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4 心強い味方
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「瑞葉さま、お支度をさせていただいてもよろしいでしょうか?」
考えごとをしていたら、あっという間に起床の時間になっていた。
光矢は、今の私を見てどう思うだろう。
おそらく、黒いもやを纏っているに違いない。そう思うと、会うのが少し怖かった。
けれど、それ以上に元気な姿をこの目で確かめたい気持ちが強かった。
「お願いするわ」
佳乃の手を借りて身支度を整え、食卓へ向かう。
そこは、いつも光矢と二人で囲む場所だ。
部屋に入ると、まだ光矢は来ていなかった。
テーブルについて待っていると、ほどなくして彼が入ってくる。
冷静に、平常通りの態度を取ろう。そう思っていたのに、六歳の幼い光矢の姿を見た瞬間、抑えきれず気がついたら駆け寄って抱きついていた。
「うわーん……!」子どものように泣きじゃくりながら、「ごめんね、ごめんね」と繰り返す。
今の私は八歳の子ども。けれど中身は十六歳のはずなのに、涙は止まらなかった。
光矢は、控えていた佳乃に向かって、
「姉さま、どうしちゃったの?」と尋ねる。
「瑞葉様は、夢で光矢様が大変な状況に陥る場面をご覧になったようです。目覚めた途端、無事を確かめておられましたから」
「そっか……。姉さま、僕はこのとおり何ともないよ。朝ご飯食べよう? お腹ペコペコだよ」
わざとふざけた口調で、私を気遣う光矢。
「……うん。食べよう」
――大事な、大事な光矢。
バカな姉さまのせいで、この子の命を散らせてしまった。
改めて、必ず守ると強く心に誓いながら、光矢と食卓を囲む幸せを噛み締めた。
食後、部屋に戻ると光矢がすぐにやって来た。
「姉さま、少し入ってもいい?」
「いいわよ」
部屋に入るなり、彼は真剣な顔で言った。
「姉さま……僕は、何があっても姉さまの味方だよ。何があったの?」
この子は聡い。
一晩で私の“見え方”が変わったことに気づき、何かを感じ取っているのだろう。
私は今回のことで思い知った。
自分がいかにぬるま湯の中で生きてきたかを。
両親に認められたくて必死に頑張ってきたものは、あの時、何の役にも立たなかった。
今は、絶対的な味方である光矢に全てを話し、共に動く方がいい。
最善の手を打たねば。光矢と私の命を守るために。
「今からする話は、とても信じられるようなことじゃないわ。むしろ信じてもらえなくても当然だと思う。
……私ね、十六歳のときに死んで、今朝戻ってきたの」
「えっ……」
光矢はしばらく呆然としたあと、見たこともないほど険しい顔をして言った。
「誰に殺されたの? そのとき僕は何をしていたの?」
「信じてくれるの?」
「忘れたの? 僕、嘘がわかるんだよ。でもね、たとえこの力がなかったとしても、僕は姉さまを信じる」
「光矢……!」
ふたたび号泣し、光矢に抱きつく。
「それより、誰が殺したの? そういえば、さっき僕の無事を確かめてたけど……僕も死んだの?」
さすがは光矢だ。
私はすべてを話した。
話し終えると、光矢は少し呆れたように息を吐き、口を開いた。
「姉さま、だから言ったでしょ。あの女はダメだって。親戚の集まりでしか顔を合わせないし、特に害があることをしてくるわけでもなかったし、姉さまはあの女のことを全然気にしてなかったから……僕も油断してた。あの女は、最初に会ったときから真っ黒だった。いつ何をやらかしてもおかしくないくらい」
そして口調を少し柔らげ、続けた。
「でも……僕が死ぬ間際、神気を渡せたのは本当によかったよ。おそらく姉さまの神気と合わせて神具を壊せればと思ってやったんだろうけど……結果的に時戻りが起こったんだから」
「うん……光矢、本当にありがとう」
「これから、どうするつもり?」
「あなたと私、二人の命を守るために動くわ。花蓮の企みを潰すのはもちろん、きちんと報いも受けてもらう」
光矢は少し笑みを浮かべた。
「僕ね、今朝の姉さまを見て驚いたんだ。輝きが強くなってたから。昨日までは淡い光が覆ってるみたいだったのに」
「えっ、黒いもやもやは出てないの?」
「うん、出てないよ」
「そう……てっきり光矢には、私がどす黒く見えて嫌われるんじゃないかって怖かったの」
「たとえそう見えても、そこには理由があるだろうし……言ったでしょ。何があっても味方だって。それで、これからどうするの?」
「まずは、体を鍛えるわ。たとえ神気が封じられても、自分の力で戦えるように。もちろん、あのときみたいに騙されて同じ罠にはまったりしないけどね」
「わかった。それなら、僕の体術の訓練に混ざってみる?まだ体力づくりの運動しかしてないから」
「わあ!お願いするわ!光矢と一緒なら頑張れそうな気がする。それに……せっかくやり直せたんだもの。前の人生で残した後悔は、全部塗り替えてみせる」
「僕も当事者なんだから、ちゃんと力になるよ。遠慮せずに頼って」
