- Mix blood -

久悟

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第四章 魔人の過去編

龍王との対峙

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 ワタシ達は別物になった浮遊術で海を渡り、リーベン島に上陸した。

「さてシュエンちゃん、案内してちょうだい」
「あぁ、ついて来てくれ」
「わたくしはお使いに行ってきますわね」
「あぁ悪いな、頼むよ。長居するつもりは無い、帰りはルナポートのホテルに集合にするか」
「分かりましたわ」

 サランと別れ、シュエンを先頭に島の中心部に向けて飛んでいく。
 鬱蒼とした森を抜けると、開けた場所に出た。そこには数人の龍族がいて、ワタシ達の接近に気づいたようだ。その中に、龍族ではない者もいる。

「え……? 父さん?」
「シュエン! 久しぶりだな!」

 皆シュエンとは顔見知りらしい。シュエンの表情が強張る。

「ユーゴか……」
「あら、あれがアナタの子供? アナタに似ず、可愛いわね」

 へぇ、シュエンの記憶より逞しくなったわね。

「父さん! いきなりいなくなるからびっくりしたぞ!」
「あぁ、二度と会いたく無かったがな」
「え?」
「二度と会いたくは無かったと言ったんだ。金輪際、俺の前に姿を見せるな」

 その冷徹な言葉に、場が凍りついた。皆が驚きを隠せないでいる。

「……おぃ、シュエン! お前ぇ何言ってんだ!? 息子に冷てぇ上に、久しぶりに会う親友に見向きもしねぇのか!?」
「あぁ、懐かしいなヤン。お前の刀で色んな奴を殺せたよ、礼を言う」
「お前ぇ……どうしちまった……」

 やっぱり、シュエンの苛立ちや憎悪は、かつて親しかった者ほど強く向けられている。

「変わり果てて帰って来るとはの。お主、外で何をしてきた」

 威厳のある老人が前に出る。圧倒的な魔力の質、あれが龍王ね。流石は始祖四王……格が違うわ。

「父上よ、俺は別に呑気に里帰りしに来たわけじゃない。要件はこいつが言う、素直に喋ったほうがいい。この里で暴れられると困るだろう」

 シュエンがワタシに視線を向ける。

「初めまして龍王さん。ワタシはマモン・シルヴァニアよ。この赤髪とファミリーネームでピンとくるでしょ?」
「ふむ、魔族が何の用だ」
「魔族ね、半分だけ合ってるわ。ワタシは魔族と人族の間に産まれた魔人よ。聞いた事ないかしら?」
「知っておる。まさか、我が息子が従っておるとは思わなんだがな」
「なら良かった。じゃあ率直に言うわね。『すい宝玉ほうぎょく』を出してちょうだい」

 龍王は、眉一つ動かさず答えた。

「どこで聞いてきたかは知らぬが、この里にそんな物は無い。そもそも、それのせいで四種族は争っておったのだ。横の龍族に聞いておろう。儂等はその争いから降りた。そんな争いの火種を、わざわざ移住先に持ってくる訳が無かろう」
 
 理路整然としている。

「……なるほどね、一理あるわ。じゃあ、どこにあるの?」
「元の龍族の土地に埋めてきた。見つけるには骨が折れるであろうの。千年以上前の話だ、儂ですらどこに埋めたかなど覚えておらぬ。儂等には必要の無い物だ、見つけたら好きにするが良い。あれが壊れておるなどという事は無かろう」
「なるほどね、それは大変そう。でも、流石にアナタから記憶を抜くのは難しそうね。宝玉同士が共鳴するなんて事は無いの?」
「知らぬ。他の宝玉を見たこともない故に」
「そうなのね。じゃあ、翠は後回しが良さそうね……で? アナタはさっきから何をブツブツ言ってるの? 気持ち悪いわね」

 隣でアレクサンドがブツブツ言いながら、ワタシの腕をペチペチと叩いている。

「……キミは話が長いんだよ。ボクにも話をさせて欲しいね」
「勝手に話せばいいじゃない」
 
 アレクサンドが一歩前に出て、気取ったポーズをとる。

「やぁ、久しぶりだね、メイファ。歳をとっても相変わらず美しい」
「あぁ、別に会いたくはなかったがな」
「このアレクサンドを忘れることは無かったようだね」
「お前みたいな変な奴、忘れたくても忘れられん」

 メイファと呼ばれた女性が冷ややかに言い放つ。
 その時、後ろにいたウェーブが掛かった栗色髪の娘の顔色が変わった。

「アレクサンドォー!!」
「なんだこの小娘は、女の子が何て声を出すんだ」
「おい、クズ。リヴィア・オーベルジュを覚えてるだろ」
「リヴィア? 誰だそれは」
「あんたが孕ませて、家ごと焼き殺した人族だよ!」
「はて? どれの事かな。人族とは一夜限りなんだ。いちいち覚えてるわけ無いだろ」
「どこまでクズなんだ……私は焼き払われたリヴィアの子だ! あんたをぶん殴る為に生きてる!」
「ほぉ、ボクの子に会うのは初めてだな。……まぁ、今はお祖父様にバレようがどうでもいいから見逃してやるけどね」

 娘は刀を抜き放ち、アレクサンドに斬り掛かった。速い。

 キィィーーン!

