93 / 97
92 婚約2
しおりを挟む
食堂にて、三人で温かい飲み物を囲んで話していると、表の方からドタバタと賑やかな足音が近づいてきた。
「戻りましたよ~。あっ、みんな何か飲んでる。俺も飲もうっと」
と、祥太朗さんがのほほんと戻ってくる。
だが、椅子に座ろうとする祥太朗さんの腕を、アオ君が素早くつかんだ。
「祥太朗、そんな時間はない!帰るぞ! 父上と母上に、すぐに報告しなければ!」
「ええ!ちょっと休憩させてくださいよ~!」
と叫びながらも、抵抗虚しくアオ君に引きずられていく。
その姿を見送りながら、私は苦笑した。
「碧人様、ずいぶんはりきっておられますね。……おめでとうございます」
隣で見ていた佳乃が、穏やかに微笑んで言った。
「うん……ありがとう。……佳乃はどう思う?」
私の問いに、佳乃は一瞬だけ真面目な顔をして、すぐに柔らかな表情に戻った。
「僭越ながら、私は小さな頃から瑞葉様にお仕えしてまいりましたので……瑞葉様の婚約者となられる方については、どうしても厳しく見てしまうものです。しかし――」
そこで言葉を区切り、いつになく早口で続ける。
「碧人様なら大賛成です。もちろん、水無瀬家と釣り合う家格であることは大前提ですが、それだけではございません。碧人様は人柄がすばらしい。瑞葉様のピンチには迷わず駆けつけ、そして何より……瑞葉様のことを、心の底から大切にしているのが、あのお姿から強く伝わってきます。これこそが一番重要なことです」
佳乃の言葉が胸の奥にしみこんでいく。
「……ありがとう。もしかして、佳乃は、アオ君の気持ち…わかってた?」
「ええ。なんとなく、ですが」
とくすりと笑う佳乃。
その笑顔を見て、胸の中の不安がすっと軽くなる。
そこへ、食堂の入り口から明るい声がした。
「ただいま~。無事送り届けてきたよ」
叔父様と光矢が戻ってきた。
「叔父様、光矢、お疲れ様です。おじいさんとお孫さんの様子はどうでした?」
「問題ないよ。二人とも肝が据わってて、ケロッとしてた。お孫さんなんか、僕たちのこと“かっこいい”って言ってね。訓練して強くなるんだって、張り切ってたよ」
叔父様も笑みを浮かべながら続ける。
「村長さんにまた感謝されたけど、むしろ我々の問題に巻き込んでしまったから謝ってきたよ」
「そうよね。私たちへの報復に巻き込まれた被害者ですものね……」
光矢が私の顔をじっと見て、首をかしげた。
「姉さま、碧人様は?」
「あ、あのね。アオ君は用事があるから、先に帰ったわ」
「姉さま、赤くなってどうしたの? 告白でもされた? それとも、婚約の申込とか?」
「えぇ!なんでわかるの? 聞いてた?」
「……やっぱりね」
光矢は肩をすくめ、そして穏やかに微笑む。
「まあ、碧人様なら僕は反対しないよ。姉さまのこと、大事にしてくれそうだし。おめでとう」
「……光矢……ありがとう」
叔父様も目を細めた。
「瑞葉ちゃん、おめでとう。碧人様なら私も安心だよ。でも、何かあったらすぐ両親や私たちを頼りなさいね」
「はい。叔父様、ありがとう」
「じゃあ、兄さんと義姉さんに早く伝えなきゃね。帰ろうか」
佳乃も静かに頷く。
「瑞葉様、依頼達成の報告は済んでおりますので、戻りましょう」
「佳乃、ありがとう。行きましょうか」
そうして、四人で馬車に乗り込んだ。
「戻りましたよ~。あっ、みんな何か飲んでる。俺も飲もうっと」
と、祥太朗さんがのほほんと戻ってくる。
だが、椅子に座ろうとする祥太朗さんの腕を、アオ君が素早くつかんだ。
「祥太朗、そんな時間はない!帰るぞ! 父上と母上に、すぐに報告しなければ!」
「ええ!ちょっと休憩させてくださいよ~!」
と叫びながらも、抵抗虚しくアオ君に引きずられていく。
その姿を見送りながら、私は苦笑した。
「碧人様、ずいぶんはりきっておられますね。……おめでとうございます」
隣で見ていた佳乃が、穏やかに微笑んで言った。
「うん……ありがとう。……佳乃はどう思う?」
私の問いに、佳乃は一瞬だけ真面目な顔をして、すぐに柔らかな表情に戻った。
「僭越ながら、私は小さな頃から瑞葉様にお仕えしてまいりましたので……瑞葉様の婚約者となられる方については、どうしても厳しく見てしまうものです。しかし――」
そこで言葉を区切り、いつになく早口で続ける。
