宝石♢男子

西神 幸徒

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第11話 あたしの本当の気持ち

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 放課後、今日はあたしとブラックが、中庭の掃除当番。

 ガーネットはトイレ当番だから、おわりしだい三人で帰ろうって約束はいつもどおり。
 でも、あたしの心はいつもどおり。とはいかなくて……。
 さっきから、ちっとも草とりがすすまないのは――このユーウツな気分のせいね。

「……あたし、絶対チトセにきらわれてるわ」

 落ちたお弁当を、あたしが食べたときのチトセの真っ赤な顔が、頭にうかぶの。
 あれはまさに、怒りのあまりバクハツ寸前ってかんじの雰囲気だったわ……。

 昨日のあたしは、信じてた。
 チトセと友達になれる可能性は、ゼロじゃないってね……けど、いまは自信がない。

「じつはあたし、小学生のころは柔道ばっかりやってたから、女子の友達ってほとんどいたことないのよね。だから、この学園では女子友をつくって、いっしょにクレープ食べたり、お買いものにいったりするのが夢だったの……」
「……べつに、チトセ以外の女子と友達になればいいだろ?」
「もう、ブラックのバカ‼︎ いまさら無理に決まってるじゃない⁉︎ クラスの女子からしたら、あたしはとんだおじゃま虫よ。みーんな、ガーネットに夢中なんだから‼︎」

 ゆいいつ、そんなあたしと仲よくなりたいと言ってくれたチトセに、希望の光をいだいていたというのに……っ。

「わあああん‼︎ ブラック、あたしどうしたらいいと思う⁉︎ このままじゃ、チトセにきらわれたまま、学園生活がシューリョーする未来しかないわ……‼︎」

 ブラックは、あたしの必死のうったえに、めずらしく困り顔。
 口元に手をあてて、しばらく考えたあと、真剣な顔でこう言ったの。

「まず、おまえはあまりにもにぶすぎる……」

 くっ、気づかいなしの一言が、あたしの心につきささる……!

「……だが、一番わるいのはガーネットだ。あいつだって、さすがにチトセの想いに気づいているはずだからな……たぶん、きっと、おそらく」

 なんっか、歯ぎれがわるいのが気になるところだけど、なるほど。
 ガーネットが気づいている。ね……チトセの想いに……想いに⁉︎

「そ、それってまさか、チトセはガーネットのことが……⁉︎」

 す、すすす、すきとかそーいうことなの⁉︎

 お、落ちつくのよカナメ。冷静になって、これまでのことを思いだしてみるの。
 チトセが、ガーネットを売ってほしいって言ってきたのも。
 かわいくメイクして、手づくり弁当でユーワクしようとしてきたのも。
 ぜんぶ、ガーネットのことが本気ですきだから。だったとしたら……?

「あんたね、なーんでそんな大事なことを教えてくれないのよ⁉︎ チトセがその、ガーネットのことを、もしもよ⁉︎ す、すきだとしたらあたし、とんだおじゃま虫どころかもはや害虫、カサカサ台所をうろつくアレ以下じゃない⁉︎」
「……まあ落ちつけ。まだすべてがはっきりしたとは言いきれない。乙女心はフクザツって、よく言うしな……?」

 で、でたわ、ブラックの意味深な発言……!

「あのね、まだなにかあるなら、はっきり言いなさいよね! 言われなきゃわかんないのよ、あたしは‼︎ にぶいの、自覚ありなの‼︎」

 両肩をつかんで、ブンブンゆすっても効果なし。
 いくら問いただしても、ブラックはくつくつ笑うばかりで――あたしのことおちょくってんのかな? いっぺん拳で語りあってみよっか? 

「……だから落ちつけ。あとは自分で、ゆっくり考えてみることだな。ちなみに、これはあくまで俺の意見だけど」
「へ、ブラック?」

 ブラックが王子様みたいにふわっとあたしの手をとって――おどろいているヒマもない。
 黒いもやもやしたけむりが、ドバァっとあたしの手からふきだして、ブラックの手へと吸いこまれていったの……これは、マイナスエネルギーだわ!

 宝石男子には、ネガティブな感情を、こうして吸いとってくれる力があるのよね。
 それにしても、ちょっと多い。不安もストレスも、思ったよりたまっていたのかも。

「チトセにむけるおまえのやさしさは、りっぱなもんだと思うぜ? 床に落ちた弁当食うなんて……友達どうしだって、なかなかできないもんだ」

 くくく、なんて笑いながら、ブラックがあたしの背中をバシッとたたいた。

「おまえはおまえのままでいい。やりたいようにやってみろ……俺が最後まで手をかしてやる」

 にぶく光るブラックダイヤモンドの瞳は、つめたそうに見えるけれど、本当はちがう。
 深いやさしさと強さを秘めたきらめきであることを、あたしは知っている。

「ありがとう、ブラック。すこし気持ちが楽になったわ……!」
「……ああ、無理すんなよ」

 ブラックは、雑草袋をあたしのぶんもうばって、ひとりですてにいってしまった。
 のこされたあたしは、すがすがしいほどの青空を見あげて――うん、決めたわ。

 ここであっさりあきらめるなんて、自分らしくない。
 やっぱり、チトセと友達になりたい!
 ほかのだれでもない――メイクも料理も一生懸命で、まっすぐな性格で、まぁ、ちょっと自分勝手なところもあるけれど。
 だれかのためにがんばれるチトセは、すっごくステキだと思うから!

「とはいえ、ここからどうばんかいしたらいいのかしら……? チトセと友達になるには、うーん……困ったわね」

 すでにきらわれちゃってるぽいし、マイナスからのスタートだわ。
 それにどうやら、チトセはガーネットにトクベツな想いをいだいている。らしいし?

「それならいい案があるよ、カナメ!」
「――っちょ、ガーネット⁉︎ 急にとびだしてこないでよ、あやうくしめ技を決めるところだったじゃない‼︎」

 校舎の影からひょっこりあらわれたガーネットは、ペロっと舌をだしておちゃめ顔。
 まったく、いたずらっ子もたいがいにしないと、どうなっても知らないんだからね!


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