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酒場の集会
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「送ってくれてありがとう」
「遅くまで付き合わせて悪かったな」
「もう絶対に何も言わないで消えたりしないで」
「わかったよ」
心なしかソーハンの声に元気がない。
「そんじゃ」
「うん。気を付けて。またすぐ会いに行くわ」
彼は小さく数回頷いた。
私は城門前から馬に乗って遠ざかる彼の背中が見えなくなるまで見送って、寮に戻った。
明日は早いのにベッドに入ってもなかなか寝付けない。
(今日は本当に色んなことがあったわ。誘拐されそうになったり、ソーハンに再会して。ティリティアの貴族たちや盗賊の人たちとも会って……)
今日の夜はアーロンや仲間たちとの集会の日だったらしい。
彼の部屋の下の酒場を貸し切って行われる。
酒場のオーナーもソーハンたちの味方だというから安心した。
私はあれからアーロンに無謀な計画は止めてくれと言ったが、彼に止める気は全く無く、これは王女殿下だけのためではないと言われてしまった。
勝算もあって、もう事は動き出していて今更止めることはできないとも言われた。
夜になって酒場に仲間たちが集まると、アーロンは彼らに私を紹介し、王子と王女が見つかったと報告した。
更にランシアが兵を派遣してくれるという事を伝えると、心強い味方が加わったことで酒場は大賑わいになった。
その様子に私はもう計画を止めることはできないんだと悟るしかなかった。
悲しい気持ちでいると、数人の騎士たちが私の前にやってきて跪いた。
彼らは私をはぐれさせ、お兄様を奴隷商に攫われるという二つの失態を犯した護衛の騎士たちだった。
涙ながらに謝罪して私とお兄様の無事を喜んで再び忠誠を誓ったけど、平民として育った私には大袈裟な目の前の光景に驚いて戸惑ってしまった。
夜も更けてきてまだまだ店内は賑やかだったが、ソーハンがもう遅いから帰った方がいいと言ってきた。
明日は仕事がある。今度ばかりは素直にその言葉に従って帰ることにした。
彼が送ってくれると言うので、二人だけになるチャンスと思い、ためらいなく外に出ると、後ろからアーロンまでやってきた。
でも彼は私を送るつもりで出て来たのではなく、ソーハンに何か言いたいことがあるようで、笑顔を見せながらちょっと皮肉交じりに言った。
「ソーハン、君さあ、どうして今まで王女殿下の事を教えてくれなかったんだい? もう不信感しかないよ……。まぁ、でも王女殿下を私たちの計画に巻き込みたくなかったという親心なのかなって、今日の君を見てそう思った。その気持ちも分からなくはない。だから殿下を保護して立派に育ててくれたことに免じて今回は不問にしよう。感謝する」
“親心”
アーロンがその言葉を発した時、ソーハンと私の目が合った。
私はその言葉を彼に否定して欲しい気持ちでいっぱいだったけど、彼は否定しないで小さくアーロンに謝った。
(あー、もう、何なのよ!)
ソーハンが否定しなかったことも、アーロンが「感謝する」なんて言ったことも腹が立つ。
明日は早いのに、興奮してなかなか眠ることができなかった。
翌朝
「なんだか暗い顔して、どうしちまったんだ? 昨日は休みだっただろう?」
「あ、わかる? ちょっと寝不足でね」
「そうか、無理するなよ。にしても相方はまだ出勤して来ないんだぜ。真面目なやつなのにこんなこと初めてだ」
それもそのはず、その男は死んでいる。
城の方は昨日の今日でまだ対応できていないのだろう。死んだという事も分かってないかもしれない。
「多分新しい人が配属されるんじゃない」と私はすっとぼけて言った。
「マジか? ま、あいつは無口で無愛想だったから別にいいけどな」
この赤鼻の兵士との会話に今まで一度も入ってこないで無関心を貫いて真面目に職務を遂行していたような男が、心の中では私を誘拐して売り飛ばそうと目をつけていたなんて、人は見かけによらないものだ。
ただ、という事は私を王女だとは思っていなかったのだ。
それはそれで良かった。
朝食のワゴンを押して中に入った。
今日は昨日の事をお兄様に話さなければいけない。
しかし見渡してもどこにもいない。
確認の為ワゴンに積まれた食事の皿を数えると、九皿しかない。
昨日私が休みだった時に何かあったのだろうか、不安が押し寄せてきて近くの奴隷に聞いてみた。
「あの、フィ……ルシオはどこに行ったか知っていますか?」
でも知らないと言って首を振る。
