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第1話 パパはなんにも分かってない
分かってない その7
しおりを挟むバタンとドアを閉めたら、まずベッドの上のテディベアが視界に入ってきた。
ミルクティー色のボディに、チェック模様の洋服を着たテディベア。一緒に暮らし始めて初めての誕生日に、パパがくれたプレゼント。
チェストの上にはシェルの装飾が綺麗なジュエリーボックス。これは中二の時のプレゼント。お嬢様とかお姫様とかが持ってそうな、本当に綺麗で丁寧な作りのそれは、私のお気に入りで。
「……………………」
机の引き出しを開ける。
そこにある淡い色の花が散らされた丸い缶ケースは、若い女の子に人気のブランドのハンドクリーム。二年前の誕生日プレゼントにポーチとセットでもらった。大切に大切に使ってたけど、中身はもう空だ。
でもその空の缶を、私は捨てられなかった。
綺麗な缶だからじゃない。パパがくれたものだったから。
そっとフタを開ければ、中には色とりどりのリボンが渦を巻いている。
パパのことが好きだって、そういう意味で好きだって気付いたのは、十四の頃だった。その年から、私はもらったプレゼントを飾っていたリボン一つ捨てられずに、こうして取っている。
「はは、気持ち悪い…………」
この部屋は私の一方的な執着で満ちている。もう飽和状態で、だからいつ破裂してもおかしくなかった。でも。
「せめてさぁ、もう少し可愛げのある告白にするべきだったよねぇ…………」
何もかもが最悪だった。パパだって今頃ものすごく困ってるに違いない。
だってこんなの勝手にぶちギレて、自分を押し付けただけだ。言われる相手のことを何にも考えられてない。
今まで、大切にしてもらってきた。娘として大切にしてもらってきた。
なのに、育ててもらっておいてこんなの、ホント最悪だ。
「あーあ、全部台無しにしちゃった…………」
止まらない涙が、爪先を濡らしていく。
翌日、休暇中だからこれ幸いと気まずさを誤魔化すためにゆっくり目に起きたら、もちろんパパは既に出勤してていなかった。
一人きり、何だか取り残されたような気分になって、ぽっかり空間を開けたリビングを眺める。
例のタルトがどうなったのか、私は知らない。
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