- Mix blood -

久悟

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第三章 大陸冒険編

プライベートな事

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 久しぶりに昼寝をしたが、寝すぎてしまったらしく、身体が妙にだるい。夕食にはまだ少し早いか。軽くストレッチをして、部屋を出た。
 
 トーマスはいるだろうか。あぁ、魔力を感じるな。 
 トーマスの部屋の扉をノックする。

「ただいま。トーマスも、ランチに出かけていたのか?」
「あぁ、おかえり。少し前に帰ってきたところだよ」
「どうだった?」
「うん。僕はずっと、ジェニーちゃんのこと、少し抜けている子だと思っていたんだ。でも、あの子のように常にマイペースで、物事を前向きに捉えられる子と一緒にいると、こっちの心まで癒やされるんだよね……」
「そうか、なら良かった。あの子はいい子だからな」
「エマちゃんとは、何かあったのかい?」
「いや、すごく楽しかった。……でもな」

 少し考えたが、これは一人で抱え込むべき問題じゃない。オレはストレートにトーマスへ伝えた。

「実はな、エマの姓が……ベルフォールらしいんだ」
「ベルフォール?」

 トーマスは、持っていた本を床に落とした。

「ベルフォール……!? えっ!?」
「あぁ、そうだ。王家の姓だ」
「平民が名乗れるような姓じゃない。……ということは」
「うん、そうなんだよ。両親のことは何も覚えていないらしい。王都にいた両親が、何らかの理由でこの街に移住し、何かがあったんだろう。彼女は、物心ついた時から娼館で育ったって言ってた」
「王族の子が……。でも、だとしたら、この辺りでその姓を名乗るのは……」
「あぁ、トーマスも同意見か。オレもそう思って、人前では名乗らない方がいいと伝えた。でもなぁ……」
「どう伝えるべきか、難しい問題だね……」

 トーマスもアゴに手を置いて考える。
 
「……いや、エマは頭のいい子だ。事実をありのままに伝えても、きっと受け入れて、相応の対応をすると思うんだ」
「うん、確かにあの子は賢い。そうか……伝えても良いのかもしれない。その方が、彼女の今後にとっても良い結果になるかもしれない。別に、誰かに追われているわけでもないんだし。でも、ねぇ……」
「トーマスも悩むか……。相談して良かったよ。少し、考えてみる」
「ユーゴは、今晩はどうするの?」
「俺オレは晩飯を食ってから、エマの店に行こうかと思ってる」
「僕も、一人でも行こうと思っていたんだ。一緒に行くかい?」
「あぁ。そう思って、エマには『トーマスと一緒に行くかもしれない』って言っておいた」
「決まりだね。夜は、まず『冒険野郎』だ」
「もちろん。あの店は外せない」

 いい時間だ、冒険野郎に向かおう。と言っても、ホテルの道向かいだが。

 もう、この店の扉を開けるだけで、心が落ち着く。奥のテーブルに、エミリーとジュリアの魔力を感じた。

 二人の席に同席し、ビールを注文する。
 
「お前達もか。考えることは一緒だな」
「あ、二人共! 楽しんでる?」
「あぁ。この店は、何度来ても外せないからな」

 運ばれてきたビールをグイッと飲む。昼寝でだらけた身体に、冷たい刺激が染み渡った。
 
「おいユーゴ、お前、今日競馬場の辺りにいただろ?」
「あぁ、いたよ。あの辺のパスタ屋に行ったんだ。二人の魔力も近くに感じたから、気づいてはいた」
「それはいい。で、なんで魔力を抑えた?」
「え……? そんな事していないけど……?」
「おいおい、魔力を抑えてアタシ達を避けていただろ。嘘はいけないな」
「いや……それは、プライベートな話なので……」

 ジュリアが、値踏みするように鋭い目でオレを刺す。たまらず、目を逸らした。

「まぁいい。アタシが信用できない、ということだな。分かったよ」
「いや、違う! 言うよ、女の子とデートしてたんだ……」
「いや、それは分かっていた。なんで嘘をついたんだ?」
「……何か……言われそうだったから」
「何か言われるような事でもしていたのか? そうじゃないだろ? 別に、責めているわけじゃない。男だ、そういうこともあるだろう。だが、嘘はつくな。アタシ達は仲間だろ」
「……はい。ごめんなさい」

 オレが謝った途端、二人は堪えきれないといった様子で笑い出した。

「ジュリアの言った通りだ!」
「キャハハッ! ユーゴの顔、見た!? ごめんよ、からかっただけだって!」

 は……?

「ちょっとジュリア、ユーゴのテンションが下がってるじゃない。ユーゴは意外と泣き虫なんだから、あんまりイジめちゃダメだよ?」
「はぁ……おかしい……。ごめんごめん、あからさまに魔力を内に留めただろ? その先を見たら、いい女がいたんだ。これを問い詰めたら、お前が正直に言うか言わないか、エミリーと賭けてたんだよ」
「私の負けだ……明日のランチは奢るよ……。でも、ジュリアの尋問! あれは誰だって白状するって! 卑怯だよ!」
「それはあるかもしれないな! 少し、楽しみすぎた」

 コノヤロウ……。 
 だが、ここで言い返しても、さらにからかわれるだけだ。オレは、一瞬で練ったプランを実行した。

「……嘘は、もうつかないようにします。本当に、ごめんなさい……」
「いや、ユーゴ……? 分かればいいんだよ……?」
「いや、オレみたいな奴は、嘘をついて、いつか皆に迷惑をかけるのがオチだ。本当にすまなかった……」
「ちょっと待ってくれ、ユーゴ! アタシの悪ノリだ、頼むから、そんなにしょげるなよ……」
「いや、オレが完全に悪いんだ……二人の叱責は、甘んじて受けるよ。好きなだけ叱ってくれ……」
「いや……もう、頼むから、普通に飲もうよ……? アタシが悪かったから……」

 フフッ、勝った。

 オレは徐々に機嫌を戻し、終始奴らに気を使わせた。
 オレの勝利だ。

「で、二人のギャンブル運はどうなんだ?」
「んー、エミリーはボロ負けだが、アタシはチョイ勝ちだな」
「まあ、私にはまだ有り余るほどのお金があるからね! スレイプニルレースでは、少しだけ取り戻したし!」
「今日も、カジノに行くのか?」
「当たり前だろ! もう、ディーラーのジェームスの癖は見切った。今日も勝ちに行くよ」

 誰だよ、ジェームス。

「そういえば、昨日のバーで狩猟者ハンターたちに魔人達の話を聞いたんだ。何年かはこの街に滞在していたみたいだな」
「うん、カジノでも聞いてみたけど、ここ一年以上は見ていないって言ってた」
「そうか。あの赤髪と金髪は目立つからな。父さんがゴルドホークを出たのが一年と少し前だ。だとすれば、既にここを出て、父さんと出会っていると見るのが自然だな」
「魔都シルヴァニアの方に拠点があるのかもしれないな。だとすれば、そちらに近い王都の方が、新しい情報があるかもしれない」

 毎晩のこの情報交換は欠かせない。オレ達の目的は、あくまでも奴ら三人を追うことだ。

「よし、ジュリア! 今日もジェームスとの死闘を繰り広げるよ!」
「あぁ、ヤバくなったら、最悪色仕掛けだ! 行くぞ!」

 似たものコンビだな。エミリーはジュリアに育てられたようなものだ。こうなるのも、当然か。

「あいつら、当たり前のように、ここの代金を払わずに行ったな……」
「まあ、そこまで高くもないしな。僕達も、そろそろ行こうか」

 オレ達は代金を支払い、店を後にした。
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