- Mix blood -

久悟

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第三章 大陸冒険編

ニーズヘッグ 2

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 ニーズヘッグが大きく息を吸い込み、ジュリアの方を向いている。

 ジュリアが危ない!

『ジュリアー! こっちに来い!!』

 オレはジュリアの前に割り込み、防具と春雪を媒介にして、渾身の守護術を展開した。
 オレの怒号に反応し、トーマスも即座に駆けつけ、守護術を重ねる。

 直後、さっきよりも強烈な暴風のブレスが三人を飲み込んだ。

 バリバリバリッ!!
 二重の守護術がガラス細工のように砕け散り、オレ達は吹き飛ばされた。

 大丈夫だ……意識はある……皆生きている……。

 だが、三人は満身創痍だ。全身の骨が軋んでいる。
 
「ごめん、奴の敵意がジュリアに……味方を危険に晒すなんて……盾士失格だ……」

 トーマスが悔しげに顔を歪める。

『治療術 快癒!』

 エミリーの声と共に、温かな光のシャワーが降り注いだ。痛みが引き、傷が塞がっていく。

「私がいるよ! みんな、思いっきり戦って!」
「助かったエミリー!」

 仕切り直しだ。

「オレは『龍胆りんどう』に全力を込める! チャージする間、ジュリアとトーマスで相手できるか!?」
「「了解!」」

 エミリーが二人に継続再生をかけ直す。

「ユーゴ! 準備が出来たら言って!」
「分かった!」

 エミリーの目には、強い意志が宿っていた。何か策があるようだ。

 トーマスとジュリアが二人掛かりでニーズヘッグを翻弄し、エミリーが遠距離から支援する。
 だが、決定打に欠ける。

 その時、全身に悪寒が走った。
 空気が振動している。
 
『トーマスの元に集まれぇぇ――! 皆で堅牢だァ――!』

 オレの指示で、離れていたエミリーも合流する。四人合わせて守護術を展開しようとした。

「今までのじゃダメだ……」
「トーマス、どうした!?」

 トーマスの目が、今まで見たことのない光を宿していた。

「今の僕じゃ皆を守れない……でも……僕は……このパーティーの盾士だァァ――!!」

『守護術! 堅牢ォ――!』

 トーマスの咆哮と共に、災害級の広範囲魔法ブレスが直撃した。
 視界が白く染まる。

『キィィィ――ンッ!』

 金属音のような高音が響き渡り、全ての風の刃がトーマスの展開した光の壁に弾かれた。

「防いだか……?」

 暴風が晴れる。
 オレ達は無傷だった。

「おい……堅牢にヤマタノオロチの鱗が浮き出てるぞ……」

 半透明の障壁には、確かに龍の鱗のような紋様が浮かんでいた。

「やっと……掴んだ……よし! 守りは任せてくれ!」

 トーマスは力強く頷き、皆に守護術を掛け直した。
 錯覚ではなかった。トーマスの守護術は、一段階上の領域へと昇華したらしい。

「よし! 反撃だ!」 

 オレは特級品の『龍胆りんどう』に意識を集中させた。
 戦闘開始から練気を注ぎ続けた龍胆に、風遁『鎌鼬かまいたち』を一気に刀身へと圧縮する。
 刀が悲鳴を上げるほどのエネルギー密度だ。

「エミリー! 行くぞォー!」
「了解!」

 奴の弱点は首の下、逆鱗とも呼べる急所だ。
 けど、高速で動く急所には、普通なら潜り込めない。

 エミリーが腕を振り抜いた。
 放たれたのは、二本の苦無くないだ。

 ヒュンッ!
 吸い込まれるようにニーズヘッグの翼の付け根に深々と突き刺さった。

 瞬間、巨体の動きがピタリと止まった。

『魔法剣技 みなごろし!』

 その一瞬の隙を見逃さず、オレは懐に飛び込んだ。
 龍胆りんどうから解き放たれた斬撃の嵐が、ニーズヘッグの急所を切り刻む。
 硬い鱗ごと肉を削ぎ、骨を断つ。

『グオォォォ――!』

 断末魔の叫びにも構わず、オレは攻撃を止めない。一心不乱に、ただ斬り続けた。

「ユーゴ! もういいよ!」

 エミリーの声で、ハッと我に返り、刀を止めた。
 目の前で、ニーズヘッグの巨体がゆっくりと崩れ落ち、地響きを立てて山肌に激突した。

「ハァ……ハァ……やったのか……?」
「あぁ、アタシ達の勝ちだ!」

 SSSの魔物に勝った……。
 
 震える手で刀を納める。
 オレ達は、名実ともに世界最強レベルのパーティーになった。

「ぃよっしゃぁー!」
「やったね!」
「エミリー、どうやってあれを止めたの?」
「苦無に『途絶フリーズ』の効果を込め続けてたんだよ! 魔法剣技の要領でね。刺さって良かったよ」
「なるほどな……中距離攻撃のスペシャリストだよホント」

 動かなくなったニーズヘッグの巨体に向かい、解体作業に取り掛かる。
 トーマスと協力して硬い皮を剥ぎ、目玉、爪、牙、利用できる素材はすべて採取した。

「エミリー、火葬頼む」
「了解!」

 残った肉体をエミリーの炎で浄化すると、灰の中から異様な輝きを放つ物体が現れた。

「なんだこれ!? でっか!」

 巨大な魔晶石が二つ。
 さらに、明らかに純度の高い小さな魔晶石が五個転がっていた。

 これいくらになるんだ……?

「この特大魔晶石はオレ達には使い道ないよな?」
「あぁ、何に使えるんだこれ? シャルロットに聞いてみるか」

 山頂の風に吹かれながら、オレ達はリナさんの作ってくれた弁当を広げた。
 勝利の後の飯は格別だ。
 戦利品を異空間に収め、オレ達は王都への凱旋の途についた。
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