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62 到着
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道中は何事もなく過ぎていった。
もちろん一日では行けない距離なので、途中の宿屋に泊まる。私は佳乃と、光矢は叔父様と同室。非日常のことばかりで心が弾む。
ふと気になって、叔父様に尋ねてみた。
「盗賊や禍憑に一度も襲われませんでしたね。多くはないですが荷物も積んでいたのに……やはり、そうしたことは滅多にないものですか?」
「いや、そんなことはないよ。ただ、この馬車は僕が作った“印象を薄くする神具”を取り付けているからね」
叔父様は事もなげに答える。
私は納得しつつも、眉を寄せた。
「盗賊と禍憑に気づかれないのはいいですが、すれ違う馬車や通行人にとっては危険では?」
「それは大丈夫。そこは緻密に計算してある。馬車が通っていると認識はできるけれど、この馬車に対して余計な考えを抱けないようになっているんだ」
横で光矢が補足する。
「叔父さんは軽く言ってるけど、これは本当にすごい発明なんだよ。目玉が飛び出るほどの値段はするけど、その価値はある。今じゃ上位神守や豪商の馬車はほとんど導入していて、これをつけてから被害はゼロになったんだ」
「叔父様は本当にすごい人なのね」
思わずそう口にすると、光矢がにっこり笑った。
「そうなんだよ。あまりにも身近にいるから、忘れそうになるけどね」
「ははは、そんな大したものじゃないよ」
叔父様は照れたように笑い、前方を指差した。
「おっ、そろそろ見えてきた。滞在させてもらう岩城家の別荘だ。管理人が出迎えてくれるはずだよ」
出発から七日が過ぎ、ようやく目的地に到着さした。ここは、辺境の地手前の領だ。随分と遠くまで来たはずなのに、道中が楽しかったせいか、あっという間に感じられる。
馬車が停車すると、玄関先には老齢の男性が待ち構えていた。気品ある落ち着いた立ち姿からして、ただの管理人ではなさそうだ。
「ようこそ、岩城家の別荘へお越しくださいました。私は岩城家本邸より参りました楠本と申します。奥様からは『自分の家と思ってくつろいでほしい』と仰せつかっております。ご滞在中は、使用人一同、心を込めてお仕えいたしますので、どうぞなんなりとお申し付けください」
にこやかな笑みを浮かべる楠本さんに、私たちは順に挨拶を返した。
「これはご丁寧に。ありがとうございます。私は浅井克己と申します。こちらは水無瀬瑞葉、水無瀬光矢、そして侍女の川口佳乃です」
「水無瀬瑞葉です。お世話になります」
「水無瀬光矢です。よろしくお願いします」
「川口佳乃と申します。水無瀬家に仕える侍女でございます。こちらの方々と連携して務めたいと思います。よろしくお願いいたします」
それぞれが頭を下げると、叔父様が疑問を口にした。
「楠本殿は、本邸からと仰いましたが……」
「ええ、皆様方をお迎えするのに、執事長である私が任命されました。また、使用人も本邸から数名派遣しておりますので、ご安心ください」
「執事長が直々に……それは恐縮です。どうぞよろしくお願いいたします」
「では、さっそくお部屋へご案内いたしましょう。本日のご予定はいかがなさいますか?」
「今日はまだ昼過ぎですから、まずはこちらの神殿へ挨拶に伺おうと思っています」
「かしこまりました」
そうして私たちは、それぞれ部屋へ案内された。少し休んでいると佳乃が訪れ、私は旅装から神殿に相応しい、少しかしこまったけれど動きやすいワンピースに着替えることにした。
こうして、私たちのここでの日々がいよいよ始まった。
もちろん一日では行けない距離なので、途中の宿屋に泊まる。私は佳乃と、光矢は叔父様と同室。非日常のことばかりで心が弾む。
ふと気になって、叔父様に尋ねてみた。
「盗賊や禍憑に一度も襲われませんでしたね。多くはないですが荷物も積んでいたのに……やはり、そうしたことは滅多にないものですか?」
「いや、そんなことはないよ。ただ、この馬車は僕が作った“印象を薄くする神具”を取り付けているからね」
叔父様は事もなげに答える。
私は納得しつつも、眉を寄せた。
「盗賊と禍憑に気づかれないのはいいですが、すれ違う馬車や通行人にとっては危険では?」
「それは大丈夫。そこは緻密に計算してある。馬車が通っていると認識はできるけれど、この馬車に対して余計な考えを抱けないようになっているんだ」
横で光矢が補足する。
「叔父さんは軽く言ってるけど、これは本当にすごい発明なんだよ。目玉が飛び出るほどの値段はするけど、その価値はある。今じゃ上位神守や豪商の馬車はほとんど導入していて、これをつけてから被害はゼロになったんだ」
「叔父様は本当にすごい人なのね」
思わずそう口にすると、光矢がにっこり笑った。
「そうなんだよ。あまりにも身近にいるから、忘れそうになるけどね」
「ははは、そんな大したものじゃないよ」
叔父様は照れたように笑い、前方を指差した。
「おっ、そろそろ見えてきた。滞在させてもらう岩城家の別荘だ。管理人が出迎えてくれるはずだよ」
出発から七日が過ぎ、ようやく目的地に到着さした。ここは、辺境の地手前の領だ。随分と遠くまで来たはずなのに、道中が楽しかったせいか、あっという間に感じられる。
馬車が停車すると、玄関先には老齢の男性が待ち構えていた。気品ある落ち着いた立ち姿からして、ただの管理人ではなさそうだ。
「ようこそ、岩城家の別荘へお越しくださいました。私は岩城家本邸より参りました楠本と申します。奥様からは『自分の家と思ってくつろいでほしい』と仰せつかっております。ご滞在中は、使用人一同、心を込めてお仕えいたしますので、どうぞなんなりとお申し付けください」
にこやかな笑みを浮かべる楠本さんに、私たちは順に挨拶を返した。
「これはご丁寧に。ありがとうございます。私は浅井克己と申します。こちらは水無瀬瑞葉、水無瀬光矢、そして侍女の川口佳乃です」
「水無瀬瑞葉です。お世話になります」
「水無瀬光矢です。よろしくお願いします」
「川口佳乃と申します。水無瀬家に仕える侍女でございます。こちらの方々と連携して務めたいと思います。よろしくお願いいたします」
それぞれが頭を下げると、叔父様が疑問を口にした。
「楠本殿は、本邸からと仰いましたが……」
「ええ、皆様方をお迎えするのに、執事長である私が任命されました。また、使用人も本邸から数名派遣しておりますので、ご安心ください」
「執事長が直々に……それは恐縮です。どうぞよろしくお願いいたします」
「では、さっそくお部屋へご案内いたしましょう。本日のご予定はいかがなさいますか?」
「今日はまだ昼過ぎですから、まずはこちらの神殿へ挨拶に伺おうと思っています」
「かしこまりました」
そうして私たちは、それぞれ部屋へ案内された。少し休んでいると佳乃が訪れ、私は旅装から神殿に相応しい、少しかしこまったけれど動きやすいワンピースに着替えることにした。
こうして、私たちのここでの日々がいよいよ始まった。
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