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第二章 リーベン島編
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帰りは空中を駆けて里へ戻った。律儀に地上を歩いて大蛇達を相手にする必要もない。かなりの距離を駆けたけど、息が切れるようなことは無かった。
オレたちは戦利品を抱え、ヤンさんの鍛冶場へと向かう。鉄の匂いと熱気が満ちた仕事場に入ると、奥からヤンさんが顔を出した。
「おぅ、やったか! どれどれ、見せてみろ」
その豪快な声に迎えられ、俺はコカトリスの嘴や爪、そして体皮をカウンターに広げた。道中で仕留めたヘビやトカゲの皮も一緒だ。
「ほぅ、これがコカトリスとやらの体皮か? こりゃ上質な皮だな。龍の鱗がかなり丈夫そうだ。嘴と爪か、これの使い道も無くはねぇが……他の蛇や蜥蜴の皮もまぁまぁの質だな」
ヤンさんは太い指で器用に皮を撫でる。規則的に並んだ深緑色の龍鱗が、鍛冶場の灯りを反射してキラリと光った。その美しさに見とれていると、ふと疑問が湧いてくる。
「全身がドラゴンの体ならもっと強いだろうに……何でニワトリの頭と脚なんていう進化を遂げたんだろうな」
「いや、鶏からこう進化したんじゃない?」
トーマスの冷静なツッコミに、オレは「あ、なるほど」と頷く。普通に考えればそうに違いない。まあ、考えても分かることじゃないか。
オレは袋から魔晶石を取り出し、カウンターに並べた。コカトリスから採れた三つは、一際強い輝きを放っている。
「また沢山持って帰ってきたな! おぉ? この三つは別格だな。コカトリスから出てきたのか?」
ヤンさんは質のいい魔晶石を目の前に翳し、中の揺らめきを観察しながら問いかけてきた。
「はい、ちょうど三つ出てきました」
「こりゃいい防具が出来るぞ。作っといてやる。お代は他の素材と魔晶石で十分だ。いや……俺がもらい過ぎなくれぇだな。買い取ろう」
「いやいや! 私たち刀まで貰ってるんだもん。ヤンさんが取っといてよ!」
「そうですよ親方。防具まで作って頂くんです。逆にこちらが支払わないと」
エミリーとトーマスの言葉に、ヤンさんは頭をガシガシと掻いた。
「そうかぁ? んじゃ遠慮なく貰うぜ」
「ヤンさん、いつもありがとうございます」
「何言ってんだ! 他の皮で防具作って売ったら俺の懐が潤うんだからよ!」
ガハハと笑うヤンさんの顔は、本当に嬉しそうだった。数日後にはオレたちの装備がパワーアップする。そう思うと、自然と口元が緩んだ。
「そういえば、鎧の下に着るものも見てみないか? 寒くなってきたしな」
オレの提案に、ヤンさんが顔を上げた。
「おぅ、それならメイリン区の呉服屋街に行ってみろ。馴染みの店に連絡しとくわ」
「メイリン区の案内なら私にまかせてよ!」
「じゃ、明日の午後に行ってみるか」
エミリーはヤンさんから店の場所を聞くと、満足げに頷いた。その日はそこで解散し、各自の屋敷へと帰った。
◇◇◇
次の日の朝。
突き刺すような冬の寒さで固まった身体を、庭で入念に解す。広い庭の中央で、オレは里長と木刀を構えて向かい合っていた。組太刀稽古だ。カァン、と木刀がぶつかり合う乾いた音が、静かな朝の空気に響き渡る。
「組太刀稽古は、相手との間合いや駆け引きを体得するのに良い。咄嗟に出る程に反復する様に」
「はい!」
オレと里長の口から吐き出される息は、どちらも白い。でも、その白さには明らかな差があった。
里長の息は細く長く、組太刀程度では少しも乱れることがない。一方、オレの目の前には「ハァ、ハァ」と荒い吐息が雲のように漂い、時折、里長の姿を遮るほどだ。息遣い一つでこれほどの差が出るのかと、オレは自分の未熟さを痛感した。
「良し、今日はここまで」
「ありがとうございました!」
午後は三人で昼食を食べる約束をしている。オレは稽古を終えると、そのままの足でメイリン区に向かい、二人と合流した。
「蕎麦屋か、オレ初めてだな」
「私は屋敷から近いからね、ここはよく来るよ。おすすめは天麩羅とざる蕎麦のセットだよ!」
エミリーに案内された店は、出汁の良い香りが漂っていて、入っただけで腹が鳴った。
「じゃあ、僕もそれにしよう」
「オレも」
運ばれてきた初めての蕎麦を、つゆにちょんとつけて、ズズッと啜る。
「これは美味いな。蕎麦のいい香りが鼻から抜ける」
「ほんと、テンプラもサクサクで美味しい」
「でしょ? 私はここの蕎麦が一番好きなんだ!」
エミリーは自分のことのように胸を張る。揚げたての天ぷらの衣はサクサクで、中のエビはプリプリだ。
「いやぁ、ここに来て半年くらいか、まだ食で感動するとはな……」
