宝石♢男子

西神 幸徒

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第19話 運命のバトル、大事な家族を守りぬけ‼︎(2)

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 深くしずんだガーネットの声。
 二度となおらない……その言葉が、あたしの胸にズンと重くのしかかる。

 ショックなはず――それなのに、ブラックの黒い瞳は強く、強くかがやいていたの。

「これしきの傷で、負けをみとめる気はいっさいない……俺はまだまだ戦えるぞ‼︎」

 家族の無事を、勝利を、すこしもあきらめていないまっすぐな瞳が、あたしを見た。
 そして言ったの。

「俺の宝石言葉を、覚えているか?」
「『不屈』でしょ? どんな困難にぶつかっても決してあきらめない、強さの化身――それがあなた、ブラックダイヤモンドだわ‼︎」
「……そーいうこった。のこり、けちらすぞカナメ――‼︎」

 チトセの執事はあと三人。きなさい、あたしが相手よ‼︎
 相手のふところにはいり、すばやくひざをついて腕とえりをもちあげ、投げる‼︎
 あざやかに決まったわ、背負落せおいおとし‼︎
 さらにブラックが飛びひざげりで、ひとりぶっ飛ばして……!
 最後はまさかの、ガーネットの頭つきがクリティカルヒットしてケーオー‼︎
 これで、執事は全員たおしきったわ。

「すまんが、あとはたのむ……俺はここまでだ」

 ここで、ブラックがダウン。
 あたしとガーネットの背中をポンっとおして、フェンスによりかかった。
 顔色が真っ青。腕の傷もショックだろうし。
 ここまで、あたしのために何度も、マイナスエネルギーを吸いとってくれたものね。
 つかれも痛みも、クールな表情の裏にかくして……よくがんばってくれたわ。

「ありがとう、ブラック! ゆっくり休んで、あとはあたしがなんとかするから‼︎」
「……ムダ話している場合か? くるぞ――‼︎」

 ブラックの視線のさきには、シャーペンをかまえて、ふるえているチトセがいた!
 ムキムキ執事軍団が、全員たおされてパニックになる気持ちはわかるわ。

「ま、まだわたくしがのこっていますわ‼︎ そうかんたんに、あきらめてたまるもんですか――‼︎」

 でもね、そんなにブンブンふりまわしたら、あ、あぶないでしょうが⁉︎
 しかもそのシャーペン、あたしがあげたおソロのやつじゃない……‼︎
 まさか、肌身はなさずもっていて――武器にしてくるとは、想像もつかなかったわ。
 でもそれってつまり、大事なシャーペンをぶんまわしちゃうくらい、いまのチトセは追いつめられている。そういうことよね……?
 ここからは、慎重にいかないと。
 これ以上ケガ人がでないように、安全に、すばやく、シャーペンをうばうのよ!

「いい、ガーネット? ねらわれているのはあんたなんだから、なるべくあたしからはなれないで――って、えぇ⁉︎」

 ちょっと、どーしてそうなるのよ⁉︎
 ガーネットったら、あたしのまえに立って、なにする気――⁉︎

「カナメ、ここはオレにまかせて……!」
「なにバカなこと言って――っちょ、あんたまさかまた⁉︎」

 ガーネットが、あたしをかばったその瞬間――!
 裏庭のときのように、チトセの全身から、ぶわっと黒いけむりがふきだしたの‼︎

「ここであたしをかばうのはまずいんじゃない⁉︎ だってほら、見なさいよあの顔……‼︎」

 こっちを見るチトセの表情は、もはや鬼そのもの!
 めちゃくちゃ怒ってるし‼︎ けむりをさらに噴出させて、事態悪化してない⁉︎

「何度も、何度も何度も何度も‼︎ よくもわたくしの目のまえでイチャイチャして――っいつまでもゆるされると思ったら、おおまちがいですわー‼︎」

 チトセの金切り声が、キンと耳をつんざいても。
 ガーネットはあせらず、そしてひるまず。
 まっすぐにチトセを見すえ、かざした両手で、ぐんぐんマイナスエネルギーを吸いとっていく‼︎

「オレの愛を、イチャイチャなんてかるい言葉で表現するの、やめてくれない?」

 ジリジリと、シャーペンをかまえたチトセが、こちらへせまってくる……!
 それでもガーネットは、けむりからあたしをかばうのをやめなかった。

「ああもう、また顔色わるくなってきてるじゃない‼︎ あたしのことはいいから、あんただけでも逃げなさい‼︎」
「逃げる? 絶対ありえないね‼︎ 『愛情』の宝石ガーネットの名にかけて、最愛の推しであり、家族であるカナメは必ず、オレが守りぬいてみせるから‼︎」

