トラックに轢かれてトラ転したと思ったら、私がトラ転させるトラックに転生したんですけど!?

IROHANI

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 それからどれだけの時間がたったのかわからないが、私の前には髪がぼさぼさに乱れたポンコツ女神が正座で反省している。私はというと、彼女がどこからともなく出してきた座り心地の良いソファーでくつろがさせてもらっている。

「と、とにかく転生は保留にしておきますね。でも、ずっとここにあなたを留めておく事はできないの」
「じゃあ、どうするんですか?」

 結局は転生しなくちゃいけないとか絶対に嫌だ。でも、いつまでもそんな風にわがままを言ってもしかたがないのかもしれない。

「あなたは身体も魂もとても丈夫なの。あの空間に導いていないのに入り込めたのもそのせいなのよ。こうやって長時間ここにいられるのもそう」

 私の事を恐れるような目で見ないで欲しい。たしかに大きな怪我も病気もせずにすくすく育ってきましたけどね。

「そんなあなたにお願いがあります。この願いを叶えてくれたなら、あなたの望みどおりに転生できるように上司達にお願いしておくから!」
「はぁ……」

 結局は転生しなくてはいけないのなら、もうそれで妥協するしかないのかもしれない。ウルウルした目でこちらに願い出ているこの人もわざとやったわけではない。いや、故意じゃなくても許せないけどね。

「わかった。あなたのお願いを叶えたら私の望み通りにしてもらうからね」
「ありがとう! では、さっそく……えい!」
「は?」

 いや、あんたのお願い事をまず教えなさいよ!

 女神の一声で私を光の帯が包んでいき、眩しさに目を閉じて収まるのを待つ。何だか身体がふわふわして不思議な感覚が走っていく。光が収まったみたいなので目を開ければ、いつもと目線の高さが違う気がした。

「あなたには一年間ほど『転生トラック』として私のお仕事を手伝って欲しいの」

 ウインクしながら言っているが、そのお願い事は私をこうする前に言って欲しかった。そうしたら絶対に頷かなかったのに。
 そう、女神のお願いごとにより私は――。





 あれから数週間くらいたっただろうか。『転生トラック』に仮転生した私はあの転生希望者リストに載る人物を『黄昏時の一本道』でトラ転させている。
 女神曰く、私がいた女神の管轄であるあの世界には転生を望んでトラックに自ら突っ込むというとんでもない人間が多くいるそうだ。そういった人達のせいで全国のトラック運転手にも会社や家族など他にもたくさんの人達に迷惑がかかる。事故現場を目撃するなんてトラウマになるかしれない。よって女神の采配であの空間を作りトラ転させて、残された家族のためにか元々いなかった事にして記憶や存在を抹消するのだそうだ。このトラックにぶつかっても痛みは感じず、すぐにあの白い世界へ飛ぶ。そういえば私も痛みは感じなかった。
 今は私がこうやって『転生トラック』として働いているが、そもそも私をそうさせた『転生トラック』がいる。

「よう、嬢ちゃん。今日もご苦労さんだったな」
「おっちゃん、ただいま~」

 シャッターが自動で開けられそこに入れば、私の寝床というか休憩場所になる倉庫がある。そこで出会ったこのトラックのおっちゃんこそが私をトラ転させた本人だった。初めて会った時に自己紹介とともに誠意をこめて謝ってもらったのでその事は許している。
 この気さくなおっちゃんは私の前代になるのだが、リストの人物と違うと気づいて避けようとしたが間に合わず、そのままぶつかってしまったそうだ。そして間違えてぶつかった私があまりにも丈夫だったからか彼の方が被害が大きかった。ボロボロになった彼はここで修理中なのだ。だから代わりに私がトラックになっている。おっちゃんには謝られたけど私も彼を傷つけてしまったから謝った。「俺の事は気にすんなよ。修理すれば治るからな。今は自分の事だけを考えておけよ」と言って慰めてくれた。いつも私を気にかけてくれるおっちゃんに心を開いた私は、ここでの事などを聞いたり私の事を話したりと懐いていた。どこか親戚のおじさんのような彼がいてくれるから寂しさが和らいでいるのもある。

「ヒマリさーん、今日もご苦労様! これが明日のリストね。よろしくー!!」

 さっと現れてリストを渡し、そしてウインクと共に消え去ったポンコツ女神、お前だけはまだ許していないからな。



 「えーっと、今日の希望者はっと……あぁ、成程ね。それはつらいよね……でもね、あなたは転生して異世界だかに逃げるんでしょ? ちっ、私なんて『転生トラック』なんですけど。ほんと、あっちの世界で俺ツエーして幸せになれよ、こんちくしょうめ!!」

 愚痴ったり叫んだりしなければやっていられない。でも、彼らの幸せだけは祈ろう。あっちでもつらい事があるかもしれないけど、今度は諦めずに人生を全うして欲しい。

 こうして、今日も私は『転生トラック』として走り続ける。

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