「碧人様なら大賛成です。もちろん、水無瀬家と釣り合う家格であることは大前提ですが、それだけではございません。碧人様は人柄がすばらしい。瑞葉様のピンチには迷わず駆けつけ、そして何より……瑞葉様のことを、心の底から大切にしているのが、あのお姿から強く伝わってきます。これこそが一番重要なことです」
佳乃の言葉が胸の奥にしみこんでいく。
「……ありがとう。もしかして、佳乃は、アオ君の気持ち…わかってた?」
「ええ。なんとなく、ですが」
とくすりと笑う佳乃。
その笑顔を見て、胸の中の不安がすっと軽くなる。
そこへ、食堂の入り口から明るい声がした。
「ただいま~。無事送り届けてきたよ」
叔父様と光矢が戻ってきた。
「叔父様、光矢、お疲れ様です。おじいさんとお孫さんの様子はどうでした?」
「問題ないよ。二人とも肝が据わってて、ケロッとしてた。お孫さんなんか、僕たちのこと“かっこいい”って言ってね。訓練して強くなるんだって、張り切ってたよ」
叔父様も笑みを浮かべながら続ける。
「村長さんにまた感謝されたけど、むしろ我々の問題に巻き込んでしまったから謝ってきたよ」
「そうよね。私たちへの報復に巻き込まれた被害者ですものね……」
光矢が私の顔をじっと見て、首をかしげた。
「姉さま、碧人様は?」
「あ、あのね。アオ君は用事があるから、先に帰ったわ」
「姉さま、赤くなってどうしたの? 告白でもされた? それとも、婚約の申込とか?」
「えぇ!なんでわかるの? 聞いてた?」
「……やっぱりね」
光矢は肩をすくめ、そして穏やかに微笑む。
「まあ、碧人様なら僕は反対しないよ。姉さまのこと、大事にしてくれそうだし。おめでとう」
「……光矢……ありがとう」
叔父様も目を細めた。
「瑞葉ちゃん、おめでとう。碧人様なら私も安心だよ。でも、何かあったらすぐ両親や私たちを頼りなさいね」
「はい。叔父様、ありがとう」
「じゃあ、兄さんと義姉さんに早く伝えなきゃね。帰ろうか」
佳乃も静かに頷く。
「瑞葉様、依頼達成の報告は済んでおりますので、戻りましょう」
「佳乃、ありがとう。行きましょうか」
そうして、四人で馬車に乗り込んだ。
0
あなたにおすすめの小説
復讐は、冷やして食すのが一番美味い
Yuito_Maru
ファンタジー
3度目の人生を生きるピオニー・レノドン。
1度目の人生は、愛した幼馴染と家族に裏切られ、無垢で無力のまま命を落とした。
2度目は、剣を磨き、王太子の婚約者となるも、1度目より惨めに死んでいった。
3度目は、微笑の裏で傭兵団を率い、冷たく復讐の刃を研ぐ。
狙うは、レノドン伯爵家、そして王家や腐った貴族たち。
「復讐とは、怒りを凍らせて成就する歪んだ喜びだ」――ピオニーは今、その意味を体現する。
-----
外部サイトでも掲載を行っております
【完結】海外在住だったので、異世界転移なんてなんともありません
ソニエッタ
ファンタジー
言葉が通じない? それ、日常でした。
文化が違う? 慣れてます。
命の危機? まあ、それはちょっと驚きましたけど。
NGO調整員として、砂漠の難民キャンプから、宗教対立がくすぶる交渉の現場まで――。
いろんな修羅場をくぐってきた私が、今度は魔族の村に“神託の者”として召喚されました。
スーツケース一つで、どこにでも行ける体質なんです。
今回の目的地が、たまたま魔王のいる世界だっただけ。
「聖剣? 魔法? それよりまず、水と食糧と、宗教的禁忌の確認ですね」
ちょっとズレてて、でもやたらと現場慣れしてる。
そんな“救世主”、エミリの異世界ロジカル生活、はじまります。
追放令嬢、辺境王国で無双して王宮を揺るがす
yukataka
ファンタジー
王国随一の名門ハーランド公爵家の令嬢エリシアは、第一王子の婚約者でありながら、王宮の陰謀により突然追放される。濡れ衣を着せられ、全てを奪われた彼女は極寒の辺境国家ノルディアへと流される。しかしエリシアには秘密があった――前世の記憶と現代日本の経営知識を持つ転生者だったのだ。荒廃した辺境で、彼女は持ち前の戦略眼と人心掌握術で奇跡の復興を成し遂げる。やがて彼女の手腕は王国全土を震撼させ、自らを追放した者たちに復讐の刃を向ける。だが辺境王ルシアンとの運命的な出会いが、彼女の心に新たな感情を芽生えさせていく。これは、理不尽に奪われた女性が、知略と情熱で世界を変える物語――。
