宝石♢男子

西神 幸徒

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第21話 チトセの真実(2)

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「じつはわたくし、ちいさいころから、乙女チックなものがだいすきな子でしたの。お洋服はいつも、レースたっぷりのワンピースやミニスカートがお気にいりでしたわ……でも、そのせいで高学年になるにつれて、男子たちにからかわれるようになり――……」

『男のくせに、女の服着てるとかありえねぇ』とか、『気持ちわりー』とか。
 いろいろ、ひどいことを言われたみたい。

「なによそいつら、そんないじめっ子ども、あたしがいたらはったおしてやったのに‼︎」
「……はったおしたじゃありませんか、まさかこれも覚えていらっしゃらないの?」
「カナメ、おまえ……バカなのか? 脳筋にもほどがあるぞ……」

 ぐうの音もでないわ、ブラック‼︎
 ていうかマジなのね、あたしやっちゃってたのね⁉︎

「バーン‼︎ と空き教室の扉をあけて、登場したと思ったら、目にもとまらぬはやさでいじめっ子たちをちぎっては投げ、ちぎっては投げ――まっすぐな目で、わたくしにこう言いましたの!」

『男子も女子も関係ない‼︎ だれもが自分のすきな服を、楽しく着るべきだわ‼』

「『あんたはそのままでいい、自分をつらぬきなさい‼︎』って、何度思いかえしても、あのときのカナメさんはサイコーにかっこよかったですわ……!」
「えー! ずるいずるい、オレもそのカナメ超見たかったー‼︎」
「……はっきり覚えていないけど。あたしのしわざだってことは、断言できるわ」

 あたしって、昔っから弱いものいじめとか、がんばっているひとをバカにするやつらがだいっきらいなの!
 それで、そういう現場を見かけるたびに、ちょくちょく解決してまわっていたのよね。
 いじめっ子とか不良とか、何人もシバきたおし……じゃない、心をいれかえるお手伝いをさせてもらってきたというか、ね?
 チトセを救った一件も、たぶんそのうちのひとつだと思うわ!

「そうですわよ、カナメさん! あの日、わたくしの心を救ったのはまぎれもなく、あなたでまちがいありませんことよ‼︎」

 チトセは、ぽあぽあっとほおを赤くそめて、モジモジモード。

「それからというもの、寝ても覚めても頭にうかぶのは、カナメさんのことばかり。はなればなれはたえられなくて、あなたと同じこの学園に入学を決めたのですわ……!」
「そこまであたしを想ってくれていたなんて、うれしいわ、チトセ……けど」
「カナメさん……?」

 今回のガーネットをねらった事件……あたしと仲よくなりたくて、からまわりしちゃったんだってことは、よくわかっているつもりよ。
 チトセなりに、いろいろ考えて、がんばったんだってこともね?
 でも、そのせいでみんなに迷惑をかけてしまったことも、また事実。
 そのへん、チトセがどうかんじているのか、はっきりさせないとね。

「ガーネットをさらって売りさばこうとしたこと、宝石箱をぬすんだこと、ブラックにケガをさせたこと……いろいろあるけど今回のことを、チトセはどう思っているの?」
「そ、それはその、本当にごめんなさい‼︎」

 チトセが深く頭をさげて――涙が雨みたいに、床にぽつぽつしみを描いていく……。

「わたくし、わからなかったのですわ! カナメさんとお近づきになるには、どうしたらいいのか……頭にカーっと血がのぼって、そうなったらもう自分の気持ちがとめられなくて、ひどいことばかりしてしまって――それに、それにっ」

 チトセは、くやしさともどかしさがいりまじったような、フクザツな表情で――。

「人工宝石男子のわたくしは、天然石の宝石男子とくらべて、能力面でおとりますわ。マイナスエネルギーを吸ったり、浄化でリフレッシュするのが苦手ですの……わかっていたのに、自分のマイナスエネルギーさえコントロールできず、爆発をくりかえしては大放出のありさま……これでは、宝石男子失格ですわね」
「チトセ……そこまで思いつめていたなんて」

 チトセはたしかに、やっちゃいけないことをたくさんしたわ。
 けど、だからってあたしがいつまでもゆるさなかったら、どうなると思う?
 きっと最悪な関係のまま、あっという間に学園生活がおわっちゃうわ!
 そんなの、悲しすぎると思わない?

「あたしはチトセのことをゆるすわ。ガーネット、ブラック、ふたりはどうする? チトセをゆるす? ゆるさない?」

 だまって話を聞いていたふたりに、あたしは真剣に問いかけた。

「オレはゆるすよ! あやまってくれたし、それにチトセはオレと同じ、『カナメ最推し』なわけでしょ⁉︎ これからはファンどうし、カナメについて語りあいたいし‼︎」
「……俺は、そうだな。あんたの家、宝石商なんだろ? 腕の傷をきれいにみがきなおしてくれるなら、それでぜんぶチャラにしてやる」

 チトセはまるい目をさらにまるくして、ぱちくりしてからこう言った。

「みなさん、本当に、本当にごめいわくをおかけしました……! わたくしも、今回のことで学びましたわ。猪突猛進ちょとつもうしんするまえに、立ちどまって考えるべきでした……ひとにメーワクをかけたり、傷つけるような方法で、カナメさんがふりむいてくれるはずが、ありませんものね?」
「そのとーりよ! チトセも、あたしたち宝神ファミリーも、みーんなしあわせが一番なんだから‼︎ そのへん、ちゃんと覚えておきなさいよね!」

 チトセの涙を指先でぬぐってあげたら、ぶわっとほっぺを赤くして不器用な笑顔。
 でも、怒っている顔より、泣いている顔より、ずっとずーっと‼︎

「笑っているほうが、チトセはかわいいわ!」

 照れているのかな、赤いほっぺを両手でつつんで、モジモジしちゃってる。

 みんなにゆるしてもらえて、チトセもすっかり安心したみたいね!

 
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