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第二章 「深十島〇〇一作戦」
三章 ロリアエ(6)
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部屋の外は俺が来たことのあるバリューのミーザ工場であった。
外装はただの館で中身も西洋っぽさしか感じなかったが、意外にもミーザ工場というだけの部屋はあるものだ。
血塗れのフリアエは相も変わらず無表情のまま迷いなく進み、どこかの部屋の扉を開けてそのまま入ってしまう。
中は質素な部屋であり、寮の部屋よりも広くはあるが、逆に物の少なさが寂しさを感じさせる。
フリアエは素早く自らの制服を脱ぎ始めた。
「お、おいフリアエ……!」
「決めた」
俺の制止の言葉は意味がないようだ。
「嗣虎」
フリアエが背を向けたまま俺を呼ぶ。
「なんだ?」
「嗣虎がわたしを好きになろうとしてくれるのなら、正直、別人格を作らなくて良かったと思う」
「……おう」
「だからわたしもこのまま頑張る。わたしとフリアエ以外の人格を消去し、わたしはわたしの力で嗣虎に認めてもらう。もはや……邪魔でしかない」
『恋人』のフリアエは下着以外の服全てを肌から床に落とし、微かに残っている痣と、古傷の体をさらす。
小さな女の子としては心が病まない方がおかしいその姿に俺は心を痛めた。
……が、またあの闇が現れ、フリアエの全身を包み、全ての傷を消してしまう。
あれはフリアエの多重人格の元となったものだと思う。
きっとこれでフリアエは逃げられない。もう別人格に苦しみを押し付けられない。
だから、俺が絶対に支えてあげなくてはならないのだ。
「……見たい?」
そんな感傷を抱いているというのに、フリアエって女の子は胸に両手を当ててこちらに振り向いた。
水色のブラジャーに右手の人差し指を入れながら、恥じらっているのか分かりづらい無表情の上目遣い。
下品ながらかなり興味はある。だが、今は追われる状況、しかもネメシスの両腕を切り落としたばかりにそんなことをして良いのだろうか……?
しかもネメシスって俺の好きな女の子じゃなかったか? 俺、怒らなくて良いのか?
……まあ、フリアエ叩いちゃったからいいか。
「ちょっとなら」
──彼女は躊躇わなかった。
そう答えるとすぐに桃色のそれを片方だけチラッと見せ、小悪魔っぽくチロリと舌を出して背を向ける。
一瞬だけのサービスは俺の鼓動を速め、時の感覚を長くした。
無表情というのはどういうわけかステータスの内にマイナスとして入らないと感じる。俺の心のアルバムに残るフリアエは初対面の時の睨む姿、目隠しをする時に振り向く顔のみだったのだが、今の彼女も新しく加わった。
乳首を見せるだけで物凄く可愛かったのだ。
気持ちの悪いことだと分かっている。それでも可愛いものは可愛い。
「……嗣虎」
「へあっ? な、なんだ?」
「わたしがゴッドシリーズとして造られる経緯となった理由、それはファーストミーザの代わりとなるミーザを造り出す為だった」
俺とは違い、既に彼女は気持ちを切り換えており、謎解きパートに入る。
俺はあの光景を脳の奥深くにしまいこんだ。
「ファーストミーザって……あれだろ? 人造人間を一般化した最初のミーザ……」
「そう。わたしや他のミーザのような人造人間の、最初の人造人間。それを再現しようとした。けど、その始めの一体であるエウメニデス一号ティシポネのお姉さんは、激しいバランスの不安定さによって失敗とされ、人体強化した後普通のゴッドシリーズとなる」
ティシポネ……フリアエの一番上の姉さんか。
「次にバランスの不安定を承知で造られたのがエウメニデス二号メガイラのお姉さん。けど量産には合わない高いコストが必要となり実験止まりになる。だからステルス型として再構築された」
「じゃあ末っ子のフリアエはどうなんだ?」
「わたしはエウメニデス三号。ただの不良品」
フリアエはそう話しながら部屋のタンスを開き、着替えの服を取り出す。
「ファーストミーザの能力は人間とミーザの戦争の中、誰も死なせないように立ち回った複数の力。一つ目は高い察知能力、二つ目は高度な魔法、三つ目は永遠に死なない肉体」
「永遠に死なないか……」
白靴下を脱ぎ捨て、黒のニーソックスを履く。
「……ここで政府に問題があった。政府はゴッドシリーズを造るにあたり、魔法のと、永遠に死なない肉体というものを造ることが出来なかった」
下から革の黒スカートを通し、ベルトを締める。
「だからファーストミーザと同じ原理のミーザを造り出せる『バリュー』の日野に協力を求め、ようやくエウメニデス三号でそれは開始される」
黒ワイシャツを上に着て、少しぶかついた黒の革コートを腕に通す。
「実験は成功し、そのまま量産型が造り出される流れになった……けど、わたしがそれを潰した」
黒の革のロングブーツを履き、紐を整え、
「わたしは平等なる世界を実現する為に、ポンコツのフリをした」
最後に左手首に巻いている黒布のリボンをほどき、金髪の左側頭部に飾り付けた。