 鋭い一撃だったけど、アレクサンドの守護術は突破出来ない。

『火遁! 煉獄!』
『風遁! 鎌鼬!』

 シュエンが扱う龍族の術だ。
 この娘は仙族だ、ここで修練したのね。威力も申し分ないけど、アレクサンドの守護術はそれ以上だ。

「ほう、なかなかやるね、いい術だ。さすがボクの娘と言ったところか。もっと強くなったら遊んでやるよ。しかし……ぶん殴ると言いながら斬りかかって来るとはね。行儀の悪い子だ」
「クソッ……私はエミリー・スペンサーだ! 覚えとけ! 次に会ったときにはぶっ殺してやる!」

「エミリーか、成長した姿を楽しみにしとくかな」

 親子喧嘩はまたのお預けね。それよりもワタシが気になってるのは……あっちの子よ。

「さっきから気になってたんだけど、そっちの赤茶髪の少年はセンビア族ね? 生き残りがいたとはね」
「え……?」
 
 少年が目を見開いてワタシを見る。

「あの噴火で生き残るって事は、どこかに出かけてたの?」
「何で知ってる……?」
「そりゃ知ってるわよ。ワタシが火山を噴火させたんだから」
「は……? なんだって?」
「理解力のない子ねぇ、見せてあげるわ」

 センビアの少年に手をかざし、あの日の記憶を脳裏に映した。
 マグマに飲み込まれる集落、逃げ惑う人々、そしてそれを笑いながら見下ろすワタシ。

「何だ……これは……ゥワァァーッ!!」

 フフッ、いい反応だわ。見たくないものを無理矢理見せるのはやっぱり快感ね。
 
「おい! トーマスに何をした!?」

 ユーゴが叫ぶ。
 
「うるさいわね、何もしてないわよ。あの時ワタシは荒れてたの、魔族と人族の間でね。アナタ達って人族で、しかも髪が赤っぽいじゃない? 自分を見てるみたいで気に食わなくて皆殺しにしたの」
「……そんな理由で……僕の家族たちを殺したのか……?」
「あぁ、でも安心して、あの噴火でいい魔法思いついたの。アナタの一族は無駄死にではなかったわ」
「このクズ野郎……」
「あら、野郎とは失礼しちゃうわね」

『ウオォォォー!! お前……殺してやる……』

 ……ん? 昇化した。
 怒りで昇化する事もあるのね。面白いわ。

 少年が突っ込んでくる。速い。
 けど、ワタシに一太刀浴びせられる程じゃない。

 キィィーーン!

 シュエンが割って入り、センビアの少年の斬撃を受け止めた。
 刀を抜きながら斬り掛かるような技があるとはね。あとでシュエンに教わる必要があるわね。

「おいマモン、趣味の悪いやつだな。あまり煽るな」
「あら、ありがとね。シュエンちゃん」

 人族であの動きは脅威だ。練気術はこうも力を底上げするのね。 

「あの赤茶髪の男、昇化したぞ?」
「ワタシの記憶、そんなに良かったかしら? 感謝してもらわないとね」

 シュエンが呆れたようにため息をつき、息子達に向き直る。

「おい、俺は楽しく里帰りに来たわけじゃ無いと言っただろう。こいつ等がベラベラと喋りすぎたのは詫びる。トーマス、エミリー、もっと強くなってこいつらを殺しに来るなら大歓迎だ。……ユーゴ、お前に言うことは一つだ。二度と俺の前に姿を現すな」

 ユーゴ。あの子の中に魔神がいるのね。
 
 アレクサンドの娘とセンビアの少年、この三人はまだまだ強くなるに違いない。楽しみが増えたわ。

「じゃ、お邪魔したわね。帰るわね」

 ワタシ達はそのままルナポートに向けて飛んだ。

「シュエンちゃん、あなたの息子とその仲間はいくつなの?」
「俺が出ていった時に十八だったから、十九になるか。トーマスも同じだ。エミリーは知らないが、同じくらいだろ」

 十九歳であの強さか。末恐ろしいわね。

 ルナポートのホテルに戻った。
 サランはまだ帰っていない。

「意外と早く戻って来たな」
「サランもすぐに戻るでしょうね」
「夜まで少しゆっくりしてディナーを楽しもうか」
「そうね、サランにはフロントに伝言を言付けときましょ」
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