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第三章 大陸冒険編
エマのペンダント
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店を出て、エマの店を目指した。
カランコロン……
「あれ、満席だね」
「相変わらず流行っているな。……ん? 女の子が一人増えているな」
「あ、ユーゴ君にトーマス君。ごめんね、さっき席が埋まっちゃったんだ……」
(後で、ホテルに行ってもいい……?)
(あぁ、分かった。これが部屋番号だ)
紙切れに数字を書いてエマに手渡す。
「仕方ないな。違う店に行くか」
「うん、残念だけど仕方ない」
違う店とは言っても、あの手の呼び込みは二度とごめんだ。
「適当に入るか。トーマス、選んでくれるか?」
「責任重大だね……よし、ここにしよう」
トーマスが指差したのは、年季の入った木の扉が印象的な、雰囲気の良いバーだった。
「いらっしゃい。こちらのカウンターへどうぞ」
白シャツに黒のベスト、黒い蝶ネクタイで決めた渋いバーテンダーが、オレ達を出迎えた。年齢は50歳前後だろうか。
客は数人。入口近くのカウンター席に案内された。
「へぇ、雰囲気が出てるな。こういう店もいいもんだ」
横から、ガタンと大きな音がした。
「お前ら! 何しに来やがった!?」
この声は……。
テンガロンハットがトレードマークのSランク狩猟者、サンディ・ジョーンズだ。
「あぁ、サンディか。まだこの街にいたんだな」
「白々しいぞ! 誰に聞いてきた!」
「いや……本当に、たまたま入っただけなんだ。別にお前に興味なんてない」
「なんだと!? ……それも、なんだか寂しいな……」
サンディはゆっくりと座り直すと、オレ達を横目に見ながら、手元のロックグラスを傾けた。
「何を頼んだらいいのか分からないね。こういう店は初めてだ」
「なぁサンディ、お前はこの店をどういう風に使ってるんだ?」
「あぁ? ……俺は、いい女を連れてきた時に、『こいつをイメージしたカクテルを作ってくれ』って注文することはある。マスターが上手いこと作ってくれるから、いい雰囲気になるんだ」
「ほぉ、粋だな。じゃあマスター、オレ達をイメージしたカクテルを作ってもらえますか?」
「かしこまりました」
マスターは、二つのグラスをオレ達の前に差し出した。
「『カミカゼ』でございます。このカクテル言葉は『貴方を救う』。見たところお二人は狩猟者ですね。互いに背中を預け合う、その信頼関係をイメージしてお作りしました」
カクテルに言葉があるのか。里では、花にも言葉を持たせていたな。
グラスに口をつける。
「うん、美味いな」
「本当だ。僕達をイメージして作ってくれたというのが、またいいね」
オレは、警戒した様子のサンディに、続けて声を掛けた。
「で、サンディ。今日は一人か?」
「……普通に話しかけてくるんだな。あぁ、今日は一人だ。昨日、あれだけ両手足を撃ち抜かれたのに、目が覚めたら治っていた。一体、何をしたんだ」
「普通に、回復魔法で治しただけだよ」
「……お前達、SSランクだな?」
「さぁ、どうかな。ランクだけで、相手の強さが測れるわけじゃないだろ? サンディも気をつけた方がいい。あまり、人に絡まないことだ」
「……あぁ、そうだな。お前達で懲りたよ。明日には、この街を出るつもりだ。公衆の面前で小便を漏らしたんだ、もうここにはいられない」
「そうか。またどこかで会うかもしれないな」
「いや、勘弁してくれ……。お詫びだ、ここは俺が奢る。ゆっくり楽しんでいってくれ」
そう言って、サンディはカウンターに金貨を置いた。
「さすがはSランク、太っ腹だな。ありがとう」
「うるせぇよ、SSが。……じゃあな」
サンディはポケットに両手を突っ込み、少しだけ寂しそうな背中を見せて店を出ていった。
「話せば、案外いい奴なんだよな、狩猟者ってのは。サンディも腕はあるんだろう。強いよ、あいつは」
「あぁ、そうだね。じゃなければ、Sランクにはなれない」
◇◇◇
ホテルに帰りシャワーを浴びる。ルームサービスを頼み、ワインを飲んでいると、エマがやって来た。
「今日はごめんね。あれからも、ずーっと満席だったんだ」
「お疲れ様。夢の実現に、一歩ずつ近づいているな。いい事だ」
「……ねぇ、ちょっとだけ、ギュッてしてくれない?」
「ん? あぁ」
オレは、甘えるように寄りかかってきたエマを、優しく抱き寄せた。
「はぁ……疲れが取れる……幸せ」
可愛いすぎる……。
「ワイン、飲むか?」
「うん、頂こうかな。忙しすぎて今日はあまり飲んでないから。その前に、シャワーを浴びてくるね」
