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80 帰路(光矢視点)
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叔父さんと樹さんが戻ってくると、僕たちは護衛とともに出発した。
本当は岩城家の方々も「もっとゆっくりしていけばいいのに」と言ってくださったが、鉱山の不正の件や僕たちの傷害未遂事件については、報告だけでなく証言も必要になるだろう。そう判断して、早々に辺境の地をあとにすることにしたのだ。
それにしても、あのときの当主夫人の話は長かった。姉さまが一言聞けば、百にもなって返ってくる。
両親の学生時代の話を聞きながら、僕は心の中で思った。――よくもまあ、あんなに仲の良かった二人が、姫花の虚言ごときであそこまで拗れたものだ。
むしろ、あの女がやり手だったのか? いや、そんなことは決してない。両親は家格が高く、幼い頃から信望者に囲まれて育った箱入りだ。下品な策謀に触れることもなく、単純に耐性がなかったのだ。それだけである。
帰路の馬車の中。行きと同じく、防音の神具を展開し、叔父さん、佳乃、姉さま、そして僕の四人で話を交わした。
「叔父さん、今回は予定以上の成果を上げられましたね」
「ああ。まずは瑞葉ちゃんの結界が対人でも通用することが証明できた」
「はい。穢れのある人間に限られますけれど」
姉さまはそう言いつつも、うれしそうに笑った。
「姉さまは本来、戦う必要なんてないんだ。悪意ある人間に対処できれば十分だよ」
「未来に神気を封じる神具が使われた場合は結界を展開できませんが……そのために体術も学んでいますから!」
悲観することなく言い切る姉さまに、僕は即座に口を挟む。
「姉さま、その場合でも大丈夫です。ねっ、叔父さん!」
「ああ。神気封じの神具はもともと僕が開発したものだからね。構造はすべて知り尽くしている。光矢君に言われて対抗策となる神具の試作品もできている。ただ、世には出さない。水無瀬家だけの秘密だ」
叔父さんに相談したとき、次に会った際にはすぐ試作品を見せてくれた。本当に、持つべきものは天才の叔父だ。
「さすが叔父様です!」
姉さまは目を輝かせ、尊敬の眼差しを向ける。
「全人教が花蓮をそそのかして使わせたのだとすれば、今後また同じ手を使ってくる可能性は高い。当然、先に対策をしておくべきことだ」
叔父さんは続ける。
「そして瑞葉ちゃんの結界では、穢れた者には耐え難い苦痛が与えられる。自白すれば苦痛が和らぐ。それと……『自分が自分でなくなる恐ろしい感覚』と言っていた」
「ただの痛みなら耐えられても、その恐怖の感覚があるからこそ自白してしまうのでしょう」
「ああ。そのおかげで黒岩家と金田家の関与を裏づける証言を得られた。録音機での証拠とあわせて提出済みだ。今度は中央から両家へ出頭命令が下り、正式な尋問が行われることになる」
「叔父様、その尋問には私も立ち会います。もし彼らが証言すれば死ぬ呪いをかけられているとしたら、浄化や解呪で助けられるかもしれません」
「ありがとう、瑞葉ちゃん。でも、罪人の尋問のたびに君を呼び出すわけにはいかない。やり方は理解できたから、神具で補いつつ、浄化や解呪が使える神気使いに任せるよう進言しておくよ」
「……わかりました。でも、私にできることがあれば遠慮なく言ってください。研究でも、何でも」
そう言う姉さまの顔は、これまでの自信のなさを拭い去り、晴れやかに輝いていた。
本当は岩城家の方々も「もっとゆっくりしていけばいいのに」と言ってくださったが、鉱山の不正の件や僕たちの傷害未遂事件については、報告だけでなく証言も必要になるだろう。そう判断して、早々に辺境の地をあとにすることにしたのだ。
それにしても、あのときの当主夫人の話は長かった。姉さまが一言聞けば、百にもなって返ってくる。
両親の学生時代の話を聞きながら、僕は心の中で思った。――よくもまあ、あんなに仲の良かった二人が、姫花の虚言ごときであそこまで拗れたものだ。
むしろ、あの女がやり手だったのか? いや、そんなことは決してない。両親は家格が高く、幼い頃から信望者に囲まれて育った箱入りだ。下品な策謀に触れることもなく、単純に耐性がなかったのだ。それだけである。
帰路の馬車の中。行きと同じく、防音の神具を展開し、叔父さん、佳乃、姉さま、そして僕の四人で話を交わした。
「叔父さん、今回は予定以上の成果を上げられましたね」
「ああ。まずは瑞葉ちゃんの結界が対人でも通用することが証明できた」
「はい。穢れのある人間に限られますけれど」
姉さまはそう言いつつも、うれしそうに笑った。
「姉さまは本来、戦う必要なんてないんだ。悪意ある人間に対処できれば十分だよ」
「未来に神気を封じる神具が使われた場合は結界を展開できませんが……そのために体術も学んでいますから!」
悲観することなく言い切る姉さまに、僕は即座に口を挟む。
「姉さま、その場合でも大丈夫です。ねっ、叔父さん!」
「ああ。神気封じの神具はもともと僕が開発したものだからね。構造はすべて知り尽くしている。光矢君に言われて対抗策となる神具の試作品もできている。ただ、世には出さない。水無瀬家だけの秘密だ」
叔父さんに相談したとき、次に会った際にはすぐ試作品を見せてくれた。本当に、持つべきものは天才の叔父だ。
「さすが叔父様です!」
姉さまは目を輝かせ、尊敬の眼差しを向ける。
「全人教が花蓮をそそのかして使わせたのだとすれば、今後また同じ手を使ってくる可能性は高い。当然、先に対策をしておくべきことだ」
叔父さんは続ける。
「そして瑞葉ちゃんの結界では、穢れた者には耐え難い苦痛が与えられる。自白すれば苦痛が和らぐ。それと……『自分が自分でなくなる恐ろしい感覚』と言っていた」
「ただの痛みなら耐えられても、その恐怖の感覚があるからこそ自白してしまうのでしょう」
「ああ。そのおかげで黒岩家と金田家の関与を裏づける証言を得られた。録音機での証拠とあわせて提出済みだ。今度は中央から両家へ出頭命令が下り、正式な尋問が行われることになる」
「叔父様、その尋問には私も立ち会います。もし彼らが証言すれば死ぬ呪いをかけられているとしたら、浄化や解呪で助けられるかもしれません」
「ありがとう、瑞葉ちゃん。でも、罪人の尋問のたびに君を呼び出すわけにはいかない。やり方は理解できたから、神具で補いつつ、浄化や解呪が使える神気使いに任せるよう進言しておくよ」
「……わかりました。でも、私にできることがあれば遠慮なく言ってください。研究でも、何でも」
そう言う姉さまの顔は、これまでの自信のなさを拭い去り、晴れやかに輝いていた。
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