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おじさんは涙を流しながら、「よかった、よかった」と何度もつぶやき、やぎ坊としばらく抱き合っていた。
私も少し目頭が熱くなりながら、佳乃と一緒にその光景を静かに見守っていた。
しばらくして、おじさんは涙を拭いながら言った。
「本当にありがとうな。こいつはこの村で生まれて、赤ん坊の頃から俺が育ててきた家族なんだ」
「その子が人を傷つけていなかったから、元に戻れたんです。きっと禍憑になって、異常な食欲に支配されながらも、村の人を襲わなかったのは——可愛がってくれた人たちのことを、覚えていたからでしょう」
「そうか……お前、ちゃんと覚えてたのか」
おじさんは嬉しそうに笑い、やぎ坊の体をわしわしと撫でていた。
ふと、その手が止まる。
「あれ? お前、こんなところに……注射の跡があるな。どうしたんだ?」
「ちょっと見せてください」
私と佳乃は近づき、やぎ坊の首元を確認した。確かに、太い針で三か所ほど刺されたような痕がある。
佳乃が少し考え込み、やがて顔を上げた。
「おじさん、やぎ坊はこの村で生まれて、ずっとここで育ったんですよね?」
「ああ、そうだよ」
「この村に、穢れが溜まっているような場所はありますか?」
「いや、そんなもんはまったくない」
「……そうですか」
「佳乃?」
「瑞葉様、このやぎ坊……意図的に禍憑にされた可能性があります」
「なんだと!?」
「そんなことができるの?」
「確証はありませんが、近年、穢れのない土地でも禍憑が発生する例が増えています。本来なら禍憑は討伐されてしまうため、こうして元に戻ることはありません。だから、これまで誰も気づかなかったんです」
「なるほど……つまり、注射のようなもので、禍憑化を促す何かを注入されたということね。叔父様に来て確認していただいた方が良さそうだわ」
「はい、それが良いかと」
「おじさん、構いませんか?」
「ああ、わしも気になる。やぎ坊を見てやってくれ」
私は神具を取り出し、ボタンを押した。
すぐに叔父様の声が響く。
『瑞葉ちゃん、どうした?』
「叔父様! 今から光矢と一緒に、山野村まで来ていただけますか?禍憑を浄化して元に戻った山羊に、少し気になる点がありまして」
『山野村? それほど遠くないな。光矢君も一緒にいるから大丈夫だ。すぐ向かおう』
「瑞葉様、さっそく神具が役に立ちましたね」
「ええ。本当に便利だわ」
この神具は、位置を知らせる機能に加え、遠距離でも声を伝え合えるように光矢が提案し、改良してくれたものだ。
試作品のため長時間は使えないが、それでも十分実用的だった。
「では、うちで待つといい。来たらすぐ分かるよう、村の者に知らせておくよ」
「ありがとうございます。それではお言葉に甘えてお邪魔します」
「よし、やぎ坊、家に帰るぞ」
おじさんはにこにこと笑いながら、やぎ坊を連れて歩き出した。
案内された家は、村の中でもひときわ大きく、立派な造りだった。
「ご立派なお宅ですね」
「いやいや、そなたらは神守じゃろう? しかもお嬢さんはかなり上位の。すべての奉仕活動者は“身分関係なく平等に扱う”決まりがあるから、そのようにしていたが……わかっとるさ」
びっくりした。モブ眼鏡をかけているのに。
「佳乃、眼鏡の効果、効いてないの?」
「いえ、ちゃんと効いていますよ。ただ、どれだけ容姿や服装を変えても——神守の気配までは隠せませんから」
私はなんとなく釈然としないまま、おじさんの後に続いて家の中へと足を踏み入れた。
私も少し目頭が熱くなりながら、佳乃と一緒にその光景を静かに見守っていた。
しばらくして、おじさんは涙を拭いながら言った。
「本当にありがとうな。こいつはこの村で生まれて、赤ん坊の頃から俺が育ててきた家族なんだ」
「その子が人を傷つけていなかったから、元に戻れたんです。きっと禍憑になって、異常な食欲に支配されながらも、村の人を襲わなかったのは——可愛がってくれた人たちのことを、覚えていたからでしょう」
「そうか……お前、ちゃんと覚えてたのか」
おじさんは嬉しそうに笑い、やぎ坊の体をわしわしと撫でていた。
ふと、その手が止まる。
「あれ? お前、こんなところに……注射の跡があるな。どうしたんだ?」
「ちょっと見せてください」
私と佳乃は近づき、やぎ坊の首元を確認した。確かに、太い針で三か所ほど刺されたような痕がある。
佳乃が少し考え込み、やがて顔を上げた。
「おじさん、やぎ坊はこの村で生まれて、ずっとここで育ったんですよね?」
「ああ、そうだよ」
「この村に、穢れが溜まっているような場所はありますか?」
「いや、そんなもんはまったくない」
「……そうですか」
「佳乃?」
「瑞葉様、このやぎ坊……意図的に禍憑にされた可能性があります」
「なんだと!?」
「そんなことができるの?」
「確証はありませんが、近年、穢れのない土地でも禍憑が発生する例が増えています。本来なら禍憑は討伐されてしまうため、こうして元に戻ることはありません。だから、これまで誰も気づかなかったんです」
「なるほど……つまり、注射のようなもので、禍憑化を促す何かを注入されたということね。叔父様に来て確認していただいた方が良さそうだわ」
「はい、それが良いかと」
「おじさん、構いませんか?」
「ああ、わしも気になる。やぎ坊を見てやってくれ」
私は神具を取り出し、ボタンを押した。
すぐに叔父様の声が響く。
『瑞葉ちゃん、どうした?』
「叔父様! 今から光矢と一緒に、山野村まで来ていただけますか?禍憑を浄化して元に戻った山羊に、少し気になる点がありまして」
『山野村? それほど遠くないな。光矢君も一緒にいるから大丈夫だ。すぐ向かおう』
「瑞葉様、さっそく神具が役に立ちましたね」
「ええ。本当に便利だわ」
この神具は、位置を知らせる機能に加え、遠距離でも声を伝え合えるように光矢が提案し、改良してくれたものだ。
試作品のため長時間は使えないが、それでも十分実用的だった。
「では、うちで待つといい。来たらすぐ分かるよう、村の者に知らせておくよ」
「ありがとうございます。それではお言葉に甘えてお邪魔します」
「よし、やぎ坊、家に帰るぞ」
おじさんはにこにこと笑いながら、やぎ坊を連れて歩き出した。
案内された家は、村の中でもひときわ大きく、立派な造りだった。
「ご立派なお宅ですね」
「いやいや、そなたらは神守じゃろう? しかもお嬢さんはかなり上位の。すべての奉仕活動者は“身分関係なく平等に扱う”決まりがあるから、そのようにしていたが……わかっとるさ」
びっくりした。モブ眼鏡をかけているのに。
「佳乃、眼鏡の効果、効いてないの?」
「いえ、ちゃんと効いていますよ。ただ、どれだけ容姿や服装を変えても——神守の気配までは隠せませんから」
私はなんとなく釈然としないまま、おじさんの後に続いて家の中へと足を踏み入れた。
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