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第三章 大陸冒険編
一年ぶりの依頼
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次の日の朝、高級ホテルの高級な朝食を腹に収め、オレ達はルナポートを出発した。美味しいご飯と金の当てができたことで、エミリーの機嫌も少しは上向いている。
目指すは一年ぶりのレトルコメルス。今のオレ達の脚なら、三日もかからないだろう。明後日の昼過ぎには着く予定だ。
朝からひたすら、練気を応用した高速移動で街道を駆け抜ける。木々を避けながら駆け回っていた山道と「」は違う。どこまでも真っ直ぐに続く石畳の道を、すれ違う商人やハンターたちに二度見されながら、風を切って突き進んだ。
道中、懐かしい馬の魔物、スレイプニルが草を食んでいるのが見えた。
「今晩は馬肉にするか!」
「いいね! 生レバーが食べたい!」
オレは走りながら指先をスレイプニルに向け、練気の弾丸を放つ。
空を駆ける練習で偶然編み出した術だ。眉間を正確に撃ち抜くと、スレイプニルは声もなく崩れ落ちた。下位の魔物相手には、実に使い勝手がいい。
一日中走り続け、空が茜色に染まり始めた頃、オレは一度空へ駆け上がり、野営に適した場所を探した。
「お、いい河原を発見したぞ」
トーマスに夕食の準備を、エミリーに就寝用のテントの設営を頼み、オレは一年ぶりのテントサウナに火を入れる。トレントを探す手間も惜しい。薪は里で調達してきたものを、エミリーの空間魔法から取り出した。
「サウナが温まったぞ! 水着に着替えて入ろう!」
「もうとっくに着替えてるよ!」
振り返ると、エミリーはテントの設営を水着姿でしていたらしい。確かに、汗をかく作業だ。合理的ではある。
「おい、エミリー……」
「ん、何?」
「お前……胸、大きくなったんじゃないか……?」
「あぁ、そうなんだよ。ロックリザードの革鎧が日に日にキツくなってきたから、コカトリスの鎧になって良かったよ。ヤンさんがやけにエロい目で採寸してたけどね」
なんてことだ……。この一年で、ここまで成長するとは。
そういえば、ヤンさんはエミリーのような華奢な女性が好みだと言っていた。
「やっと私の魅力に気付いたようだね! 二人共、鼻の下を伸ばして見惚れるがいいよ!」
「いや、そこまででは……」
「なんでだよ!」
グラマーな女性が好みのオレとトーマスが、エミリーに欲情することはない。だからこそ、この男女三人の旅が成立しているんだけれども。
「僕ら偶然同い年だからね。同じように成長していくんだ。エミリーがミオンさんを超える日が来るかもしれないよ。コカトリスの革は修理用に貰っているから、サイズの変更は任せてくれ」
「ふふっ、背も少し伸びたからね。お母さんはおっぱい大きかったし!」
威張って張った胸が、確かに膨らみを帯びている。
長寿族は人族よりも成長速度が遅いのかもしれない。エミリーは、幼女期を脱し、女性へと変わり始めているんだろう。
一年ぶりのサウナと絶品の馬肉料理を楽しみ、トーマスと交代で見張りをして、オレ達は一夜を過ごした。
◇◇◇
早朝に出発し、もう一泊野営を挟む。予定通り、三日目の昼前には目的地に到着した。
交易都市レトルコメルス。
一年ぶりの街並みは変わらない。けど、それを見るオレ達の心境は、以前とは全く違っていた。あの時の苦い思い出が、不意に蘇る。
「疲れもなく着いたな。旅の進度が全然違う」
「まずは予定通り、狩猟者協同組合でSランク試験を受けようか」
「私にお金を! カジノの軍資金を!」
交差した剣に、牙を剥く獅子。見慣れた狩猟者協同組合のシンボルマークを目指す。
一年前は素材の売却の為だけに来たけど、こんなに大きな建物だったっけ……重厚な木の扉をくぐると、大勢の狩猟者たちの熱気と喧騒が、オレ達を迎えた。
ゴルドホークの三倍はあろうかという受付カウンターの横には、巨大な掲示板が設置され、無数の依頼書がびっしりと貼られている。
「すごい数だな……これは悩む」
「あ、ロックリザード三体討伐ってのがあるよ?」
「いや、それは簡単すぎる。せっかくだ、もっと張り合いのある相手がいい」
「お? SSランクだって。そんなのあるんだ。ゴルドホークでは見なかったな」
なんと、Sランクの上にまだランクがあるらしい。
「その称号、是非とも欲しいな」
「内容はどんな感じ?」
「『フェンリル討伐』……。神話に出てくる魔物じゃないか」
「達成条件は?」
「フェンリルの牙、爪、毛皮。人数は……書いてないな。カウンターで聞くしかないか」
「三人で討伐するような魔物じゃないのかもしれないな……」
