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第三章 大陸冒険編
夢
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部屋にいると、メイドのリナさんが食事の用意ができたと呼びに来てくれた。
広い部屋の円卓に、三人。
オレとトーマスは申し訳なさが先に立ち、背中を丸めて座っている。
「いきなり押しかけて、食事まで……すみません」
「いえいえ、大歓迎でございますよ!」
リナさんは、にっこりと微笑んだ。
至れり尽くせりのもてなしに慣れていない分、どうにも気を使ってしまう。
「そういえばジュリア、エミリーがなんだって?」
「あぁ、そうだそうだ。お前らの勃起のせいで、言いそびれたよ!」
「でかい声で言うなよ!」
「エミリーも、明日からここの世話になるそうだ。もう少し滞在したらどうかと言われたみたいだが、あそこの家は他の親族も住んでいるからな。昔から交流がない分、気を使うんだろう」
「なるほど。まあ、お母さんとは、いつでも会えるようになったわけだしな」
ここも、難解な名前のディナーコースのようだ。
けど、マナーはもう理解した。
部屋に戻り、寝床につく。明日は午後まで特に用事はない。ゆっくりしよう。
○○○
(ユーゴ、お話するのは久しぶりね)
母さんの声だ。
この感覚は、夢だ。
何年かに一度見る、不思議な夢。
母さんの顔は、いつも靄がかかったようによく見えない。オレの記憶が曖昧なせいだろう。
いつも、他愛もない世間話をして、目が覚める。
前回は何の話をしただろうか。初めて一人で魔物を狩ったとか、そんな話だった気がする。
(あぁ、母さん、久しぶり。元気か? ……いや、元気なわけはないか)
(元気といえば、元気よ? 素敵な仲間ができて、楽しそうね。母さん安心したわ)
(あぁ、いい仲間に恵まれたよ。オレ、結構強くなったんだぞ)
(そうね。お父さんを越える日も、近いかもしれないわね)
(あぁ……。父さん、すっかり別人みたいに変わってしまったんだ。……でも、元の父さんに戻す手立てはできたんだ)
(そう。……お父さんのこと、助けてあげてね。頼んだわよ)
(今日は、ジュリアに龍族の剣技を教えたんだ。すごいよ、あいつは。まるで、兵器を作ってしまったような気分だ)
(人に教えるということは、自分も成長できるということ。良いことよ)
(成長といえば……今日、おかしなことがあったんだ。周りの動きが、急に遅くなったんだ。そう感じた、とかじゃない。魔法ですら、スローで見えたんだ。龍眼が進化したのかな)
(いいえ。龍眼というのは、特異能力でしょう? ゆっくり見えたのは、あなたの眼そのものの力よ。まさかとは思うけど『神眼』かもね……。完全に開眼すれば、相手の動きが止まって見えるようになる。……もしかしたら、開眼しかけているのかもしれないわね)
(そんな馬鹿な。さすがは、夢だな)
(あなたは本当に強くなった。……またね、ユーゴ)
(あぁ。皆が止まって見えたら、また報告するよ)
〇〇〇
――目が覚めた。頭が、妙にスッキリしている。
相変わらず、リアルな夢だった。
しかし、素晴らしいベッドだ。朝の目覚めが、まるで違う。
朝食を頂き、食後の紅茶を嗜む。素晴らしい朝だ。今日は、午後まで何の予定もない。
部屋の窓から眺める王都の街並みは、整然としていて美しい。
書庫にお邪魔し、紅茶を飲みながら読書をしていると、すぐに昼になった。
昼食を頂く。
メイドのリナさんは、明るくて、笑顔が素敵な女性だ。リナさんも、ここでは混浴なのだろうか。それとも、自宅に帰るのだろうか。
……いかん、いかん。そんな邪な目で見ていると、また、あの時のように勃起を人前に晒すことになってしまう。オレは、慌てて首を横に振った。
王に会う前に、礼服に着替えよう。
直しは完璧で、身体にピッタリと合っている。
城門の前で、二人を待つ。
すぐに、トーマスがやって来た。
「やぁ。まだ残暑が厳しいね。上着は、後にしよう」
「あぁ。トーマスも直しは完璧だな」
「……あれ、ユーゴ? 右眼が……」
そこに、ジュリアもやって来た。
「待たせたな!」
「おぉ、ジュリア。礼服に化粧が映えるな」
「うん、化粧をすると、一段と綺麗だ。本当に、ジュリアは何を着ても似合うな」
「あぁ、リナにしてもらったんだ。最近、そう言われると嬉しくなってきたよ。化粧も勉強してみるかな。二人も格好いいじゃないか」
