神守の少女、二度目の人生は好きに生きます〜因縁相手は勝手に自滅〜

雪水砂糖

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82 依頼1

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 久しぶりに神殿を訪れた。
 受付の方に尋ねると、アオ君は最近は顔を見せていないらしい。上大位の嫡男ともなれば、もともと多忙なのだろう。

 少し残念に思いながらも、佳乃と一緒に掲示板の依頼を眺める。せっかくだから、久しぶりに討伐へ出てから帰ることにした。

「瑞葉様、刺山羊さしやぎの討伐依頼がありますよ。珍しいですね」

「刺山羊?どんな禍憑なの?」

「体の大きさほどもある角で突いてくる厄介な禍憑です。とても素早く、食欲が異常で、一頭で畑を丸ごと食い尽くしてしまうとか。この村ではすでにいくつも被害が出ているそうです」

「私と佳乃の二人だけで大丈夫かしら?」

「岩毛熊より討伐難易度は低いですし、刺山羊は群れません。二人いれば十分です」

「そう。それなら行ってみましょう。日帰りできそう?」

「距離はありますが、可能だと思います」

 そうして私たちは、依頼書に記された村を目指し、身体強化を施して走り出した。

「随分、離れたところまで来たわね」

「ええ。あっ、見えてきました。あの村です」

「人がいるわ。声をかけてみましょう」

「すみませーん。討伐依頼を受けてきた者です!」
 佳乃が村人に声をかけると、陽に焼けたおじさんが安堵したようにこちらへ駆けてきた。

「おお、ありがてぇ!今まさに畑がやられてるんだ。一日に一つずつ畑を食い尽くされてな……しかも、食べ終わった後は黒い靄が立ちこめて近づけねぇ。無理に近づいた若者がひとり、いまも寝込んでる」

「案内していただけますか? すぐ向かいます」

「こっちだ! 頼む!」
 おじさんの案内で村の外れまで走る。

「人間に被害は?」

「いや、襲われちゃいねぇ。畑だけだ」

「それは……不幸中の幸いですね」

 たどり着いたのは広いかぼちゃ畑だった。そこに、刺山羊が一頭。すでに畑の半分を食い荒らしている。

「ああやって、一つの畑を食べ終えると、どこかへ行っちまうんだ」

「そうですか……」
 人を傷つけたことのない禍憑。
 なら、もしかして——。

「佳乃、私に任せて」
「はい」
 佳乃は私がやりたいことをわかってくれているようだ。

 こちらに敵意がないせいか、刺山羊は気づかず夢中でかぼちゃを食べている。

 私はその姿を結界で包み込み、静かに浄化を始めた。
 刺山羊の体から黒い靄が立ちのぼり、苦しげにのたうつ。
 さらに浄化を強めると、角が縮み、やがて体も普通の山羊ほどの大きさに戻った。
 全身から漂っていた禍々しい穢れは消え、そこにいたのは、ただの山羊だった。

「おお!山羊に戻ったぞ!」

「普通の山羊に戻りましたが、どうされますか?」

「こんなことがあるんだな……。元に戻ったんなら、山に返してやりてぇ」

「それなら、結界を解きますね」

 私が結界を解くと、山羊はこちらを見て一瞬固まり、次の瞬間、おじさんへ向かって突進してきた。

 私たちは慌てておじさんをかばおうと前に出たが——
「お、おまえは……やぎ坊じゃねぇか!」
 おじさんが叫ぶと、山羊は勢いを緩め、おじさんの胸に顔をすり寄せて甘え始めた。

 おじさんは目を潤ませながら、その頭を撫でる。
「やぎ坊だったのか……。元に戻れてよかったな。いなくなったと思ったら禍憑が現れて、おまえは食べられちまったのかと……」

 村の畑を荒らしていた禍憑は、かつておじさんに可愛がられていた山羊だったのだ。
 おじさんの涙が、山羊の白い毛に静かに落ちた。
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