- Mix blood -

久悟

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第二章 リーベン島編

基礎の基礎 エミリーの場合

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 里長さんから練気術の話を聞いた後、メイファさんの後について屋敷に着いた。
 へぇ、入口で靴を脱ぐんだ。木でできた棚にしまう。
​ ヤンさんの家も大きかったけど、この屋敷はただ広いだけじゃない。女の人が多いせいか、雰囲気が全然違う。
 
​「エミリー、この部屋を使いな。でもな、私はタダ食いさせるつもりは無いよ。女中と一緒に働きな」
​「え? てことは、あの綺麗なキモノ着ても良いの?」
​「あ? そうだな、着付けから教えてもらいな。あとは言葉遣いもどうにかしてもらえ」
​「はい! 分かったよ!」
 
​「……分かってないなこいつは」
 
​ 女中頭のランさんの指導が始まる。まずは、綺麗な着物の着付けから教わるけど……難しいよこれは……。
 
​「私も若い頃は、一人で着られる様になるのに結構かかったからねぇ。エミちゃんも慣れるまでは私が着付けるよ」
​「うん、ありがとうランさん!」
​「次はご飯の配膳に行くよ。慣れるまでは気をつけるんだよ。絶対に落とさないようにね!」
 
​ メイファさんの家族は、ご主人と、子供は男の人と女の人が一人ずつ。二人とも私より年上に見えるなぁ。
 私達女中のお仕事は、ご主人様であるメイファさん一家のお世話をすることだ。
​ がんばろ! 強くなるためだもん!
 
​ 夕食は、料理人が作りに来る。住み込んで働いているのは私達女中だけだ。できたてのお料理を、冷めないうちに急いでご主人様のお膳に運ぶ。
 
​「メイファさん! ご飯持ってきたよ!」 
​(エミちゃん。お食事お持ちしました、だよ)
 
​「お食事! お持ちしたよ!」
 
​「……奥様、申し訳ございません……」

 メイファさんの家族みんなが笑ってるな。大成功かな?
 
​「じゃ、私達もご飯食べようか」
 
​ 女中は私を含めて五人。みんなで一緒に賄いまかなを食べるんだ。みんな明るくてよく喋るから、私はすぐに打ち解けちゃった!
 
​「エミちゃんは元気だね、狩猟者なんだって? 外の世界はこことは全然違うのかい?」
​「うん、船で出たとこのルナポートってとこでも全然ご飯違ったよ! ここのご飯も凄くおいしいけど種類が違うかな!」
 
​ 皆この島を出た事は無いみたい。特に制限はされていないけど、大陸に行く用事も無いんだって。
 
​「ねぇねぇ、ランさん、この里にはギャンブルってあるの?」
​「ぎゃんぶる?」
​「お金賭けて遊ぶの!」
​「あぁ、賭博とばくかい? なら賭場とばがあるよ。サイコロ賭博が人気みたいだね。エミちゃんそんなもんに興味あるのかい? 意外だね」
​「ここから近い?」
​「そうだね、そこまで遠くはないよ。また地図書いて渡してあげるよ」
​「ホントに? ありがとー!」

 やった!  トバだって! お休みもらったら行ってみよう!
 
​ この里のお風呂は、大陸のお風呂とは違って落ち着く。浴槽の木の香りが、リラックスできる理由なんだと思う。
 いつもは、女中二人ずつで入るみたい。私はランさんとスイさんと三人で入った。
 
​「ランさん、おっぱいすごいね……」
​「あぁ、恥ずかしいからいつもは着物で締めてるけどね……」
​「スイさんは私と一緒だ!」
​「エミちゃん、気にしてることをはっきり言うね……いいなぁランさん。大きい人は大きい人で悩みなんだね……」

 みんなで笑いながら楽しく入るお風呂。楽しすぎてのぼせそうになっちゃった!
 
​ 明日からはメイファさんと修行だ。
 回復術師としてもっと成長できる。頑張るぞ。
​ 
 
​ 
 ◇◇◇

  
​ メイファさんの屋敷の手伝いは、夜だけで良いんだって。まずは朝食を済ませる。
​ ランさん達が朝食を運んで来てくれた。
 
​「ありがとう! いただきます!」
​(エミちゃん、修行がんばってね)
 
​ 元気よく返事をしたいところだったけど、大きく頷いて応えた。
 
​「よし、少ししたら準備して玄関で待ってろ。修練場まで歩いていくよ」
​「はい! 分かりました!」
​「お、言葉遣い良くなってきたな」
​「うん、ありがとう!」
​「……前言撤回だ」

 
 屋敷から修練場はそんなに遠くない。メイファさんは私の前を無言で歩く。でも、変に緊張したりはしないんだ。
 
​「よし、始めるか」
​「よろしくお願いします!」
​「本当に元気がいいなお前は。さて、回復術と治療術の違いは、昨日里長から聞いた通りだ。昨日、練気術で気力を練ったな? その練気に回復用に変換した魔力を更に練り込む。それを対象に纏わせて治療する。やってみろ」
 
​ そう言って、メイファさんは腰の刀を抜いて、自分の腕をサッと切り付けた。
 
​「えっ、大丈夫!?」
​「そう思うなら早く治療してくれ。先ずは昨日の様に気力を練って両手に集めろ」
 
​ 全身の気力を感じて、練り上げる。
​ 早く血を止めなきゃ。丁寧に丁寧に、両手に集めるんだ。
 
​「よし、回復用に変換した魔力を、更に練気に練り込め」

 んー難しいよこれ!
​ 練気に魔力を練り込もうとすると、途端に不安定になる。魔力と練気がぶつかり合って、そして弾け飛んだ。
 
​「メイファさん…… これ難しいね……」
​「あぁ、ここが最難関だ。もう一度言うぞ。練気に回復用に変換した魔力を練り込み、対象に纏わせて治療だ」
​「練習あるのみだね!」
​「あぁ、その通りだ。出来るまで繰り返すことだ」
​「でも、メイファさんの傷が……」
 
​『治療術 再生』
 
​ 一瞬でメイファさんの傷が跡形もなく治った。回復術の治癒速度と比べて、体感で倍以上早く感じた。しかも、効果が数段高いんだ。
 
​「最初から出来るとは思っていない」
​「すごっ! 回復術より早く綺麗に治ったよ!?」
​「あぁ、里長の話にあったように回復術の上位術だ。その分難易度は上がる」
 
​『強化術 剛力』
 
​ メイファさんは私に向けて術を施した。
 
​「これを握り潰してみろ」
 
​ ん? 石?
​ 投げ渡された石を軽く握ったつもりが、バリバリッって音を立てて粉々になった。
 
​「え!?」
​「強化術も同じ要領だ。剛力、剛健、迅速。補助術よりも上位の術だ」
​「よーし! がんばる!」

 大丈夫、私はもっと強くなれる!
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