食後には、つゆに暖かい蕎麦湯を注いでゆっくりと啜る。じんわりとした温かさが、冷えた身体に染み渡った。
大満足の腹を摩りながら店を出る。次は服だ。
オレたちは戦利品を抱え、ヤンさんの鍛冶場へと向かう。鉄の匂いと熱気が満ちた仕事場に入ると、奥からヤンさんが顔を出した。
「おぅ、やったか! どれどれ、見せてみろ」
その豪快な声に迎えられ、俺はコカトリスの嘴や爪、そして体皮をカウンターに広げた。道中で仕留めたヘビやトカゲの皮も一緒だ。
「ほぅ、これがコカトリスとやらの体皮か? こりゃ上質な皮だな。龍の鱗がかなり丈夫そうだ。嘴と爪か、これの使い道も無くはねぇが……他の蛇や蜥蜴の皮もまぁまぁの質だな」
ヤンさんは太い指で器用に皮を撫でる。規則的に並んだ深緑色の龍鱗が、鍛冶場の灯りを反射してキラリと光った。その美しさに見とれていると、ふと疑問が湧いてくる。
「全身がドラゴンの体ならもっと強いだろうに……何でニワトリの頭と脚なんていう進化を遂げたんだろうな」
「いや、鶏からこう進化したんじゃない?」
トーマスの冷静なツッコミに、オレは「あ、なるほど」と頷く。普通に考えればそうに違いない。まあ、考えても分かることじゃないか。
オレは袋から魔晶石を取り出し、カウンターに並べた。コカトリスから採れた三つは、一際強い輝きを放っている。
「また沢山持って帰ってきたな! おぉ? この三つは別格だな。コカトリスから出てきたのか?」
ヤンさんは質のいい魔晶石を目の前に翳し、中の揺らめきを観察しながら問いかけてきた。
「はい、ちょうど三つ出てきました」
「こりゃいい防具が出来るぞ。作っといてやる。お代は他の素材と魔晶石で十分だ。いや……俺がもらい過ぎなくれぇだな。買い取ろう」
「いやいや! 私たち刀まで貰ってるんだもん。ヤンさんが取っといてよ!」
「そうですよ親方。防具まで作って頂くんです。逆にこちらが支払わないと」
エミリーとトーマスの言葉に、ヤンさんは頭をガシガシと掻いた。
「そうかぁ? んじゃ遠慮なく貰うぜ」
「ヤンさん、いつもありがとうございます」
「何言ってんだ! 他の皮で防具作って売ったら俺の懐が潤うんだからよ!」
ガハハと笑うヤンさんの顔は、本当に嬉しそうだった。数日後にはオレたちの装備がパワーアップする。そう思うと、自然と口元が緩んだ。
「そういえば、鎧の下に着るものも見てみないか? 寒くなってきたしな」
オレの提案に、ヤンさんが顔を上げた。
「おぅ、それならメイリン区の呉服屋街に行ってみろ。馴染みの店に連絡しとくわ」
「メイリン区の案内なら私にまかせてよ!」
「じゃ、明日の午後に行ってみるか」
エミリーはヤンさんから店の場所を聞くと、満足げに頷いた。その日はそこで解散し、各自の屋敷へと帰った。
◇◇◇
次の日の朝。
突き刺すような冬の寒さで固まった身体を、庭で入念に解す。広い庭の中央で、オレは里長と木刀を構えて向かい合っていた。組太刀稽古だ。カァン、と木刀がぶつかり合う乾いた音が、静かな朝の空気に響き渡る。
「組太刀稽古は、相手との間合いや駆け引きを体得するのに良い。咄嗟に出る程に反復する様に」
「はい!」
オレと里長の口から吐き出される息は、どちらも白い。でも、その白さには明らかな差があった。
里長の息は細く長く、組太刀程度では少しも乱れることがない。一方、オレの目の前には「ハァ、ハァ」と荒い吐息が雲のように漂い、時折、里長の姿を遮るほどだ。息遣い一つでこれほどの差が出るのかと、オレは自分の未熟さを痛感した。
「良し、今日はここまで」
「ありがとうございました!」
午後は三人で昼食を食べる約束をしている。オレは稽古を終えると、そのままの足でメイリン区に向かい、二人と合流した。
「蕎麦屋か、オレ初めてだな」
「私は屋敷から近いからね、ここはよく来るよ。おすすめは天麩羅とざる蕎麦のセットだよ!」
エミリーに案内された店は、出汁の良い香りが漂っていて、入っただけで腹が鳴った。
「じゃあ、僕もそれにしよう」
「オレも」
運ばれてきた初めての蕎麦を、つゆにちょんとつけて、ズズッと啜る。
「これは美味いな。蕎麦のいい香りが鼻から抜ける」
「ほんと、テンプラもサクサクで美味しい」
「でしょ? 私はここの蕎麦が一番好きなんだ!」
エミリーは自分のことのように胸を張る。揚げたての天ぷらの衣はサクサクで、中のエビはプリプリだ。
「いやぁ、ここに来て半年くらいか、まだ食で感動するとはな……」
食後には、つゆに暖かい蕎麦湯を注いでゆっくりと啜る。じんわりとした温かさが、冷えた身体に染み渡った。
大満足の腹を摩りながら店を出る。次は服だ。
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