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
白い結婚にさよならを。死に戻った私はすべてを手に入れる。
美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
商人であった父が、お金で貴族の身分を手に入れた。私というコマを、貴族と結婚させることによって。
でもそれは酷い結婚生活の始まりでしかなかった。悪態をつく姑。私を妻と扱わない夫。夫には離れに囲った愛人がおり、その愛人を溺愛していたため、私たちは白い結婚だった。
結婚して三年。私は流行り病である『バラ病』にかかってしまう。治療費は金貨たった一枚。しかし夫も父も私のためにお金を出すことはなかった。その価値すら、もう私にはないというように。分かっていたはずの現実が、雨と共に冷たく突き刺さる。すべてを悲観した私は橋から身を投げたが、気づくと結婚する前に戻っていた。
健康な体。そして同じ病で死んでしまった仲間もいる。一度死んだ私は、すべてを彼らから取り戻すために動き出すことを決めた。もう二度と、私の人生を他の人間になど奪われないために。
父の元を離れ計画を実行するために再び仮初の結婚を行うと、なぜか彼の愛人に接近されたり、前の人生で関わってこなかった人たちが私の周りに集まり出す。
白い結婚も毒でしかない父も、全て切り捨てた先にあるものは――
「宮廷魔術師の娘の癖に無能すぎる」と婚約破棄され親には出来損ないと言われたが、厄介払いと嫁に出された家はいいところだった
今川幸乃
ファンタジー
魔術の名門オールストン公爵家に生まれたレイラは、武門の名門と呼ばれたオーガスト公爵家の跡取りブランドと婚約させられた。
しかしレイラは魔法をうまく使うことも出来ず、ブランドに一方的に婚約破棄されてしまう。
それを聞いた宮廷魔術師の父はブランドではなくレイラに「出来損ないめ」と激怒し、まるで厄介払いのようにレイノルズ侯爵家という微妙な家に嫁に出されてしまう。夫のロルスは魔術には何の興味もなく、最初は仲も微妙だった。
一方ブランドはベラという魔法がうまい令嬢と婚約し、やはり婚約破棄して良かったと思うのだった。
しかしレイラが魔法を全然使えないのはオールストン家で毎日飲まされていた魔力増加薬が体質に合わず、魔力が暴走してしまうせいだった。
加えて毎日毎晩ずっと勉強や訓練をさせられて常に体調が悪かったことも原因だった。
レイノルズ家でのんびり過ごしていたレイラはやがて自分の真の力に気づいていく。
死に戻りの悪役令嬢は、今世は復讐を完遂する。
乞食
恋愛
メディチ家の公爵令嬢プリシラは、かつて誰からも愛される少女だった。しかし、数年前のある事件をきっかけに周囲の人間に虐げられるようになってしまった。
唯一の心の支えは、プリシラを慕う義妹であるロザリーだけ。
だがある日、プリシラは異母妹を苛めていた罪で断罪されてしまう。
プリシラは処刑の日の前日、牢屋を訪れたロザリーに無実の証言を願い出るが、彼女は高らかに笑いながらこう言った。
「ぜーんぶ私が仕組んだことよ!!」
唯一信頼していた義妹に裏切られていたことを知り、プリシラは深い悲しみのまま処刑された。
──はずだった。
目が覚めるとプリシラは、三年前のロザリーがメディチ家に引き取られる前日に、なぜか時間が巻き戻っていて──。
逆行した世界で、プリシラは義妹と、自分を虐げていた人々に復讐することを誓う。
(完)聖女様は頑張らない
青空一夏
ファンタジー
私は大聖女様だった。歴史上最強の聖女だった私はそのあまりに強すぎる力から、悪魔? 魔女?と疑われ追放された。
それも命を救ってやったカール王太子の命令により追放されたのだ。あの恩知らずめ! 侯爵令嬢の色香に負けやがって。本物の聖女より偽物美女の侯爵令嬢を選びやがった。
私は逃亡中に足をすべらせ死んだ? と思ったら聖女認定の最初の日に巻き戻っていた!!
もう全力でこの国の為になんか働くもんか!
異世界ゆるふわ設定ご都合主義ファンタジー。よくあるパターンの聖女もの。ラブコメ要素ありです。楽しく笑えるお話です。(多分😅)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる