トラックに轢かれてトラ転したと思ったら、私がトラ転させるトラックに転生したんですけど!?

IROHANI

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四(終)

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「いよいよラストランか……」

 リストに乗る最後のひとりを確認していれば、この一年間が思い起こされる。
 間違ってトラ転されて私がトラ転させるトラックに転生して……いや、ややこしい!

「嬢ちゃん、ついにこの時が来たな」

 おっちゃんは明日から復帰する。だから私もこの最後のひとりをトラ転させればお別れになる。やっぱり寂しいけど、ここは笑顔で行かないとね。

「おっちゃん、一年間お世話になりました。元気でいてね。また壊れちゃだめだからね」
「はははっ! そう簡単には壊れねぇよ。じゃあ、いってらっしゃい」
「いってきます!」

 きっとこれが最後の挨拶になる。クラクションを一回鳴らして開き始めたシャッターの先を見つめる。ゆっくり前に進んで真っ直ぐに行けば青空から夕暮れ時に切り替わった。これが『黄昏時の一本道』に入った証拠である。ぐんぐんとスピードを上げて進んで行った先にあるいつもの地点、あそこによくは見えないが人が立っているのがわかる。

「彼が最後のひとり……よーし、ちゃんと幸せを掴めよ!」

 黄昏の語源は『誰そ彼』であると私に教えてくれたのはあの子だったか……。

 ふと、そんな事が頭に過った。
 オカルトな話が大好きだった私の親友は『黄昏時の一本道』に迷い込んだ人は神隠しにあって二度と帰って来ないという噂話をどこからともなく聞いてきたのだった。いつか自分の目で確かめたいとも言っていたが、神隠しにあったら元も子もないじゃないか。

「その噂は本当だったよ……まぁ、伝えてあげたくてもできないんだけどね」

 私がそれにあってしまっているのだから……。

 薄暗い中、近づいた影が驚いた顔でこちらを見て硬直している。先程まで見えなかったその影があの子だったと気づいた瞬間、思いっきりハンドルを切るように避ける。

 あぁ、おっちゃんもこんな感じで避けようとして私とぶつかったのかな?でも……。

 車体はギリギリあの子を避けてそのまま道沿いの壁にぶつかって横転し滑っていく。耳を劈くような大きな音が響いているのを他人事のように聞いていた。
 後方でビックリして座り込んでいるあの子が無傷なのだと確認できた。

 これって大けがってやつ?もしかして私、このまま逝っちゃうんじゃないかな。

 それでもいい。私の大切な親友が無事だったのだからそれだけでいい。あの子の名前はリストに無かったから自分と同じようにここに入り込んだのかもしれない。

「どれだけオカルトが好きなのよ!」

 それでも私と同じ目に合わせずにすんで良かった。少しずつ薄っすらと消えていくあの子に聞こえているかはわからないが、きっとこんなチャンスは二度と訪れないだろう。

「こんな形でだけどもう一度会えて嬉しかった……オカルト好きでもいいけど、危ない事はするなよ。あとさ、幸せになれよ!」

 あの子が消えきる前にこちらに伸ばした手が見えた。誰もいなくなったこの場所が黄金色に輝いていき、私の意識を飲み込むように光り続けて最後には消えた。





 ごめんね……。
 あなたはわたしのおねがいごとをかなえてくれただけなのに、こんなことになってしまうなんて。だから、あなたののぞみをかなえます。あなたがいちばんにのぞんでいるあなたののぞみを――。





「ヒマリ~! 久しぶり!」
「久しぶり! って、そんなに勢いよく走ってたらあんたこけるわよ」
「うえっ!? って、セーフ……」
「もう、何がセーフよ」

 勢いよく躓いたあの子は私にそのまま抱き着いている。
 今日は大学を卒業してそれぞれの道に進んだ私達が、仕事が落ち着いたからと休日に久しぶりに会う事になった。この子は会社の事務員だが相変わらずオカルト好きでそういった話を今も追いかけている。

「ようやく落ち着いたよねぇ……で、ヒマリは憧れだった学校の先生はどうよ?」
「思っていた以上に大変だけどさ、やりがいがあって充実している!」

 上手くいかない事もあるけれども、夢を叶えた私はこうやって今を生きている。高校を一年間休学していた私は意識不明で入院していた時に不思議な夢を見た。ただ、どんな内容だったのかは思い出せないけど、とにかく不思議だったという事だけはなぜか記憶している。
 休学していたので何もかも一年遅れになってしまったが、この子はいつも寄り添ってくれた。そして、ようやく私も社会人に仲間入りだ。この子がそうしてくれたように、あの誰かのように私もそうしていきたい。

 歩道を二人で並んで歩いていれば道路をすれ違う車達。一台のトラックが横を過ぎ去った時、ふと懐かしさを感じる。誰かが背中を押してくれるように「頑張れよ」と囁いた声は吹き抜けた風と共に消えていった。
 今日も明日もこれからも、私はこの先に続く道を走っていく事はきっと変わらない。

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