「あぁ、分かった。あまり無理はするなよ」
エマがシャワーを浴びている間に、ルームサービスでワインを追加する。
やがて、バスローブに身を包んだエマが、隣に腰掛けた。
「んじゃ、お疲れ様。乾杯」
「うん、乾杯。……あぁ、美味しい」
オレは考えた末、エマに全てを伝えることにした。
「なぁエマ、昨日、オレに姓を教えてくれただろ?」
「うん。『あまり言わない方がいい』って、言ってたね」
「エマは知っているのか分からないが、ベルフォールというのは、王都の王族の姓なんだ」
「え……? たまたま、じゃないの……?」
「たまたま、ということはない。平民が名乗れるような姓じゃないんだ。エマは、王族の血縁者なんだよ」
「……私の両親が、王族だったってこと……?」
「あぁ、そうなる。何か、覚えていないか?」
エマは、ワイングラスに口をつけるのも忘れ、考え込んでいる。
「……私の一番古い記憶は……あの娼館から始まってるんだ。何も、覚えていない……」
「そうか。まあ、エマが何者でも良いんだ。ただ、あまり王族の姓を名乗らない方がいいと言ったのは、平民が軽々しく口にしていい姓じゃないからなんだ」
「そっか。分かった。姓を名乗ることも、そんなにないしね」
「オレ達はこれから王都に行く。そのペンダントが何かを知る鍵になるかもしれない。少し見せてもらえるか?」
エマのペンダントを手に取り、観察する。紋章のようにも見えるな。確かに、美しいデザインだ。
「そのペンダント、もう一つあるんだよ。それ、持っていく? お揃いで着けてくれたら嬉しいな」
「そうなのか? エマの両親のもの、かな。……じゃあ、借りていくよ。お揃いだな」
「うん。家に帰ったら、私も着けるね」
ペンダントを着けてみる。確かにお洒落だ。
「そういえば、聞いたことがなかったけど、エマは何歳なんだ?」
「私は、19歳だよ」
「そうか、オレと同い年か。その若さで自分の店を大成功させるなんて、大したもんだな」
「へぇ、同い年なんだ! いや……その若さでSSランクっていう方が凄すぎるよ……」
オレは、エマからペンダントを受け取った。彼女は、自分の出自にそこまで興味はなさそうだが、王都でベルフォール王に面会できたら、聞いてみることにしよう。
この街に来てから、毎晩エマと寝ている。
今日も、ほろ酔いのまま、二人でベッドへと向かった。
カランコロン……
「あれ、満席だね」
「相変わらず流行っているな。……ん? 女の子が一人増えているな」
「あ、ユーゴ君にトーマス君。ごめんね、さっき席が埋まっちゃったんだ……」
(後で、ホテルに行ってもいい……?)
(あぁ、分かった。これが部屋番号だ)
紙切れに数字を書いてエマに手渡す。
「仕方ないな。違う店に行くか」
「うん、残念だけど仕方ない」
違う店とは言っても、あの手の呼び込みは二度とごめんだ。
「適当に入るか。トーマス、選んでくれるか?」
「責任重大だね……よし、ここにしよう」
トーマスが指差したのは、年季の入った木の扉が印象的な、雰囲気の良いバーだった。
「いらっしゃい。こちらのカウンターへどうぞ」
白シャツに黒のベスト、黒い蝶ネクタイで決めた渋いバーテンダーが、オレ達を出迎えた。年齢は50歳前後だろうか。
客は数人。入口近くのカウンター席に案内された。
「へぇ、雰囲気が出てるな。こういう店もいいもんだ」
横から、ガタンと大きな音がした。
「お前ら! 何しに来やがった!?」
この声は……。
テンガロンハットがトレードマークのSランク狩猟者、サンディ・ジョーンズだ。
「あぁ、サンディか。まだこの街にいたんだな」
「白々しいぞ! 誰に聞いてきた!」
「いや……本当に、たまたま入っただけなんだ。別にお前に興味なんてない」
「なんだと!? ……それも、なんだか寂しいな……」
サンディはゆっくりと座り直すと、オレ達を横目に見ながら、手元のロックグラスを傾けた。
「何を頼んだらいいのか分からないね。こういう店は初めてだ」
「なぁサンディ、お前はこの店をどういう風に使ってるんだ?」
「あぁ? ……俺は、いい女を連れてきた時に、『こいつをイメージしたカクテルを作ってくれ』って注文することはある。マスターが上手いこと作ってくれるから、いい雰囲気になるんだ」
「ほぉ、粋だな。じゃあマスター、オレ達をイメージしたカクテルを作ってもらえますか?」
「かしこまりました」
マスターは、二つのグラスをオレ達の前に差し出した。
「『カミカゼ』でございます。このカクテル言葉は『貴方を救う』。見たところお二人は狩猟者ですね。互いに背中を預け合う、その信頼関係をイメージしてお作りしました」