「ねぇジュリア、ユーゴの右眼を見てみてよ」
「ん? ……あぁ、紫だな。いや、青紫と言った方がいいか」
「オレの眼が? 青紫?」
「ほら、見てみな」
ジュリアから鏡を受け取り、覗き込む。
「本当だ。青寄りの紫色だ。……なんでいきなり……」
「いきなり眼の色が変わることなんてあるの……?」
「トーマス、お前……。オレの前で眼の色が変わっただろう」
「あ、そうか……」
「あ、もしかして……」
オレは、昨夜見た夢の話を、二人にしてみた。
「神眼? ……それ、本当に夢だったのか? タイミングが良すぎないか?」
「その『神眼』ってのが開眼しかけているということ? 時を止められるって……最強じゃないか……」
「物がゆっくり見えるのも、発動条件も、まだ何も分からないからな。しばらくは様子を見るしかない」
ベルフォール王の城までは、すぐの距離だ。
少し歩くと、城門の前に、礼服を美しく着飾ったエミリーが立っていた。メイクもバッチリだ。
「あ! みんな、待ってたよ!」
「エミリー、久しぶりの家族団欒はどうだった?」
「うん! いっぱいお話できて、楽しかった! ここに寄った時はいつでも会いに行けるし、まさかこんな日が来るなんて思いもしなかったよ。……で、ユーゴの眼、どうしたの?」
「さっき二人に言われて気づいたんだ。原因は、分からない」
「ふーん」
眼の力、か。元仙族の王なら、何か知っているかもしれない。聞いてみるのも良いだろう。
「さぁ、ベルフォール王に謁見だ。ジュリア、どんなお方なんだ?」
「女王だよ。レオナードほどのクセはない」
なるほど、女王だったのか。その可能性は頭になかったな。
クセは……少しはあるらしい。構えておこう。
門には、すでに迎えの者が待機していた。その後についていく。
オーベルジュの城とはまた違う、どこかシャープな印象を受ける。物が少ないのだろう。しかし、装飾品などには洗練されたセンスを感じる。
「こちらが、王の間でございます」
扉が開くと、玉座に一人の女性が座っていた。
年齢は全く分からない。レオナード王とそう変わらないはずだが、驚くほど若く見える。
とにかく、アイメイクからチークに至るまで、化粧がすごい。ヘアスタイルも、逆毛を立てていて特徴的だ。
ベルフォール女王との謁見が、始まる。
広い部屋の円卓に、三人。
オレとトーマスは申し訳なさが先に立ち、背中を丸めて座っている。
「いきなり押しかけて、食事まで……すみません」
「いえいえ、大歓迎でございますよ!」
リナさんは、にっこりと微笑んだ。
至れり尽くせりのもてなしに慣れていない分、どうにも気を使ってしまう。
「そういえばジュリア、エミリーがなんだって?」
「あぁ、そうだそうだ。お前らの勃起のせいで、言いそびれたよ!」
「でかい声で言うなよ!」
「エミリーも、明日からここの世話になるそうだ。もう少し滞在したらどうかと言われたみたいだが、あそこの家は他の親族も住んでいるからな。昔から交流がない分、気を使うんだろう」
「なるほど。まあ、お母さんとは、いつでも会えるようになったわけだしな」
ここも、難解な名前のディナーコースのようだ。
けど、マナーはもう理解した。
部屋に戻り、寝床につく。明日は午後まで特に用事はない。ゆっくりしよう。
○○○
(ユーゴ、お話するのは久しぶりね)
母さんの声だ。
この感覚は、夢だ。
何年かに一度見る、不思議な夢。
母さんの顔は、いつも靄がかかったようによく見えない。オレの記憶が曖昧なせいだろう。
いつも、他愛もない世間話をして、目が覚める。
前回は何の話をしただろうか。初めて一人で魔物を狩ったとか、そんな話だった気がする。
(あぁ、母さん、久しぶり。元気か? ……いや、元気なわけはないか)
(元気といえば、元気よ? 素敵な仲間ができて、楽しそうね。母さん安心したわ)
(あぁ、いい仲間に恵まれたよ。オレ、結構強くなったんだぞ)
(そうね。お父さんを越える日も、近いかもしれないわね)
(あぁ……。父さん、すっかり別人みたいに変わってしまったんだ。……でも、元の父さんに戻す手立てはできたんだ)
(そう。……お父さんのこと、助けてあげてね。頼んだわよ)
(今日は、ジュリアに龍族の剣技を教えたんだ。すごいよ、あいつは。まるで、兵器を作ってしまったような気分だ)
(人に教えるということは、自分も成長できるということ。良いことよ)
