- Mix blood -

久悟

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第三章 大陸冒険編

戦闘力倍増勉強会

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 昨日の復習だ。
 風のエネルギーを取り込み、錬気を混ぜて浮力を得る。それを推進力にして空を飛んでいる。

「これは快適だな。気力の消費もほとんどない」
「うん、走ってもそこまで疲れないけど、これはもう全く疲れないな。さすがは自然のエネルギー、燃費がいい」
「いや、これは錬気術のおかげだよ。仙族が普通に浮遊術を使う時は、ここまで速度も出ないし、もっと気力を消費するんだ」

 ジュリアは、すでに錬気術を自分のものにしていた。剣にも淀みなく錬気を纏わせている。自然エネルギーと気力を混ぜるという行為が、錬気を武具や魔力に練り込む行為とよく似ているからだろう。さすがは仙族が誇る天才だ。

 オレ達も、昨夜の焚き火や湖、そして今浴びている日光や月明かりの自然エネルギーを、常に体内に取り込みながら過ごした。それを様々な術に組み込んでみること。それが今日の課題だ。
 
「あ、ユニコーンがいるぞ」
「よし、アタシのニューツヴァイハンダーの試し斬りだ」

 ジュリアが構えた両手大剣に、濃密な錬気が渦を巻くように纏わりつく。
 あれほどの巨剣を、まるで小枝でも振り回すかのように軽々と振りかぶった。

 そのまま、ユニコーンを一刀両断にした。

「おいおい、怖いほど斬れるな……。すごいぞ、錬気術。いや、それだけじゃない。トーマスの整備の腕が、この剣のポテンシャルを最大限に引き出しているんだ」
「今までは、どうやってあの剣を扱っていたんだ?」
「これも自然エネルギーだ。風のエネルギーで剣に浮力を持たせて軽くし、斬りつける瞬間だけ重さを戻す。アタシの剣は重いからな。お前らの刀には、必要のない技術だよ」

 ジュリアの話では、火、水、風といった元素エネルギーだけでなく、自然界に満ちる治癒の力、地を動かす力、岩や金属の硬さ、音や光の速さ、引力の重さなど、森羅万象すべてがエネルギーであり、仙術の源になるという。

「なるほどな。普段の呼吸で、もっと色々なエネルギーを感じ取らないと勿体ないな」

 ジュリアが、今度は風属性の仙術を実演してくれた。

『仙術 風魔の罠ジントラップ

 前方を飛んでいたペガサスが、突如として現れた無数の風の刃に飲み込まれ、血飛沫と共に跡形もなく消え去った。

「魔晶石の増幅効果も凄いけど……気力を錬気に置き換えただけで、威力が別物になったぞ……。いい事を教えてもらった」

「すごいな……。よし、オレ達も風遁に取り込んでみよう。まずは、風刃だ」

 錬気に、風属性の魔力、そして風の自然エネルギーを練り込む。三つの力を一つにして、魔力に乗せて解き放つ。

『風遁 風刃ふうじん!!!』

 三人で放った風遁の基礎術が、とんでもない風切り音を上げてユニコーンを切り刻んだ。その威力は、もはや風刃などという生易しいものではなかった。

「ちょっと待ってくれよ……。ただの風刃で、この威力なのか……」
「嵐塵なんか使ったら、一体どうなるんだ……」

 当たらずに流れた風刃が、別のユニコーンの脚を切断していた。

「そうだ。自然の治癒エネルギーを、治療術に組み込んでみるよ。あのユニコーンの脚、くっつくかな?」

 切断された脚を持ったエミリーが、ユニコーンに近づき治療術を掛けた。

『治療術 四肢再生』

 眩い光がユニコーンの脚の切断面を包み込むと、切れたはずの脚が動き立ち上がった。
 ユニコーンは森の奥へと走り去って行った。

「……くっついた」
「おいエミリー! なんだよ、その回復術は!」
「回復術の上位で、治療術だよ! これ、強化術にも組み込んだら、とんでもないことになるね。……ねぇジュリア、相手の足止めをするような術はないの?」
「あるよ。大地の自然エネルギーを気力に混ぜて、地面から相手に干渉し、動きを止めるんだ」

