- Mix blood -

久悟

文字の大きさ
116 / 260
第三章 大陸冒険編

祝勝会

しおりを挟む
 王都に到着したオレ達は、足早に王城へと向かった。

「どっちの王の所に行けばいいんだ?」
「レオナードの城に世話になってるしな。まずはそっちに報告だろう」

 オーベルジュの城門をくぐる。門番とはもう顔なじみで、軽い会釈だけで通してくれた。

 歩き慣れた城内の廊下を進み、王の間へ。
 重厚な扉が開くと、いつも通り玉座には誰もいない。
 その横の部屋の扉をジュリアが開く。

「レオナード! ニーズヘッグ仕留めてきたぞ!」
「え……? マジで……?」

 王の目が点になる。
 本当に行くとは思わなかった、といった表情だ。その驚きっぷりに、オレ達は少し誇らしげな気分になる。

「わ……分かったよ……シャルロットと部下を呼ぶ」

 レオナード王の指示で、控えていた部下の一人が慌ただしく部屋から出て行った。
 
「なぁ、レオナード。アタシ、敵の動きの先が視えたんだよ。まだ完璧じゃないんだけどな。そんな眼の力知らないか?」
「あぁ、それは多分『予見眼よけんがん』だね。大昔に開眼ガンカイした人が居たな」
「ほー、そういう能力者が居たのか。鍛えよう」

 ジュリアが納得したように頷く。
 オレの持つ龍眼の、未来予知に近い能力を特化させたようなもんだろうか。剣士としての彼女には相性が抜群にいいはずだ。

 しばらくすると、シャルロット女王と数名の部下が小走りで部屋に入って来た。

「本当にあれを倒したのね……?」
「あぁ、死ぬかと思ったぞ」

 オレ達は戦利品をそれぞれの異空間から取り出し、広間に並べた。
 巨大な牙、爪、そして山のような鱗皮。
 部下たちが息を呑む音が聞こえる。

「僕達の防具を作りたいので、修理用と今後の事を考えて体皮をかなり多めに頂きますね。あとは、小さい方の魔晶石を頂きます。この魔晶石はフェンリルの物です。こちらを買い取ってください」
「かしこまりました」

 女王の部下は、震える手で未知の素材を検分し始めた。興奮を隠しきれないようだ。

「シャルロット、このでっかい魔晶石はアタシ達に使い道あるのか?」
「魔族が杖に使ってたのは見たことあるょ。ここまで大きくはなかったけど……。でも、ジュリジュリ達は杖使わないでしょ? なら使い道は無いかな。これだけでっかい魔晶石なら、この城の数十年分の生活魔力をまかなえそうだね。ウチらの城で買い取りたいくらいだょ」
「そうか。じゃ、売るよ」

 王の部下が素早く計算を始める。

「端数は繰り上げましょう。全て合わせまして、3200万ブールでございます」
「3200万!?」
「小さい魔晶石の分と、体皮分の減額でございますね。本来なら4000万です」

 凄いな……。
 命がけとはいえ、一回の稼ぎとしては破格だ。

「女性二人は手渡しでお願いします。後は振込で」
「では、お一人800万ブールですね。ランクアップの処理を致しますので、カードをお預かりしますね」

 四人が狩猟者ハンターカードを手渡すと、女王の部下は慎重に処理を始めた。

「いやぁ……ゴイスーだねホント」

 レオナード王が感嘆の声を上げる。

「レオナード王、この体皮の加工と防具の作成をしたいのですが、王都で一番の防具職人を紹介して頂けませんか? 僕のこだわりを一緒に作って貰いたい」
「分かったよ。地図ズーチーを書かせよう。連絡もしておく」
「ありがとうございます!」
 

 処理が終わり、カードが返ってきた。
 ランク欄には、燦然と輝く『SSS』の文字。

「やったー!」
「今日は昇級祝いだよ!」

 狩猟者ハンターとして最高ランクに達した。
 もはや疑う余地はない。オレ達四人は強い。
  

 ◇◇◇

 
 城の風呂で汗を流し、着替えて街へ繰り出す準備をする。
 
 王都に来てから自由な時間も増えた。 
 四人で遊ぶことも多くなり、オレとトーマスも「もっとオシャレをした方がいい」とエミリーに言われ、服を一緒に選んでもらった。
 鏡を見る。なかなか悪くない。けどやっぱり、私服のズボンも動きやすいデニムに限る。

「祝いはやっぱり『冒険野郎』でしょ!」

 当然、異論はない。
 オレ達は馴染みの店へ直行した。

SSSトリプルエスランク! カンパーイ!」
『カンパーイ!』

 ビールジョッキを高く掲げ、ぶつけ合う。
 喉を鳴らしながら一気に飲み干す黄金色の液体は、格別の味がした。勝利の美酒だ。

「まさかSSSがあるなんてな……他にもヤバイ奴が世界中にいるんだろうな」
「アタシの剣技はまだまだだ。修行が必要だな」
「いや、ジュリアも時間をかけて練気を注ぎ込んでれば、十分通用したはずだ。オレが良いとこ貰っただけだよ。ジュリアとトーマスが相手してくれてたから、オレの剣技が生きた。これが二枚アタッカーパーティの強みだな」