「いいじゃない! 私はどこでもついていくよ!」
「今のオレ達の脚なら、今から腹ごしらえして向かっても、討伐して夜には戻ってこれるだろうな」
「じゃあ、これにしよう」
受付カウンターには、初老の男たちが三人、山のような書類仕事に勤しんでいる。一番手前にいた、白髪をオールバックに流したダンディな男に声を掛け、依頼書を手渡した。
男は、鼻先にちょこんと乗った丸眼鏡を外し、オレ達の顔と依頼書を交互に見比べた。
「おい……あんたら、見たところ若いが、本気でフェンリルに挑む気か? こいつは、ただの魔物じゃないぞ」
「ヤバいとは、どういうことです?」
「東北の森に長いこと居座っているんだが、討伐に向かったパーティが、誰一人として帰って来ないんだ。もう十年以上、この依頼書はここに張り出されたままだよ」
「だからこそのSSランク、ということか。何かアドバイスはありますか?」
「俺みたいな受付が言えることなんてないさ……。元は狩猟者だったとはいえ、昔の話だ。それでも、フェンリルなんざ御免こうむるね」
受付の男はそう言って、自らの左手を見せた。薬指と小指の第二関節から先がなかった。怪我で引退したんだろう。
「では、SSランクへの昇級試験もお願いします」
「あぁ、試験なら全員Sランク以下で、五人以下のパーティでの討伐が条件だ。……まさか、三人で行くのか?」
「まあ、三人しかいないんでね」
「おいおい、まだAランクじゃないか……。自殺幇助をしているみたいで、気が乗らないな……」
男はため息をつきながらも、オレ達の狩猟者カードを受け取り、昇級試験の受付を済ませた。
軽く腹ごしらえを済ませ、依頼の場所へと向かう。少し距離はあるけど、今のオレ達の脚なら大したことはない。
「えぇ……とんでもない魔力がダダ漏れだね……」
「どこにいるかなんて、目を瞑っていても分かるね……」
「気を引き締めろ。こんな獣に手こずるようじゃ、この先が思いやられるぞ」
森の奥、開けた場所に、巨大な狼の魔物を発見した。鼻と口から、禍々しい魔力が黒い陽炎のように漏れ出ているのが、遠目にもはっきりと見えた。
あれが、フェンリルか。
「よし、強化術はいいか? 武器と防具にも練気は纏わせたな?」
「うん、大丈夫」
「中距離攻撃と治療は任せて!」
ヤマタノオロチの盾を構えるトーマスを先頭に、オレ達は戦闘態勢を整えた。
「行くぞ!」
SSランクの魔物との戦いが、今始まった。
目指すは一年ぶりのレトルコメルス。今のオレ達の脚なら、三日もかからないだろう。明後日の昼過ぎには着く予定だ。
朝からひたすら、練気を応用した高速移動で街道を駆け抜ける。木々を避けながら駆け回っていた山道と「」は違う。どこまでも真っ直ぐに続く石畳の道を、すれ違う商人やハンターたちに二度見されながら、風を切って突き進んだ。
道中、懐かしい馬の魔物、スレイプニルが草を食んでいるのが見えた。
「今晩は馬肉にするか!」
「いいね! 生レバーが食べたい!」
オレは走りながら指先をスレイプニルに向け、練気の弾丸を放つ。
空を駆ける練習で偶然編み出した術だ。眉間を正確に撃ち抜くと、スレイプニルは声もなく崩れ落ちた。下位の魔物相手には、実に使い勝手がいい。
一日中走り続け、空が茜色に染まり始めた頃、オレは一度空へ駆け上がり、野営に適した場所を探した。
「お、いい河原を発見したぞ」
トーマスに夕食の準備を、エミリーに就寝用のテントの設営を頼み、オレは一年ぶりのテントサウナに火を入れる。トレントを探す手間も惜しい。薪は里で調達してきたものを、エミリーの空間魔法から取り出した。
「サウナが温まったぞ! 水着に着替えて入ろう!」
「もうとっくに着替えてるよ!」
振り返ると、エミリーはテントの設営を水着姿でしていたらしい。確かに、汗をかく作業だ。合理的ではある。
「おい、エミリー……」
「ん、何?」
「お前……胸、大きくなったんじゃないか……?」
「あぁ、そうなんだよ。ロックリザードの革鎧が日に日にキツくなってきたから、コカトリスの鎧になって良かったよ。ヤンさんがやけにエロい目で採寸してたけどね」
なんてことだ……。この一年で、ここまで成長するとは。
そういえば、ヤンさんはエミリーのような華奢な女性が好みだと言っていた。
「やっと私の魅力に気付いたようだね! 二人共、鼻の下を伸ばして見惚れるがいいよ!」
「いや、そこまででは……」
「なんでだよ!」
グラマーな女性が好みのオレとトーマスが、エミリーに欲情することはない。だからこそ、この男女三人の旅が成立しているんだけれども。
「僕ら偶然同い年だからね。同じように成長していくんだ。エミリーがミオンさんを超える日が来るかもしれないよ。コカトリスの革は修理用に貰っているから、サイズの変更は任せてくれ」