「もちろん。光矢のこと、頼りにしてるわ」
そうして、私は今世での心強い味方を手に入れた。
考えごとをしていたら、あっという間に起床の時間になっていた。
光矢は、今の私を見てどう思うだろう。
おそらく、黒いもやを纏っているに違いない。そう思うと、会うのが少し怖かった。
けれど、それ以上に元気な姿をこの目で確かめたい気持ちが強かった。
「お願いするわ」
佳乃の手を借りて身支度を整え、食卓へ向かう。
そこは、いつも光矢と二人で囲む場所だ。
部屋に入ると、まだ光矢は来ていなかった。
テーブルについて待っていると、ほどなくして彼が入ってくる。
冷静に、平常通りの態度を取ろう。そう思っていたのに、六歳の幼い光矢の姿を見た瞬間、抑えきれず気がついたら駆け寄って抱きついていた。
「うわーん……!」子どものように泣きじゃくりながら、「ごめんね、ごめんね」と繰り返す。
今の私は八歳の子ども。けれど中身は十六歳のはずなのに、涙は止まらなかった。
光矢は、控えていた佳乃に向かって、
「姉さま、どうしちゃったの?」と尋ねる。
「瑞葉様は、夢で光矢様が大変な状況に陥る場面をご覧になったようです。目覚めた途端、無事を確かめておられましたから」
「そっか……。姉さま、僕はこのとおり何ともないよ。朝ご飯食べよう? お腹ペコペコだよ」
わざとふざけた口調で、私を気遣う光矢。
「……うん。食べよう」
――大事な、大事な光矢。
バカな姉さまのせいで、この子の命を散らせてしまった。
改めて、必ず守ると強く心に誓いながら、光矢と食卓を囲む幸せを噛み締めた。
食後、部屋に戻ると光矢がすぐにやって来た。
「姉さま、少し入ってもいい?」
「いいわよ」
部屋に入るなり、彼は真剣な顔で言った。
「姉さま……僕は、何があっても姉さまの味方だよ。何があったの?」
この子は聡い。
一晩で私の“見え方”が変わったことに気づき、何かを感じ取っているのだろう。
私は今回のことで思い知った。
自分がいかにぬるま湯の中で生きてきたかを。
両親に認められたくて必死に頑張ってきたものは、あの時、何の役にも立たなかった。
今は、絶対的な味方である光矢に全てを話し、共に動く方がいい。
最善の手を打たねば。光矢と私の命を守るために。
「今からする話は、とても信じられるようなことじゃないわ。むしろ信じてもらえなくても当然だと思う。
……私ね、十六歳のときに死んで、今朝戻ってきたの」
「えっ……」
光矢はしばらく呆然としたあと、見たこともないほど険しい顔をして言った。
「誰に殺されたの? そのとき僕は何をしていたの?」
「信じてくれるの?」
「忘れたの? 僕、嘘がわかるんだよ。でもね、たとえこの力がなかったとしても、僕は姉さまを信じる」
「光矢……!」
ふたたび号泣し、光矢に抱きつく。
「それより、誰が殺したの? そういえば、さっき僕の無事を確かめてたけど……僕も死んだの?」
さすがは光矢だ。
私はすべてを話した。
話し終えると、光矢は少し呆れたように息を吐き、口を開いた。
「姉さま、だから言ったでしょ。あの女はダメだって。親戚の集まりでしか顔を合わせないし、特に害があることをしてくるわけでもなかったし、姉さまはあの女のことを全然気にしてなかったから……僕も油断してた。あの女は、最初に会ったときから真っ黒だった。いつ何をやらかしてもおかしくないくらい」
そして口調を少し柔らげ、続けた。
「でも……僕が死ぬ間際、神気を渡せたのは本当によかったよ。おそらく姉さまの神気と合わせて神具を壊せればと思ってやったんだろうけど……結果的に時戻りが起こったんだから」
「うん……光矢、本当にありがとう」
「これから、どうするつもり?」
「あなたと私、二人の命を守るために動くわ。花蓮の企みを潰すのはもちろん、きちんと報いも受けてもらう」
光矢は少し笑みを浮かべた。
「僕ね、今朝の姉さまを見て驚いたんだ。輝きが強くなってたから。昨日までは淡い光が覆ってるみたいだったのに」
「えっ、黒いもやもやは出てないの?」
「うん、出てないよ」
「そう……てっきり光矢には、私がどす黒く見えて嫌われるんじゃないかって怖かったの」
「たとえそう見えても、そこには理由があるだろうし……言ったでしょ。何があっても味方だって。それで、これからどうするの?」
「まずは、体を鍛えるわ。たとえ神気が封じられても、自分の力で戦えるように。もちろん、あのときみたいに騙されて同じ罠にはまったりしないけどね」
「わかった。それなら、僕の体術の訓練に混ざってみる?まだ体力づくりの運動しかしてないから」
「わあ!お願いするわ!光矢と一緒なら頑張れそうな気がする。それに……せっかくやり直せたんだもの。前の人生で残した後悔は、全部塗り替えてみせる」
「僕も当事者なんだから、ちゃんと力になるよ。遠慮せずに頼って」
「もちろん。光矢のこと、頼りにしてるわ」
そうして、私は今世での心強い味方を手に入れた。
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