- Mix blood -

久悟

文字の大きさ
113 / 260
第三章 大陸冒険編

軍事演習

しおりを挟む
 数日後の午後。
 
 軍事演習の為、北門から少し離れた広大な演習場に来ている。
 地平線まで埋め尽くすほどの兵士が整列している光景は圧巻だ。最前列には、ロンの憧れ、王国騎士団がずらりと並んでいる。

「みんな! 今日もキレイに整列できてるね! 今日は新しい戦闘法を修練してもらうょ!」
「これを覚えたら、昇化カーショーしてない者も仙術ジュツセンが使えるようになっちゃうかもよ!」

 二人の王が拡声の魔法具を使って演説する。
 実は午前中に、各部隊長クラスを個別に招集し、オレ達が直々に練気術と魔族の戦闘法を伝授していた。ただし、龍族の秘伝であることは伏せてもらっている。 
 騎士団の部隊長ともなると、すでに昇化した実力者ばかりだ。
 
 王国は完全実力主義。
 文武に秀でていれば、出自に関係なく誰にでも出世の機会がある。
 
 演説の後、部隊長達がそれぞれの隊員に指導を始めた。
 高台から見下ろしていると、早くも感覚を掴んで浮遊し始めている一兵卒がいるのが見えた。

「ちょっと手分けして見に行ってこようか」
「そうだね。そうしよう」
「ちゃんボクも行ってこようかな」

 オレ達四人と二人の王は、分かれて演習場を回った。
 元々、兵士たちは基礎的な魔力操作ができるため、練気術の「練る」という感覚の習得は早いようだ。
 
 問題はその先。
 練り上げた気を体外へ放出し、術として成立させるのが難しい。オレ達も最初はだいぶ手こずった。
 やはり、もともと仙術の素養がある者や、感覚の鋭い者は習得が早かった。普通なら数ヶ月から年単位の修行が必要な技術だ。

 けど、これを全員が習得すれば、王都の軍事力は文字通り倍増するだろう。
 
「そうだ、レオナード王。西の山脈に『ニーズヘッグ』ってのがいると思うんですけど、あれはヤバそうですか?」
「ヤバいなんてもんじゃないよユーゴちゃん。あんなもん軍で対処ショータイするような奴だよ」
「討伐しても大丈夫ですか?」
「え……あんなのと戦おうとしてるの!? 構わないけど、SSSトリプルエスの魔物だょ? 死んじゃうょ……?」
「SSSなんてあるんだ……」 

 SSランクの上、SSS。
 未知の領域だ。

  
 今回の軍事演習は、主に練気術の基礎習得で幕を閉じた。

「よし、練気術の習得はできたね! それを応用するのが難しいょね! 基礎は今日学んだとおりだょ、各自持ち帰って修練を積むように!」

 女王の号令で演習は終了した。
 一日で習得して使いこなすジュリアのような天才が異常なだけだ。皆、焦らず時間をかけて自分のものにすればいい。

 オレ達はその後の日々を、ギルドの依頼をこなしながら、ひたすら術の精度を上げる修練に費やした。
 四人で互いに動きを確認し、アドバイスをし合いながら、個々の長所を伸ばしつつ、仲間の技術を吸収していく。

「ツヴァイハンダーはもちろんお気に入りの武器だが、一対一のスピード勝負では『風切かぜきり』を使った方が良さそうだな」

 ジュリアは新調した刀に『風切かぜきり』と名を付けた。
 由来は、振った時の風切り音が心地良かったから。実に単純でジュリアらしい。
 
「そうだな、乱戦や大型の魔物相手にはツヴァイハンダーの破壊力が活きる。使い分けができるのは強みだ」
 
 四人の連携も、格段に洗練されてきた。
 
 トーマスの盾は、鉄壁の守りで前線を支える。
 オレは二刀流で攻防一体、遊撃役として立ち回る。
 ジュリアは圧倒的な火力で敵を粉砕する超攻撃型。
 エミリーは皆にバフをかけつつ治療役に回り、苦無と遁術を駆使して中距離から支援火力を叩き込む。
 オレ達は相当強いパーティーに仕上がっているはずだ。

 
 ◇◇◇

 
 季節は巡り、二ヶ月が過ぎ去ろうとしていた。冬の気配がすぐそこまで迫っている。
 
 マモン達の行方を追って情報収集を続けたが、聞こえてくるのは古い噂話ばかりだった。王都には帰って来ていないと見る他ない。
 王都は王国中の商人や狩猟者ハンターが集まる情報の一大集積地だ。ここで情報がないということは、彼らは王国を出て、魔都に滞在している可能性が高い。
 だとすれば、いずれ彼らが動けば、最初に情報が入るのもここ王都だ。オレ達が未だ王都に滞在しているのは、そういう理由からだ。

 いつの間にか、ジュリアは練気術を完全に我が物とし、空を自由に駆け回るまでになっていた。流石は仙族が誇る天才、成長速度が桁違いだ。

「オレ達もう、ニーズヘッグ倒せるんじゃないか?」
「どんなやつかも分からないけど、今のこの連携ならどうにかなるんじゃないかな」
「行ってみるか?」
「ヤバかったら逃げればいいしね!」

 いつもの軽いノリで決まった。
 皆の武具の整備をトーマスに任せて、二日後、オレ達は伝説のドラゴン討伐へと出発することにした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

マンションのオーナーは十六歳の不思議な青年 〜マンションの特別室は何故か女性で埋まってしまう〜

美鈴
ファンタジー
ホットランキング上位ありがとうございます😊  ストーカーの被害に遭うアイドル歌羽根天音。彼女は警察に真っ先に相談する事にしたのだが…結果を言えば解決には至っていない。途方にくれる天音。久しぶりに会った親友の美樹子に「──なんかあった?」と、聞かれてその件を伝える事に…。すると彼女から「なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」と、そんな言葉とともに彼女は誰かに電話を掛け始め… ※カクヨム様にも投稿しています ※イラストはAIイラストを使用しています

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

エレンディア王国記

火燈スズ
ファンタジー
不慮の事故で命を落とした小学校教師・大河は、 「選ばれた魂」として、奇妙な小部屋で目を覚ます。 導かれるように辿り着いたのは、 魔法と貴族が支配する、どこか現実とは異なる世界。 王家の十八男として生まれ、誰からも期待されず辺境送り―― だが、彼は諦めない。かつての教え子たちに向けて語った言葉を胸に。 「なんとかなるさ。生きてればな」 手にしたのは、心を視る目と、なかなか花開かぬ“器”。 教師として、王子として、そして何者かとして。 これは、“教える者”が世界を変えていく物語。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
 女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!  HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。  跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。 「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」  最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

助けた騎士団になつかれました。

藤 実花
恋愛
冥府を支配する国、アルハガウンの王女シルベーヌは、地上の大国ラシュカとの約束で王の妃になるためにやって来た。 しかし、シルベーヌを見た王は、彼女を『醜女』と呼び、結婚を保留して古い離宮へ行けと言う。 一方ある事情を抱えたシルベーヌは、鮮やかで美しい地上に残りたいと思う願いのため、異議を唱えず離宮へと旅立つが……。 ☆本編完結しました。ありがとうございました!☆ 番外編①~2020.03.11 終了

処理中です...