 あたしの心配もはねのけちゃうくらい、まばゆいかがやきをはなつその瞳は、あたたかで、希望にみちていて――。

「カナメのためならオレ、命だっておしくないし‼︎」
「はぁ⁉︎ あんたそれどーいう意味でっ――……!」

 いつもとちがう真剣な横顔に、胸がキューっとしめつけられるかんじがした。
 そのときだった。
 とうとう、チトセがガーネットの目のまえに立って――シャーペンをふりあげた‼︎
 大つぶの涙を流しながら、だれよりも苦しそうな顔をして。

「っと、そうはさせるものですか‼︎」

 あたしはとっさにガーネットをつき飛ばして、すぐさまチトセの足をはらった!
 バランスをくずしたチトセが、ぽろっと落としたシャーペンをキャッチ‼︎
 おつぎは、いまにも転びそうなチトセを、片腕でだきあげてっと!
 セーフ、間にあったわ‼︎

「まだ、まだですわ――っ⁉︎」
「ここまで、勝負ありよ!」

 腕のなかであばれだしたチトセを、あたしは、ギューっと強くだきしめた。
 するとチトセは、ウソみたいにおとなしくなって――あたしの背中にそっと腕をまわしてきたんだから、意外よね。
 同時に、チトセのつむじから、黒いけむりがふわっとでてきた。
 それをガーネットが、スイっと指先で吸いとったの。

「どーやら、これが最後のマイナスエネルギーだったみたいだけど。どう? すこしは気持ち、楽になった?」

 あたしの肩に顔をうめながら、チトセがこくんとうなずいた。
 それを見たガーネットは、きっと安心したのね。
 ペタン、と床にすわりこんじゃった。
 ガーネットもブラックも、つかれきったようすで、だいぶくすんじゃってる。
 本当は、はやく浄化してあげたいけど。
 いまはこっちを解決するのが、さきよね。

「チトセ、あんたどうしてガーネットをこわそうとしたのよ?」
「そ、それは――っ‼︎」

 チトセは一瞬顔をあげて、すぐにあたしから目をそらした。
 言いにくそうだったけど……しばらくして観念したのか、うつむきがちに言ったの。

「……ガーネットさんが、じゃまだったからですわ」

 そうよね……チトセはガーネットのことがすきだものね……って、えぇ⁉︎

「それはちがうでしょ⁉︎ あたしのことがじゃまだってんならわかるわよ⁉︎ でも、ち、チトセがす、すすす、すきなのはガーネットなんだから、それはおかしいじゃない‼︎」
「わたくしが、ガーネットさんをすきですって⁉︎ ちがいますわ‼︎ ああもう、なんてことですのっ! かんちがいにもほどがありますわ、カナメさんのバカー‼︎」

 え? ちょっ、えぇ⁉︎
 チトセはあたしの腕からするんとぬけだして、うずくまったまま、さらにはげしく泣きだしちゃった!
 いったい、なにがおきているというの……⁉︎
 頭のなかが、ハテナでいっぱいのあたしにかわって、ガーネットが挙手した!

「ちょっとまって、質問いい? じゃあさ、オレを手づくり弁当でユーワクしようとしたのはなんだったの?」
「あなたをわたくしにホレさせて、カナメさんから遠ざけるため。ですわ!」
「ええええぇぇぇぇぇ⁉︎ な、なら、オレを買いとろうとしたのも、あの手この手で自分のものにしようとしてきたのも、ぜんぶそーいうことだったってわけ――⁉︎」
「だから、そう言っているじゃありませんか‼︎ カナメさんにベタベタさわるわ、つねにいっしょがあたりまえみたいにくっついてまわるわで……ずうずうしすぎですわ……正直、じゃまの一言につきます!」

 チトセはあたしをチラッと見て、ほっぺをりんごみたいに赤くして⁉︎

「ガーネットさん、あなたもわたくしと同類なら、すこしは行動をわきまえるべきですわ……‼︎ この意味、わかりますわよね?」

 ガーネットは、いまの会話でなにかを察したようで……石みたいにかたまっちゃった。
 だけどあたしには、もうなにがなんだかわからなくって、首をかしげるしかない。
 チトセはそんなあたしを見て、ふかーいため息をつくなり。
 決意した表情で、口をひらいたのだった。


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