 ジュリアは一度俯くと、神妙な面持ちで顔を上げた。
 
「……アタシ、ユーゴに弟子入りするよ」
「必要ねーよ! まぁ、お互い高め合おう。それよりトーマス! なんだよあの守護術!」
 
「いやぁ、常々守護術に防具の特性を写すことは出来ないかって考えてはいたんだよ。まさかあんなにいい場面で完成するとはね。上手くいって良かったよ」

 トーマスは頭を掻きながらそう言って、エミリーに顔を向けた。
 
「でも、一番の功労者はエミリーだよ。苦無で『途絶フリーズ』を突き刺すとはね。『快癒』には助けられたし、今日のMVPだよ」
「そうだ、とんでもない技編み出したな。あれを食らわせれば何でも止めれるぞ」
「うん! ずっと温めてたんだ! 刺さって良かった……」
 
 エミリーが照れくさそうに笑う。
 
「オレ達は強い、それが今日証明された!」

 酒が進む。
 今夜はとことん楽しもう。

  
「次はどこ行く?」
「モレクさんのとこは?」
「あぁ、いいねぇ。そうしよう」

 南の繁華街へ向かって歩き、怪しげなネオンが光る路地に入る。
 モレクさんと会うのも、魔法の圧縮技術を教わって以来だ。
 
 ショーパブ・リバティ。
 重厚な扉を開くと、今日も賑やかな音楽に乗せて華やかなショーが行われている最中だった。

「あ、いらっしゃいみんな!」
「久しぶり!」
「ママ~! ユーゴ君達が来たわよ~!」

 奥からモレクさんが出てきた。
 今日も派手な赤髪に負けない、極彩色のメイクが決まっている。

「あら、珍しいわね四人とも」
「いい事があったんでね。飲ませてよモレクさん」
「何があったのか聞かないとね、うちで良ければ楽しんでってちょうだい 」

 ステージではポールダンスショーが行われ、店内は熱気に包まれている。

 手慣れた手つきでモレクさんが水割りを作り、オレ達の前に並べた。

「乾杯!」

 オレ達四人の前には、モレクさんを含めて三人のキャストが座った。
 七人でグラスを高く掲げる。 
 
「で? どんないいことがあったの?」
「あぁ、ニーズヘッグを討伐して、SSSに昇級したんだよ」
「え……? あれを倒したの……? 四人で?」
「死にかけたよホント」
「凄いわね……SSSなんて世界に数えるくらいって聞くわよ? でもあなた達ならねぇ。不思議じゃないわ」

 談笑していると、化粧も女装もしていない、素朴な雰囲気の男性が席の前に立ち止まった。

「いらっしゃいませ。僕もご一緒しても宜しいですか?」
「あぁ、紹介するわね。マシューよ」
「初めまして。よろしくお願いします」

 マシューと呼ばれた男性は丁寧に一礼して、端のエミリーの横に座った。

「マシューはね、性自認が無いの」
「はい、身体は男ってのは分かってるんですけどね。男や女ってのがどうもしっくり来なくて。僕はセクシャリティが分からないし、性的指向も分からない。悩んでたらママがここで働かせてくれたんです。ここには色んな人が働いてるし、色んな人が来るから」

 自分の性が分からない。
 前にモレクさんが言っていたのを思い出した。
 
「ごめんなさい。しんみりさせちゃいましたね。普通に接してくれたら嬉しいな!」
「あぁ、飲もうマシュー! アタシはジュリアだ!」
「私は……エミリー」

 ん……?

「うん、ありがとう。僕もお酒頂くね。じゃ、お隣のエミリーちゃん。乾杯」
「あっ……うん、乾杯……」

 んん~?
 
 エミリーが顔を赤らめて俯き、グラスを持つ手がわずかに震えている。

 これはもしや……?
 ニヤリとしそうになるのを堪え、オレはグラスを口につけた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

マンションのオーナーは十六歳の不思議な青年 〜マンションの特別室は何故か女性で埋まってしまう〜

美鈴
ファンタジー
ホットランキング上位ありがとうございます😊  ストーカーの被害に遭うアイドル歌羽根天音。彼女は警察に真っ先に相談する事にしたのだが…結果を言えば解決には至っていない。途方にくれる天音。久しぶりに会った親友の美樹子に「──なんかあった?」と、聞かれてその件を伝える事に…。すると彼女から「なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」と、そんな言葉とともに彼女は誰かに電話を掛け始め… ※カクヨム様にも投稿しています ※イラストはAIイラストを使用しています

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

エレンディア王国記

火燈スズ
ファンタジー
不慮の事故で命を落とした小学校教師・大河は、 「選ばれた魂」として、奇妙な小部屋で目を覚ます。 導かれるように辿り着いたのは、 魔法と貴族が支配する、どこか現実とは異なる世界。 王家の十八男として生まれ、誰からも期待されず辺境送り―― だが、彼は諦めない。かつての教え子たちに向けて語った言葉を胸に。 「なんとかなるさ。生きてればな」 手にしたのは、心を視る目と、なかなか花開かぬ“器”。 教師として、王子として、そして何者かとして。 これは、“教える者”が世界を変えていく物語。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
 女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!  HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。  跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。 「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」  最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

助けた騎士団になつかれました。

藤 実花
恋愛
冥府を支配する国、アルハガウンの王女シルベーヌは、地上の大国ラシュカとの約束で王の妃になるためにやって来た。 しかし、シルベーヌを見た王は、彼女を『醜女』と呼び、結婚を保留して古い離宮へ行けと言う。 一方ある事情を抱えたシルベーヌは、鮮やかで美しい地上に残りたいと思う願いのため、異議を唱えず離宮へと旅立つが……。 ☆本編完結しました。ありがとうございました!☆ 番外編①~2020.03.11 終了

処理中です...