宝石♢男子

西神 幸徒

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第4話 ガラスの宝石箱

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 それから一拍間があって、ブラックがあきらめたようなため息をついた。
 ガーネットは……あー、うん。も、ものすごくしあわせそうね。

「カナメに守ってもらえるなんて、オレはなんて幸福な宝石男子なんだ……!」

 ソファーのクッションに顔をうめて、『カナメサイコー‼︎』とか『オレの命‼︎』とか。
 ドン引きレベルの発言を連発しているけど……き、聞かなかったことにしておくわ。

 とりあえず納得してもらえたみたいだし、夕飯の準備でもしようかな?
 と、歩きだそうとしたあたしの背中に、

「……まて。館の宝石男子は、俺たちだけじゃないぞ?」

 ……っまさかの衝撃発言をかましてきたのは、ブラックだった!

「ほかにもいるの⁉︎ でも、どこに――?」

 いるなら自己紹介をしてほしいんだけど……おかしいわね。
 耳をすましてみるけれど、あたしたち以外にひとの気配はしないわ。

「こっちだよカナメ、ついてきて!」
「えっ、ちょっと、どこ行くのよ⁉︎」

 ガーネットに手を引かれるがまま、ながい廊下を進んださきにあったのは、研究室だった……きっとここで、パパとママは石の研究をしていたのね。
 ちっちゃな引きだしがたくさんついたたなが、いくつも置かれている。
 薬のようなハーブのような、不思議なかおりにみたされていて……。
 窓辺からは、真っ赤な夕日がさしこんでいた。

「これを見て、カナメ」

 ガーネットが、部屋の中央に置かれたガラスケースをさして、さびしそうに笑ったの。
 それは、大人でもはいりそうなおおきさで、なかをのぞいてみると――。

「……この子たちが、のこりの宝石男子。なのね?」

 ガラスケースはぜんぶで三つ。
 それぞれに、キラキラかがやく男の子が寝かされていたの……。

「三人とも、ずっと眠ったままなんだ……国がめちゃくちゃになったショックが、原因だと思う」
「目、いつ覚めるの?」
「んー、わかんない。だってオレもブラックも、眠らなかったからさ!」

 夕日にかがやくガーネットの瞳は、燃えるように赤くて、どこか悲しげで。
 それでも、笑ってみせるんだもの……なんで、どうして笑えるの?

「……あんただってショックだったはず、なのにどうして眠らずにいられたのよ?」

 あたし、本気で心配だったの――こいつが無理して、強がっているんじゃないかって。
 つらいのも怖いのも不安もぜんぶ、笑ってごまかしているんじゃないかって。
 と、思っていたんだけどね……?

「えっへへ~! オレが眠らずにすんだのは、この写真のおかげ‼︎」

 ちょっとはずかしそうに、ほおをそめて……想像していた反応とちがうわね。
 ガーネットがポケットからだしたのは――ゲッ、あ、あたしの写真⁉︎

「これはあたしが、柔道の大会で優勝したときの……なんであんたがもってるのよ⁉︎」
「カナメのママからもらったんだ――そう、この写真を見た瞬間から、オレの人生はかがやきだした‼︎ 眠っている場合じゃないでしょ、こんなの‼︎」

 ズイッと、ガーネットのきれいな顔が近づいてきて、心臓がドクンっと鳴った……!
 だから、顔も距離も近すぎるんだってば‼︎
 心のなかで、プチパニックなあたしには、まったくおかまいなし。
 ガーネットは、キラッキラの目で言ったの!

「カナメってば、超きらめいてるんだもん‼︎  最推しとおりこして神推し‼︎ 尊すぎ‼︎」
「ちょっとまって…………あんた、頭だいじょうぶ?」

 小学校の六年間、男子にゴリラ女とよばれつづけてきたこのあたしが、きらめいて見えるとはね……ガーネットって、かなり変わった子なのね?

「ところで、さっきから気になっていたんだけど……その、推しってよびかたなに?」

 フツーは、すきなアイドルとかにつかう言葉のはずよね?

「よくぞ聞いてくれました! 『推し』それはオレが、アニメとミーチューブ動画から学んだ、世界一ステキな言葉‼︎」

 ちょっ、笑顔まぶしすぎなんだけど⁉︎
 見てるこっちの目が、チカチカしちゃうレベルよ、もはや‼︎

「『見かえりなしの究極の愛――それが推すということ』なの‼︎ ああ、なんて美しい思想なんだ‼︎」

 クラッとしたガーネットの肩を、思わずささえてあげたらね……こいつ……。

「やさしい‼︎ オレの推しがサイコーにカッコいい‼︎ 神様、カナメをこの世に生みだしてくれてありがとう……!」

 ……夕日にむかって、おがみだしたわ。と、とりあえず無視の方向でいいわよね?

「ねぇ、ブラックは? なんで眠らずにすんだのよ?」

 かべ際で、腕をくんですまし顔のブラックに聞いてみた。
 そしたらまるで、獲物を見つけた肉食獣みたいに、挑戦的な目つきに早変わり‼︎

「俺はおまえの父親に『カナメは最強』って聞いてたんでな。一度、手あわせしたくて、ウズウズしていたから……そのせいじゃないか?」
「な、なるほどね……」

 ブラック、こいつはこいつでなかなか……戦いずきのバトルバカとはね……!
 ふたりとも、知れば知るほど個性的だけど、ちょっと感動しちゃったのは事実よ。
 あたしにあいたい一心で、ショックな出来事に打ち勝つなんて、すごいことじゃない?

「約束するわ――この宝石箱もしっかり守ってみせるから、安心しなさい‼︎」


 その日の夜は、ありものの食材でサバ缶カレーをつくってみたの。
 本当に、具がサバオンリーのカレーなのよ?
 それなのに、ガーネットったらもう大号泣!

「おいじいよおおぉぉぉ‼︎ オレだぢふたりども料理の才能ゼロで、米すらたげながったがらさぁ……!」
「ああ、手づくりの料理なんて、宝石の国をでて以来だ……うますぎる」

 ブラックまで、夢中になってかきこんじゃって、かわいいところあるじゃない。

「じゃあ、あんたたちいままで、なに食べてたのよ?」
「「カップめん」」

 即答デュエット。ふたりともスプーンを運ぶ手をとめる気は、ないみたいね。

「食品庫の非常食に助けられたわね……あきれちゃう」

 でも、こういうかんじ、わるくないわね。
 こうやって、だれかといっしょに夕ご飯を食べるのって、ひさしぶりだわ。
 胸がポカポカして、しあわせな気分。
 叔母さんの家でひとりで食べていたときとは、味がぜんぜんちがう。すごくおいしい。

「「おかわり‼︎」」
「はいはい、いまよそってあげるから、ちょっとまちなさいよね!」

 パパとママがいたあのころの、家族のあたたかさを――……。
 もう一度、思いだすことができたのは、ふたりのおかげ。なんだからね‼︎


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