カクテルに言葉があるのか。里では、花にも言葉を持たせていたな。
グラスに口をつける。
「うん、美味いな」
「本当だ。僕達をイメージして作ってくれたというのが、またいいね」
オレは、警戒した様子のサンディに、続けて声を掛けた。
「で、サンディ。今日は一人か?」
「……普通に話しかけてくるんだな。あぁ、今日は一人だ。昨日、あれだけ両手足を撃ち抜かれたのに、目が覚めたら治っていた。一体、何をしたんだ」
「普通に、回復魔法で治しただけだよ」
「……お前達、SSランクだな?」
「さぁ、どうかな。ランクだけで、相手の強さが測れるわけじゃないだろ? サンディも気をつけた方がいい。あまり、人に絡まないことだ」
「……あぁ、そうだな。お前達で懲りたよ。明日には、この街を出るつもりだ。公衆の面前で小便を漏らしたんだ、もうここにはいられない」
「そうか。またどこかで会うかもしれないな」
「いや、勘弁してくれ……。お詫びだ、ここは俺が奢る。ゆっくり楽しんでいってくれ」
そう言って、サンディはカウンターに金貨を置いた。
「さすがはSランク、太っ腹だな。ありがとう」
「うるせぇよ、SSが。……じゃあな」
サンディはポケットに両手を突っ込み、少しだけ寂しそうな背中を見せて店を出ていった。
「話せば、案外いい奴なんだよな、狩猟者ってのは。サンディも腕はあるんだろう。強いよ、あいつは」
「あぁ、そうだね。じゃなければ、Sランクにはなれない」
◇◇◇
ホテルに帰りシャワーを浴びる。ルームサービスを頼み、ワインを飲んでいると、エマがやって来た。
「今日はごめんね。あれからも、ずーっと満席だったんだ」
「お疲れ様。夢の実現に、一歩ずつ近づいているな。いい事だ」
「……ねぇ、ちょっとだけ、ギュッてしてくれない?」
「ん? あぁ」
オレは、甘えるように寄りかかってきたエマを、優しく抱き寄せた。
「はぁ……疲れが取れる……幸せ」
可愛いすぎる……。
「ワイン、飲むか?」
「うん、頂こうかな。忙しすぎて今日はあまり飲んでないから。その前に、シャワーを浴びてくるね」
「あぁ、分かった。あまり無理はするなよ」
エマがシャワーを浴びている間に、ルームサービスでワインを追加する。
やがて、バスローブに身を包んだエマが、隣に腰掛けた。
「んじゃ、お疲れ様。乾杯」
「うん、乾杯。……あぁ、美味しい」
オレは考えた末、エマに全てを伝えることにした。
「なぁエマ、昨日、オレに姓を教えてくれただろ?」
「うん。『あまり言わない方がいい』って、言ってたね」
「エマは知っているのか分からないが、ベルフォールというのは、王都の王族の姓なんだ」
「え……? たまたま、じゃないの……?」
「たまたま、ということはない。平民が名乗れるような姓じゃないんだ。エマは、王族の血縁者なんだよ」
「……私の両親が、王族だったってこと……?」
「あぁ、そうなる。何か、覚えていないか?」
エマは、ワイングラスに口をつけるのも忘れ、考え込んでいる。
「……私の一番古い記憶は……あの娼館から始まってるんだ。何も、覚えていない……」
「そうか。まあ、エマが何者でも良いんだ。ただ、あまり王族の姓を名乗らない方がいいと言ったのは、平民が軽々しく口にしていい姓じゃないからなんだ」
「そっか。分かった。姓を名乗ることも、そんなにないしね」
「オレ達はこれから王都に行く。そのペンダントが何かを知る鍵になるかもしれない。少し見せてもらえるか?」
エマのペンダントを手に取り、観察する。紋章のようにも見えるな。確かに、美しいデザインだ。
「そのペンダント、もう一つあるんだよ。それ、持っていく? お揃いで着けてくれたら嬉しいな」
「そうなのか? エマの両親のもの、かな。……じゃあ、借りていくよ。お揃いだな」
「うん。家に帰ったら、私も着けるね」
ペンダントを着けてみる。確かにお洒落だ。
「そういえば、聞いたことがなかったけど、エマは何歳なんだ?」
「私は、19歳だよ」
「そうか、オレと同い年か。その若さで自分の店を大成功させるなんて、大したもんだな」
「へぇ、同い年なんだ! いや……その若さでSSランクっていう方が凄すぎるよ……」
オレは、エマからペンダントを受け取った。彼女は、自分の出自にそこまで興味はなさそうだが、王都でベルフォール王に面会できたら、聞いてみることにしよう。
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番外編①~2020.03.11 終了
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