(成長といえば……今日、おかしなことがあったんだ。周りの動きが、急に遅くなったんだ。そう感じた、とかじゃない。魔法ですら、スローで見えたんだ。龍眼が進化したのかな)
(いいえ。龍眼というのは、特異能力でしょう? ゆっくり見えたのは、あなたの眼そのものの力よ。まさかとは思うけど『神眼』かもね……。完全に開眼すれば、相手の動きが止まって見えるようになる。……もしかしたら、開眼しかけているのかもしれないわね)
(そんな馬鹿な。さすがは、夢だな)
(あなたは本当に強くなった。……またね、ユーゴ)
(あぁ。皆が止まって見えたら、また報告するよ)
〇〇〇
――目が覚めた。頭が、妙にスッキリしている。
相変わらず、リアルな夢だった。
しかし、素晴らしいベッドだ。朝の目覚めが、まるで違う。
朝食を頂き、食後の紅茶を嗜む。素晴らしい朝だ。今日は、午後まで何の予定もない。
部屋の窓から眺める王都の街並みは、整然としていて美しい。
書庫にお邪魔し、紅茶を飲みながら読書をしていると、すぐに昼になった。
昼食を頂く。
メイドのリナさんは、明るくて、笑顔が素敵な女性だ。リナさんも、ここでは混浴なのだろうか。それとも、自宅に帰るのだろうか。
……いかん、いかん。そんな邪な目で見ていると、また、あの時のように勃起を人前に晒すことになってしまう。オレは、慌てて首を横に振った。
王に会う前に、礼服に着替えよう。
直しは完璧で、身体にピッタリと合っている。
城門の前で、二人を待つ。
すぐに、トーマスがやって来た。
「やぁ。まだ残暑が厳しいね。上着は、後にしよう」
「あぁ。トーマスも直しは完璧だな」
「……あれ、ユーゴ? 右眼が……」
そこに、ジュリアもやって来た。
「待たせたな!」
「おぉ、ジュリア。礼服に化粧が映えるな」
「うん、化粧をすると、一段と綺麗だ。本当に、ジュリアは何を着ても似合うな」
「あぁ、リナにしてもらったんだ。最近、そう言われると嬉しくなってきたよ。化粧も勉強してみるかな。二人も格好いいじゃないか」
「ねぇジュリア、ユーゴの右眼を見てみてよ」
「ん? ……あぁ、紫だな。いや、青紫と言った方がいいか」
「オレの眼が? 青紫?」
「ほら、見てみな」
ジュリアから鏡を受け取り、覗き込む。
「本当だ。青寄りの紫色だ。……なんでいきなり……」
「いきなり眼の色が変わることなんてあるの……?」
「トーマス、お前……。オレの前で眼の色が変わっただろう」
「あ、そうか……」
「あ、もしかして……」
オレは、昨夜見た夢の話を、二人にしてみた。
「神眼? ……それ、本当に夢だったのか? タイミングが良すぎないか?」
「その『神眼』ってのが開眼しかけているということ? 時を止められるって……最強じゃないか……」
「物がゆっくり見えるのも、発動条件も、まだ何も分からないからな。しばらくは様子を見るしかない」
ベルフォール王の城までは、すぐの距離だ。
少し歩くと、城門の前に、礼服を美しく着飾ったエミリーが立っていた。メイクもバッチリだ。
「あ! みんな、待ってたよ!」
「エミリー、久しぶりの家族団欒はどうだった?」
「うん! いっぱいお話できて、楽しかった! ここに寄った時はいつでも会いに行けるし、まさかこんな日が来るなんて思いもしなかったよ。……で、ユーゴの眼、どうしたの?」
「さっき二人に言われて気づいたんだ。原因は、分からない」
「ふーん」
眼の力、か。元仙族の王なら、何か知っているかもしれない。聞いてみるのも良いだろう。
「さぁ、ベルフォール王に謁見だ。ジュリア、どんなお方なんだ?」
「女王だよ。レオナードほどのクセはない」
なるほど、女王だったのか。その可能性は頭になかったな。
クセは……少しはあるらしい。構えておこう。
門には、すでに迎えの者が待機していた。その後についていく。
オーベルジュの城とはまた違う、どこかシャープな印象を受ける。物が少ないのだろう。しかし、装飾品などには洗練されたセンスを感じる。
「こちらが、王の間でございます」
扉が開くと、玉座に一人の女性が座っていた。
年齢は全く分からない。レオナード王とそう変わらないはずだが、驚くほど若く見える。
とにかく、アイメイクからチークに至るまで、化粧がすごい。ヘアスタイルも、逆毛を立てていて特徴的だ。
ベルフォール女王との謁見が、始まる。
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