END OF INFERNAL NIGHTMARE

弥黎/mirei

文字の大きさ
2 / 9

:1-2夢:

しおりを挟む
__ァ?___メア?___
 遠くから声が聞こえた。メアは遠くから響いてくる声で、目が覚める。
「......」
「___まだ寝てるの?」
小さく唸って返事をすると、目の前の声よりも二、三歩後ろから別の声が近付いてくる。
「メアぁ、そろそろ起きてベッド返して~」
 体を揺さぶられ、驚いて体を起こすと......図書館ではない場所。大きな六角の部屋に設置されたベッドに寝ていた。近くにはメアよりも一つか二つ年上の少女二人がメアをのぞき込んでいる。
「あ、やっと起きた、おはようメア?」
「メノ......と、フィア......?」
メアと似た容姿に、腰まで垂れている白い髪に菫色の瞳、黒に白のラインが入った薄いコートを着たメノが頭を撫でる。
「寝坊助さん、おはよ」
メノの後ろに立っていた、ショートカットの黒髪に青い瞳、同じ黒いコートを着たフィアがメアに近付いて言う。
「ここは......」
 周りを見渡すと部屋の殆どを本棚が占め、開いた空間にぎっしり寄せられたタンスや机、ベッドが詰められている。
「また意識がなくなるまで起きてたの?」
「ぇ......私は......フィアと研究で......資料探しを、してて......?」
「途中で、寝ちゃってたみたいよ?」
辺りを見渡すと、さっきまで横になってたベッドの上は開きっぱなしの分厚い本であふれていた。
「まぁ、目的の資料があったし、別にいいわ」
「......」
 自分の置かれている状況が全く呑み込めない。はっきりしない意識の中で、メアはフィアと呼んだ少女をぼうっと見上げる。
「大丈夫?」
「わ、私......」
「......なんだか本調子って感じじゃなさそうね......落ち着いたら、ベッド返してねぇ......もうそろそろ睡魔が来るはずだから」
 朝食取ってくる、と言い覚束ない足取りでフィアは部屋を後に。メノがベッドの方に向きなおってメアの頭に手を置く。
「それで、今日はどんな夢を見たの?」
 メノが隣に座る。コートのポケットから小さなメモ帳とペンを取り出す。彼女の台詞からメアは懐かしさを感じていた。
「......すごく鮮明な夢......私は図書館にいて___」
反射的に答え、言葉に詰まり、答えるのをやめてしまう。
「......それで?」
「そこで私と、オズという男の人と紅茶を......本も読みながら、小さなケーキを食べていて___」
「ふふん、とても面白い夢だね」
「メノ!私友達が......できた、よ」
胸の奥底で虚無感を感じて、また言葉が出てこなくなる。今私は魔界にいる。そう感じているが、目の前の景色を見ても浮遊感を拭えない。
「......いや、これが夢で......これはいつの事、だっけ......」
メアは自分の中に遭った小さな疑問を声で呟く。上手く言葉にできていないメアを見てメノは顔を近付ける。
「手伝いで相当まいっちゃったか、混乱してるみたいだね、メア」
「ここは、どこ......⁉」
「どこって、フィアの部屋の___」
メノの返事を待たずにベットから飛び起きて、窓を勢いよく開け放った。
 外は赤黒い葉をつけた森が地平線の向こうまで続き、蒼い空の中を紅い輪郭を付けた雲が漂う異様な光景。メアは眼前の景色から見張られるような威圧感を感じる。
「......」
「此処は"魔界"だよメア......どっちが夢か、分かってきた?」
背後にメノが近付いてくる。どっちが夢か......そうだ、目の前のすべて夢、夢だ......夢、なんだ。メアの意識はその言葉で溢れ、涙になって零れる。
「メノ......!!」
「どうしたの?急に泣いちゃって」
「一人は......い、いやだよ......!」
「大丈夫だよ、どこにも行かないから」
メアはメノの体に顔を押し付ける。消え入りそうな声でメノを何度も呼ぶと同時に意識が遠のいてくる。薄れていく意識の中でメノの様子は伺えなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌

招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」 毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。 彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。 そして…。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

女神に頼まれましたけど

実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。 その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。 「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」 ドンガラガッシャーン! 「ひぃぃっ!?」 情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。 ※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった…… ※ざまぁ要素は後日談にする予定……

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...