『仙術 途絶フリーズ

「うわっ! 動けない! 遁術の影縛りより、遥かに強力だ。飛んでいる相手には無理だよね?」
「いや、空気を媒介にして干渉すればいい。ただし、地上より効果は格段に落ちるがな」
「こんなものを食らったら、ひとたまりもないな……」
「いや、相殺すればいい。静のエネルギーには、動のエネルギーをぶつけるんだ」
「なるほど……。すごいな、自然エネルギーは」
 
 四人の戦闘力倍増勉強会は、その後も続いた。

 結果、遁術、治療術、強化術、守護術、その全てにおいて、自然エネルギーを組み込むことで、オレ達の術は全くの別物へと進化した。
 強化術の進化は、剣技をも恐ろしいレベルへと引き上げた。自身のスピードアップからの斬撃が、凄まじい斬れ味を生み出す。
 
 ジュリアもまた、彼女の仙術に錬気術を組み込むことで、オレ達と同じような効果を得ていた。

「一日で、とんでもなくパワーアップした気分だ」
「アタシの44年間は、一体何だったんだ……。錬気術、もっと早く教えてほしかったよ」
「本当だな。仙族と龍族が本気で手を組んだら、凄いことになる」
「……ということは、あの三人も、同じようにパワーアップしているってことだよね。歯が立たないはずだ」

 あ、そうか……。

「本当だな。それプラス、魔族の戦闘法まで持っているんだ。強いはずだ……」

 けど、オレ達もかなり強くなった。十分に対抗できるはずだ。
 
「ジュリア、仙術をオレ達に教えても良かったのか? 龍王は、仙族や人族には適した戦闘法だから、教えてやっても良いと言っていたけど」
「あぁ、龍族は友好関係にあるからな。何の問題もないだろ」
「なら、それぞれの国に帰ったら、この戦い方を広めたいな。国力がさらに上がる。……僕達の師匠がこれを取り入れたら、一体どうなるんだろうね……想像するだけで怖いよ」

「ジュリアも、龍族の移動法をマスターした方がいい。空を駆けることができれば、空中戦での急な方向転換が可能になる。それに、錬気術の精度も跳ね上がるぞ」
「なるほどな。移動中に練習するから、教えてくれよ!」

 
 夕方前にはレトルコメルスに着いた。
 術を試しながらゆっくりと移動したつもりだったけど、行きよりも早く着いてしまった。新しい戦闘法は、こうも自身を強くするらしい。

「ギルドに依頼品を持っていくか」

 ジュリアは久しぶりの狩猟者協同組合ハンターギルドに、懐かしそうにキョロキョロしている。

「おう、こりゃまた、随分と沢山狩ってきたな。少し待っててくれ」

 かなりの数の討伐報告をした。勘定が終わるまで、オレ達は依頼書の掲示板を見て過ごす。

「ペガサスとユニコーンが合わせて15体、それにケルピーか。全部で550万ブールだな」

 それでも、フェンリル一体分ほどだ。SSランクの魔物の報酬は破格だ。あの強さを考えれば、当然ではあるけど。
 
「行きの分もあるから、オレ達三人は150万、ジュリアに100万ブールでいいか?」
「いいのか?」
「あぁ、問題ない」
「ジュリア、久しぶりにカジノに行こう!」
「あぁ、もちろんだ!」

「では、オレ達二人は振込で、そちらの二人は現金でお願いします」
「あいよっ」
 
「あ、そうだジュリア、知ってた? SSランクのカードは無利息で……ムゴッ!」

 オレは慌ててエミリーの口を塞いだ。

「いや、何でもないんだ、ジュリア」
 
(おい、絶対にジュリアに言うなよ。もし破ったら、お前のギャンブルを未来永劫禁止にするからな)
(ムグッ……ワガッダ……)

 ジュリアは不思議そうな顔をしていたが、特に聞いてはこなかった。債務者が二人に増えるなんて、考えただけで身震いがする。
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