- Mix blood -

久悟

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第二章 リーベン島編

すき焼き

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「とりあえず、第一段階突破ってとこかな」
 
 修練場を出て、大岩を振り返りながらオレは言った。トーマスもエミリーも、解放感からか顔が明るい。
 
「てかトーマス、キャラ変わってんじゃん!」
「いや、二ヶ月あんなに元気な人達と過ごせば声も大きくなるよ……基本的には変わってないよ」

 トーマスは照れたように笑った。
 
「エミリーこそ、敬語を使うようになってるとはな」
「ランさんにいつも指導されてるからね! ランさん、おっぱい大っきいよぉ?」
「なんだと? それはお近づきになりたいもんだな」
 
 久しぶりの再会に、各々が堰を切ったように喋りだした。単独修行に明け暮れた二ヶ月間、その成果を遺憾無く発揮できた事による安堵も大きかった。
 
 喋っていると、里長おすすめのお店に着いた。中に入り、すき焼きをオーダーする。
 牛の獣の肉を薄く切って、野菜と一緒に醤油ベースの甘いタレで煮込んだ料理だ。生の卵に付けて食べるらしい。
 
「おぉ……これはまた美味いな……」
 
 口の中に広がる甘じょっぱい味と、生卵のまろやかさが絶妙だ。
 
「ほんと、いつもの料理と違ってガツンとくる系だね!」
 
 エミリーはうっとりとした表情で肉を頬張っている。
 
「これは吟醸酒が合うだろうね。醤油と砂糖を買って帰ろう。すき焼きは外でも再現できるね」
 
 トーマスは真剣な顔で分析していた。
 
「ふぅ、食った食った。二人は今日は何するんだ?」
 
 腹を摩りながら尋ねる。
 
「私は二ヶ月前から決まってるよ。賭場とばに行くんだ!」
 
 エミリーは目をキラキラさせてそう答えた。
 トバ? まぁ、ギャンブルだろう。相当ストレスが溜まっていたんだろうな。
 
「そうか、だいぶお預け食らってるもんな」
「僕はこの島の特産品を見て回ろうかな」
「そうか、オレは何するかなぁ。いきなり休みって言われても困るもんだな。適当にウロウロするかな。夜はまた集まって飲まないか?」

 オレの提案に、二人は快く賛成した。
  
「いいよ! 奥様がよく行くお店教えてもらったから、そこに行こうよ」
「うんうん、特産品買ってきたらエミリーに渡してもいいかい?」
「うん、もちろん!」
 
 昼食後、オレ達は別行動をとった。
 オレは里を歩き回った。父さんの故郷だ、日記にあった場所を巡ってみる。日記と照らし合わせながら歩いた。次に会った時には、里の思い出を共有出来るかな。

 
 夜になり、メイファさんおすすめの店に行く。スシという料理だ。
 生の魚を薄く切って、シャリと呼ばれる米に乗せた料理。見た目も美しく、魚の鮮度が良いのか、臭みが全くない。
 
「この島は醤油が大活躍だな! 刺身とはまた違って美味しい」
 
 シャリの酸味が魚の脂と一体となり、醤油とワサビがそれを引き立てている。
 
「うん! 奥様に美味しかったって伝えなきゃ」
「大将、おすすめの吟醸酒ください」
「トーマス、ここの酒気に入ってるな」
「ヤンさんの家は毎日が宴会だからね」
 
 トーマスは顔を赤くしながら酒を飲んでいる。
 
「そういえば、トバはどうだった?」
 
 エミリーの機嫌は損なわれてはいない。ギャンブルで負けたあとは決まって落ち込んでいたけど……今回は楽しめたんだろう。
 
「うん、サイコロ賭博って言って、サイコロの目が奇数が偶数かを賭けるゲームなんだけど、凄く楽しかったよ! ハン! チョウ! ってね!」
「で、勝ったのか?」
「いや、負けたけど……」
 
 エミリーは頭を掻いて笑った。
 
「二択でも負けるのかお前は」
「奥が深いよギャンブルは……」
 
 久しぶりの休み。
 三人は心ゆくまで楽しんだ。
 
 
 ◇◇◇

  
 次の日、各々が時間通りに修練場に集まった。
 
「昨日は楽しめたか?」
「「「はい!」」」
 
 里長が穏やかな顔で問いかけた。
 
「それは良かった。今日からは、もう一段階上にいこうかの」
 
 第一段階で褒められたオレ達三人は、次の段階への期待に胸を膨らませている。
 
「その前に、エミリーよ。お主『仙族せんぞく』だな。返答次第では詳しく話を聞かねばならぬ」
 
 里長の言葉に、場の空気が一変した。
 
「えっ……?」
 
 エミリーは驚いた表情で少し声を漏らし、その後俯いた。その顔は青ざめている。
 
 エミリーが仙族? どういうことだ?
 オレもトーマスも驚きを隠せない。トーマスは心配そうにエミリーを見つめている。
 
「青い眼を隠して生きておるのは察しておる。そうせざるを得ぬ理由があるのであろう?」
 
 オレ達は一度、エミリーの青い眼を見ている。その後、エミリーは激しく取り乱した。触れられたくない過去があるのは間違いなかった。
 
「里長! ちょっと待ってください!」
 
 オレは思わず前に出た。
 
「ユーゴ、いいよ。大丈夫」
 
 エミリーはそう言うと顔を上げ、ゆっくりと話し始めた。
 
「里長さん、私は仙族と人族の間に生まれた子供です」
「成る程の……それで分かった。皆までは聞くまい」
 
 里長はそう言うと、静かに頷いた。
 エミリーもオレと同じ、ミックス・ブラッドなのか……?
 
「……いえ、まだユーゴとトーマスには話せていないんです。私の過去を二人には話しておきたい。二人共、聞いてくれる?」
 
 エミリーの真っ直ぐな視線に、オレ達は頷いた。
 
「もちろんだ」
 
 オレはすぐに答えた。
 
「心の整理が出来たんだね」
 
 トーマスも落ち着いた声で言った。
 
 そして、エミリーは真っ直ぐな目で、自分の過去を語り始めた。
 
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