「ふふっ、背も少し伸びたからね。お母さんはおっぱい大きかったし!」
威張って張った胸が、確かに膨らみを帯びている。
長寿族は人族よりも成長速度が遅いのかもしれない。エミリーは、幼女期を脱し、女性へと変わり始めているんだろう。
一年ぶりのサウナと絶品の馬肉料理を楽しみ、トーマスと交代で見張りをして、オレ達は一夜を過ごした。
◇◇◇
早朝に出発し、もう一泊野営を挟む。予定通り、三日目の昼前には目的地に到着した。
交易都市レトルコメルス。
一年ぶりの街並みは変わらない。けど、それを見るオレ達の心境は、以前とは全く違っていた。あの時の苦い思い出が、不意に蘇る。
「疲れもなく着いたな。旅の進度が全然違う」
「まずは予定通り、狩猟者協同組合でSランク試験を受けようか」
「私にお金を! カジノの軍資金を!」
交差した剣に、牙を剥く獅子。見慣れた狩猟者協同組合のシンボルマークを目指す。
一年前は素材の売却の為だけに来たけど、こんなに大きな建物だったっけ……重厚な木の扉をくぐると、大勢の狩猟者たちの熱気と喧騒が、オレ達を迎えた。
ゴルドホークの三倍はあろうかという受付カウンターの横には、巨大な掲示板が設置され、無数の依頼書がびっしりと貼られている。
「すごい数だな……これは悩む」
「あ、ロックリザード三体討伐ってのがあるよ?」
「いや、それは簡単すぎる。せっかくだ、もっと張り合いのある相手がいい」
「お? SSランクだって。そんなのあるんだ。ゴルドホークでは見なかったな」
なんと、Sランクの上にまだランクがあるらしい。
「その称号、是非とも欲しいな」
「内容はどんな感じ?」
「『フェンリル討伐』……。神話に出てくる魔物じゃないか」
「達成条件は?」
「フェンリルの牙、爪、毛皮。人数は……書いてないな。カウンターで聞くしかないか」
「三人で討伐するような魔物じゃないのかもしれないな……」
「いいじゃない! 私はどこでもついていくよ!」
「今のオレ達の脚なら、今から腹ごしらえして向かっても、討伐して夜には戻ってこれるだろうな」
「じゃあ、これにしよう」
受付カウンターには、初老の男たちが三人、山のような書類仕事に勤しんでいる。一番手前にいた、白髪をオールバックに流したダンディな男に声を掛け、依頼書を手渡した。
男は、鼻先にちょこんと乗った丸眼鏡を外し、オレ達の顔と依頼書を交互に見比べた。
「おい……あんたら、見たところ若いが、本気でフェンリルに挑む気か? こいつは、ただの魔物じゃないぞ」
「ヤバいとは、どういうことです?」
「東北の森に長いこと居座っているんだが、討伐に向かったパーティが、誰一人として帰って来ないんだ。もう十年以上、この依頼書はここに張り出されたままだよ」
「だからこそのSSランク、ということか。何かアドバイスはありますか?」
「俺みたいな受付が言えることなんてないさ……。元は狩猟者だったとはいえ、昔の話だ。それでも、フェンリルなんざ御免こうむるね」
受付の男はそう言って、自らの左手を見せた。薬指と小指の第二関節から先がなかった。怪我で引退したんだろう。
「では、SSランクへの昇級試験もお願いします」
「あぁ、試験なら全員Sランク以下で、五人以下のパーティでの討伐が条件だ。……まさか、三人で行くのか?」
「まあ、三人しかいないんでね」
「おいおい、まだAランクじゃないか……。自殺幇助をしているみたいで、気が乗らないな……」
男はため息をつきながらも、オレ達の狩猟者カードを受け取り、昇級試験の受付を済ませた。
軽く腹ごしらえを済ませ、依頼の場所へと向かう。少し距離はあるけど、今のオレ達の脚なら大したことはない。
「えぇ……とんでもない魔力がダダ漏れだね……」
「どこにいるかなんて、目を瞑っていても分かるね……」
「気を引き締めろ。こんな獣に手こずるようじゃ、この先が思いやられるぞ」
森の奥、開けた場所に、巨大な狼の魔物を発見した。鼻と口から、禍々しい魔力が黒い陽炎のように漏れ出ているのが、遠目にもはっきりと見えた。
あれが、フェンリルか。
「よし、強化術はいいか? 武器と防具にも練気は纏わせたな?」
「うん、大丈夫」
「中距離攻撃と治療は任せて!」
ヤマタノオロチの盾を構えるトーマスを先頭に、オレ達は戦闘態勢を整えた。
「行くぞ!」
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番外編①~2020.03.11 終了
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