すると比較的年のいった男がボソッと呟いた。
「彼は王女のお気に入りだから」
「遅くまで付き合わせて悪かったな」
「もう絶対に何も言わないで消えたりしないで」
「わかったよ」
心なしかソーハンの声に元気がない。
「そんじゃ」
「うん。気を付けて。またすぐ会いに行くわ」
彼は小さく数回頷いた。
私は城門前から馬に乗って遠ざかる彼の背中が見えなくなるまで見送って、寮に戻った。
明日は早いのにベッドに入ってもなかなか寝付けない。
(今日は本当に色んなことがあったわ。誘拐されそうになったり、ソーハンに再会して。ティリティアの貴族たちや盗賊の人たちとも会って……)
今日の夜はアーロンや仲間たちとの集会の日だったらしい。
彼の部屋の下の酒場を貸し切って行われる。
酒場のオーナーもソーハンたちの味方だというから安心した。
私はあれからアーロンに無謀な計画は止めてくれと言ったが、彼に止める気は全く無く、これは王女殿下だけのためではないと言われてしまった。
勝算もあって、もう事は動き出していて今更止めることはできないとも言われた。
夜になって酒場に仲間たちが集まると、アーロンは彼らに私を紹介し、王子と王女が見つかったと報告した。
更にランシアが兵を派遣してくれるという事を伝えると、心強い味方が加わったことで酒場は大賑わいになった。
その様子に私はもう計画を止めることはできないんだと悟るしかなかった。
悲しい気持ちでいると、数人の騎士たちが私の前にやってきて跪いた。
彼らは私をはぐれさせ、お兄様を奴隷商に攫われるという二つの失態を犯した護衛の騎士たちだった。
涙ながらに謝罪して私とお兄様の無事を喜んで再び忠誠を誓ったけど、平民として育った私には大袈裟な目の前の光景に驚いて戸惑ってしまった。
夜も更けてきてまだまだ店内は賑やかだったが、ソーハンがもう遅いから帰った方がいいと言ってきた。
明日は仕事がある。今度ばかりは素直にその言葉に従って帰ることにした。
彼が送ってくれると言うので、二人だけになるチャンスと思い、ためらいなく外に出ると、後ろからアーロンまでやってきた。
でも彼は私を送るつもりで出て来たのではなく、ソーハンに何か言いたいことがあるようで、笑顔を見せながらちょっと皮肉交じりに言った。
「ソーハン、君さあ、どうして今まで王女殿下の事を教えてくれなかったんだい? もう不信感しかないよ……。まぁ、でも王女殿下を私たちの計画に巻き込みたくなかったという親心なのかなって、今日の君を見てそう思った。その気持ちも分からなくはない。だから殿下を保護して立派に育ててくれたことに免じて今回は不問にしよう。感謝する」
“親心”
アーロンがその言葉を発した時、ソーハンと私の目が合った。
私はその言葉を彼に否定して欲しい気持ちでいっぱいだったけど、彼は否定しないで小さくアーロンに謝った。
(あー、もう、何なのよ!)
ソーハンが否定しなかったことも、アーロンが「感謝する」なんて言ったことも腹が立つ。
明日は早いのに、興奮してなかなか眠ることができなかった。
翌朝
「なんだか暗い顔して、どうしちまったんだ? 昨日は休みだっただろう?」
「あ、わかる? ちょっと寝不足でね」
「そうか、無理するなよ。にしても相方はまだ出勤して来ないんだぜ。真面目なやつなのにこんなこと初めてだ」
それもそのはず、その男は死んでいる。
城の方は昨日の今日でまだ対応できていないのだろう。死んだという事も分かってないかもしれない。
「多分新しい人が配属されるんじゃない」と私はすっとぼけて言った。
「マジか? ま、あいつは無口で無愛想だったから別にいいけどな」
この赤鼻の兵士との会話に今まで一度も入ってこないで無関心を貫いて真面目に職務を遂行していたような男が、心の中では私を誘拐して売り飛ばそうと目をつけていたなんて、人は見かけによらないものだ。
ただ、という事は私を王女だとは思っていなかったのだ。
それはそれで良かった。
朝食のワゴンを押して中に入った。
今日は昨日の事をお兄様に話さなければいけない。
しかし見渡してもどこにもいない。
確認の為ワゴンに積まれた食事の皿を数えると、九皿しかない。
昨日私が休みだった時に何かあったのだろうか、不安が押し寄せてきて近くの奴隷に聞いてみた。
「あの、フィ……ルシオはどこに行ったか知っていますか?」
でも知らないと言って首を振る。
すると比較的年のいった男がボソッと呟いた。
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