フリアエが俺に見せる初めての私服姿はかっこよく、可愛く、エロく、美しい。
彼女は絵になるように、鮮やかにくるっと振り向いた。
「……嗣虎、白雪を探すのを手伝う」
外装はただの館で中身も西洋っぽさしか感じなかったが、意外にもミーザ工場というだけの部屋はあるものだ。
血塗れのフリアエは相も変わらず無表情のまま迷いなく進み、どこかの部屋の扉を開けてそのまま入ってしまう。
中は質素な部屋であり、寮の部屋よりも広くはあるが、逆に物の少なさが寂しさを感じさせる。
フリアエは素早く自らの制服を脱ぎ始めた。
「お、おいフリアエ……!」
「決めた」
俺の制止の言葉は意味がないようだ。
「嗣虎」
フリアエが背を向けたまま俺を呼ぶ。
「なんだ?」
「嗣虎がわたしを好きになろうとしてくれるのなら、正直、別人格を作らなくて良かったと思う」
「……おう」
「だからわたしもこのまま頑張る。わたしとフリアエ以外の人格を消去し、わたしはわたしの力で嗣虎に認めてもらう。もはや……邪魔でしかない」
『恋人』のフリアエは下着以外の服全てを肌から床に落とし、微かに残っている痣と、古傷の体をさらす。
小さな女の子としては心が病まない方がおかしいその姿に俺は心を痛めた。
……が、またあの闇が現れ、フリアエの全身を包み、全ての傷を消してしまう。
あれはフリアエの多重人格の元となったものだと思う。
きっとこれでフリアエは逃げられない。もう別人格に苦しみを押し付けられない。
だから、俺が絶対に支えてあげなくてはならないのだ。
「……見たい?」
そんな感傷を抱いているというのに、フリアエって女の子は胸に両手を当ててこちらに振り向いた。
水色のブラジャーに右手の人差し指を入れながら、恥じらっているのか分かりづらい無表情の上目遣い。
下品ながらかなり興味はある。だが、今は追われる状況、しかもネメシスの両腕を切り落としたばかりにそんなことをして良いのだろうか……?
しかもネメシスって俺の好きな女の子じゃなかったか? 俺、怒らなくて良いのか?
……まあ、フリアエ叩いちゃったからいいか。
「ちょっとなら」
──彼女は躊躇わなかった。
そう答えるとすぐに桃色のそれを片方だけチラッと見せ、小悪魔っぽくチロリと舌を出して背を向ける。
一瞬だけのサービスは俺の鼓動を速め、時の感覚を長くした。
無表情というのはどういうわけかステータスの内にマイナスとして入らないと感じる。俺の心のアルバムに残るフリアエは初対面の時の睨む姿、目隠しをする時に振り向く顔のみだったのだが、今の彼女も新しく加わった。
乳首を見せるだけで物凄く可愛かったのだ。
気持ちの悪いことだと分かっている。それでも可愛いものは可愛い。
「……嗣虎」
「へあっ? な、なんだ?」
「わたしがゴッドシリーズとして造られる経緯となった理由、それはファーストミーザの代わりとなるミーザを造り出す為だった」
俺とは違い、既に彼女は気持ちを切り換えており、謎解きパートに入る。
俺はあの光景を脳の奥深くにしまいこんだ。
「ファーストミーザって……あれだろ? 人造人間を一般化した最初のミーザ……」
「そう。わたしや他のミーザのような人造人間の、最初の人造人間。それを再現しようとした。けど、その始めの一体であるエウメニデス一号ティシポネのお姉さんは、激しいバランスの不安定さによって失敗とされ、人体強化した後普通のゴッドシリーズとなる」
ティシポネ……フリアエの一番上の姉さんか。
「次にバランスの不安定を承知で造られたのがエウメニデス二号メガイラのお姉さん。けど量産には合わない高いコストが必要となり実験止まりになる。だからステルス型として再構築された」
「じゃあ末っ子のフリアエはどうなんだ?」
「わたしはエウメニデス三号。ただの不良品」
フリアエはそう話しながら部屋のタンスを開き、着替えの服を取り出す。
「ファーストミーザの能力は人間とミーザの戦争の中、誰も死なせないように立ち回った複数の力。一つ目は高い察知能力、二つ目は高度な魔法、三つ目は永遠に死なない肉体」
「永遠に死なないか……」
白靴下を脱ぎ捨て、黒のニーソックスを履く。
「……ここで政府に問題があった。政府はゴッドシリーズを造るにあたり、魔法のと、永遠に死なない肉体というものを造ることが出来なかった」
下から革の黒スカートを通し、ベルトを締める。
「だからファーストミーザと同じ原理のミーザを造り出せる『バリュー』の日野に協力を求め、ようやくエウメニデス三号でそれは開始される」
黒ワイシャツを上に着て、少しぶかついた黒の革コートを腕に通す。
「実験は成功し、そのまま量産型が造り出される流れになった……けど、わたしがそれを潰した」
黒の革のロングブーツを履き、紐を整え、
「わたしは平等なる世界を実現する為に、ポンコツのフリをした」
最後に左手首に巻いている黒布のリボンをほどき、金髪の左側頭部に飾り付けた。
フリアエが俺に見せる初めての私服姿はかっこよく、可愛く、エロく、美しい。
彼女は絵になるように、鮮やかにくるっと振り向いた。
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