっていなかったのです。ただ、そこにいるだけで、あのような視線を向けられるなんて、話を聞いてわかったような気がしていただけなのです。
「斑猫。ユーフィアをせめるな。俺が悪いんだから。」
クストに抱き寄せられていました。ああ、クストの側が一番安心できます。
「旦那もさぁ。ああ、いや。衝動的になることがあるのはわかるからなぁ。はぁ。さっきの魚人の人じゃないけどさぁ。あんた達にもう関わりたくないってのが本音だ。こっちも仕事で炎国に来ているんだよ。余計なことを増やさないでほしい。」
「ああ、すまん。」
あ、でも・・・
「でも、この船の船員の人が私を攫った人に話したから、私が攫われたみたいですよ。何故か巫女という人と勘違いしたようです。」
「はぁ?どういうことだ?」
海から上がって来たザックさんがこちらにやって来ました。
「取り敢えず、船の中に入れ詳しくは中で聞く。キョウ、後は頼んだぞ。」
「なるべく早くに終わらせてくれ、俺一人でギランまで戻るのは流石にしんどい。」
「そんなに、かからないだろう。」
ちょっと待って!
「ギランに戻るのですか?まだ予定では1日あったはずです。」
二人の兄弟に聞きますが、二人してため息を吐かれました。私の質問にザックさんが答えてくれました。
「俺は問題を起こさなければいいと言ったよな。しかし、問題が起きたから強制出国だ。」
強制出国ですって!
小舟で迎えに来てくれたザックさんに聞かれてしまいました。何って・・・ちょっと失敗しただけです。
「ヒレのある蛇?を撃退するために氷雪弾を撃ったらこのようなことに不思議ですね。」
小舟はクストが待つ船に向かって行っています。これも魔石を動力源としているようです。これを作った人と一度お話しをしてみたいです。
「奥様。全然反省していないよな。なんで船の後ろや操縦桿をチェックしているんだよ。」
「気になりますよね。」
「ならねーよ。それに、マルスの魔武器でそんな威力は無いはずだ。続きは上にあがってからだ。この縄梯子を登ってくれ。」
ああ、もっと観察していたかったのに、もう船に着いてしまいました。船の上から垂れ下がっている梯子に手をかけ、登っていきます。やはり、救助ボートというよりフィッシングボートと変わらない作りのようでした。港が無い島にはあのような船も必要なのでしょう。炎国に戻れば同じ様な船が購入できないか探してみましょう。ぜひ、ばらしてみたいです。
そんなことを考えて手を次の縄に伸ばしていると腕を掴まれ引っ張り上げられてしまいました。
「ユーフィア!すまなかった。」
どうやら、引っ張り上げたのはクストでした。そのまま、抱きしめられましたが、腰の骨が折れそうです。そんなに力を込めないでください。
「駄犬!何度言えばわかるのですか!奥様は人族です。」
セーラのその言葉とともにミシミシという圧迫感から解放されました。そして、セーラに抱きしめられ
「奥様!駄犬に奥様を任せずにセーラが奥様と手を繋いでいればよかったのです。このセーラが!」
ギブギブ!セーラもクストと変わらない圧力で締めてきました。い、息が・・・。
「奥様。」
マリアの声と共に息ができるようになりました。目の前にはセーラの代わりにマリアがおり、私の手を握っていました。
「奥様。申し訳ございませんでした。奥様を喜ばせようと内緒でセーラと共にこれを購入している間に奥様がさらわれてしまうなんて、奥様の侍女失格です。」
そう言いながらマリアは桜の柄がついた便箋用紙を差し出して来ました。私があの少女からもらった便箋用紙を気にしていたので、マリアとセーラは探して購入してくれていたそうなのです。でも、私が気にしていたのは桜の便箋用紙だからではなかったのですよ。これは多分こちらの世界で作られた物なのでしょう。紙に少しザラつきがあります。
「ありがとう。マリア、わざわざ探してくれていたのね。嬉しいわ。」
「しかし」
マリアが言葉を続けようとするのを止めます。
「いいのよ。みんな無事なんだから。」
「よくねーよ。」
振り返ると、キョウさんがそこにいました。なんだか怒っているようです。
「なぁ。俺の話し聞いていたよな。一人で行動するな。路地に入るな。何かあるなら誰かに声をかける。言ったはずだよな。」
確かに言っていました。でも・・・
「気がつくと誰も居なくなっていましたし、周りの方の視線が気になってしまって」
「それに関しても言ったよな。炎国の人達は大陸の人にいい感情を持っていないと」
それも聞いていました。けれど、どういうものかわかっていなかったのです。ただ、そこにいるだけで、あのような視線を向けられるなんて、話を聞いてわかったような気がしていただけなのです。
「斑猫。ユーフィアをせめるな。俺が悪いんだから。」
クストに抱き寄せられていました。ああ、クストの側が一番安心できます。
「旦那もさぁ。ああ、いや。衝動的になることがあるのはわかるからなぁ。はぁ。さっきの魚人の人じゃないけどさぁ。あんた達にもう関わりたくないってのが本音だ。こっちも仕事で炎国に来ているんだよ。余計なことを増やさないでほしい。」
「ああ、すまん。」
あ、でも・・・
「でも、この船の船員の人が私を攫った人に話したから、私が攫われたみたいですよ。何故か巫女という人と勘違いしたようです。」
「はぁ?どういうことだ?」
海から上がって来たザックさんがこちらにやって来ました。
「取り敢えず、船の中に入れ詳しくは中で聞く。キョウ、後は頼んだぞ。」
「なるべく早くに終わらせてくれ、俺一人でギランまで戻るのは流石にしんどい。」
「そんなに、かからないだろう。」
ちょっと待って!
「ギランに戻るのですか?まだ予定では1日あったはずです。」
二人の兄弟に聞きますが、二人してため息を吐かれました。私の質問にザックさんが答えてくれました。
「俺は問題を起こさなければいいと言ったよな。しかし、問題が起きたから強制出国だ。」
強制出国ですって!
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