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第四章 魔人の過去編
行く当て
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夜になり、ロビーに集合したワタシ達は、昼に食べたあの味を求めて再び同じ店に入った。
今度は違う種類の魚のカルパッチョと、白身魚のソテーをオーダーし、冷えた白ワインで乾杯する。
「この魚のカルパッチョも絶品だな。昼のより脂が乗っていて、こっちの方が好きかもしれない」
「えぇ、ワインが進みますわね」
「サラン、お使い悪かったな。明日の野営で、皆に龍族の料理を振る舞うよ」
「それは楽しみですわ」
食事の手が進むにつれ、話題は昼間の出来事、アレクサンドの娘について移っていった。
「アレクサンドに娘がいたとはね。世間は狭いものだわ」
「ボクが一番驚いたよ。いたとしても、あの時家ごと焼き殺したと思っていたからね」
「エミリーは、初めて会った時から眼の色を隠してたからな。何か訳があるとは思ってはいたが……お前に相当な恨みを持っていたぞ」
「オーベルジュと言ってたな。だとしたらボクが国を追われる原因になった女か。名前も顔も忘れたが、面倒な種を残してしまったもんだよ」
悪びれもせずに言うアレクサンドに、ワタシは呆れ半分、感心半分でため息をついた。
酷い男だこと。
美味しい魚料理で腹を満たしたけど、まだまだ飲み足りない。ワインを一本追加し、グラスを揺らしながら今後の計画を話し合う。
「さて、明日から何処に向かう?」
「宝玉を奪い合っていたのは事実のようね。龍王の反応を見る限り、信憑性が増したわ」
「ただ、『翠』の宝玉の在処は分からずじまいだな」
手詰まり感が漂う中、ワタシは以前から温めていたアイデアを口にした。
「ねぇ、鬼人の封印を解いてみない? ワタシ達なら、万が一ヤツが暴れたって正気に戻せるわ」
「そうだな、俺の様に自我崩壊は魔力過多が原因だろうしな。俺達なら対処できる」
「わたくしはどこでもついて行きますわ」
「ボクも異論はないよ。退屈しのぎには丁度いい」
皆の同意を得て、方針は固まった。
「じゃ、決まりね。レトルコメルスからジョカルドに戻って、旅支度をしましょうか」
遅くまで魚料理とワインを楽しみ、ワタシ達はルナポートの夜を満喫した。
翌朝、レトルコメルスに向け全力で空を駆けた。
途中、街道を外れた森で牛の魔物ホーンオックスを討伐し、シュエンが手際よく肉の処理をする。
「いい時間だな、野営地はあの辺でどうだ?」
緩やかに流れる川の畔に、手頃な開けた場所がある。
「あぁ、いい感じだね。まだ暑いし、水浴びもできそうだ」
「テントは任せるよ。良い肉も採れたし、約束通り龍族の伝統料理を振舞おう」
「楽しみですわ。龍族のお酒も買ってますわよ。川で冷やしておきますわね」
「ほう! 気が利くねサラン!」
三人で手際よくテントを設営する。
日が沈んだとはいえ、まだ熱気が残っている。
「サラン、水を浴びてこようか 」
「マモン、覗かない様に見張り頼みますわね」
「えぇ、いつも通り任せなさい。不審者がいたら消し炭にしておくわ」
「チッ……仙神国は混浴だったぞ? 良いじゃないかたまには一緒に浴びても」
「何回言っても無駄よ。諦めなさい」
ブツブツと文句を言うアレクサンドを追い払い、時間差で水浴びを済ませると、シュエンから食事の準備が出来たと声がかかった。
「嗅いだことない匂いね。甘ような……」
「あぁ、『スキヤキ』と言う。食べてみてくれ」
鍋の中では、牛の魔物の薄切り肉が、野菜と共にグツグツと煮込まれている。そして、手元のお皿には溶いた生の卵。
「生の卵は勘弁して欲しいんだが……」
アレクサンドが露骨に嫌な顔をする。
「騙されたと思って、卵を絡めて肉を食べてみてくれ。生卵ありきの料理だ」
ワタシも勿論、初の試みだ。
恐る恐る、熱々の肉を卵にくぐらせ、口に入れた。
「……!」
濃厚な調味料が絡んだ肉を、卵がまろやかに包み込んでいる。肉はとろけるように柔らかい。
「美味しいわ、なにこれ」
「ホントだな……美味い。卵がソース代わりになるとは」
「えぇ、わたくしの故郷のプルコギとはまた違う美味しさですわ」
「そうだろう? 俺も四十年振りだ。吟醸酒まで飲めるとはな……サラン、礼を言う」
「この酒も美味しいわね。スッキリしていて」
「ほんと、買ってきて良かったですわね」
スキヤキは本当に美味しかった。
これは是非また作って貰わなくちゃね。
◆◆◆
次の日の夕方にはレトルコメルスに着いた。
特に滞在する用事もないので、一泊して翌朝には出かけることにした。
更に二日後、ジョカルドに到着した。
「料理もお酒も美味しかったし、いい旅だったわ」
「あぁ、少しゆっくりしてから次の旅に出ようか」
サランの屋敷で夕食を済ませ、食後のリラックスした空気の中で今後の事を話し合う。
「鬼人を解放すると言っても、何処に封印されているか知っているのか?」
「ワタシが知ってる訳ないじゃない」
「おいおい、どうやって探すんだ」
シュエンが呆れる。そういえば言っていなかったわね。もちろん当てはある。
「ワタシが魔都で世話になったメイドがいたの。『エナリア』っていうんだけどね。ワタシとモレクが出て行った後に、彼女は故郷に帰ったわ。そこがシルヴァニア領の最南端にある町で、ノースラインから北の山を超えた所にあるの」
「モレクか、懐かしいな。そのメイドに聞けば分かるのかい?」
「そうね、彼女の父親がかつて鬼人討伐の部隊に参加したって聞いた事があるわ。何かしらの手がかりは聞けると思うわよ」
「なるほどな、次の目的地はその町か。魔都に入るのは初めてだ」
シュエンが納得して頷く。
そして、その後の話に移る。
「鬼人の封印を解いた後の事は考えてますの?」
「そうね、ワタシ達は相当強くなった。その勢いでシルヴァニア城を落として、国を乗っ取るのも悪くないわね」
「では、この屋敷ももう用無しですわね。メイド達に売りに出して、その金を分配するよう伝えておきますわ。彼女達の退職金としては十分過ぎますわね」
サランの決断は早い。
「退職金で思い出したけど、魔都で人族の通貨は使えないだろ?」
「あぁそうね、何かに変えて向こうで売るのが良いかもね。宝石ならどこに行っても高値で売れるわ」
「じゃあ、各自手持ちの金を宝石に変えておくとしよう。荷物も減るしな」
目的地は決まった。
ノースライン北部の山を越えて、いざ魔都へ。
新しい遊び場の予感に、胸が高鳴る。
今度は違う種類の魚のカルパッチョと、白身魚のソテーをオーダーし、冷えた白ワインで乾杯する。
「この魚のカルパッチョも絶品だな。昼のより脂が乗っていて、こっちの方が好きかもしれない」
「えぇ、ワインが進みますわね」
「サラン、お使い悪かったな。明日の野営で、皆に龍族の料理を振る舞うよ」
「それは楽しみですわ」
食事の手が進むにつれ、話題は昼間の出来事、アレクサンドの娘について移っていった。
「アレクサンドに娘がいたとはね。世間は狭いものだわ」
「ボクが一番驚いたよ。いたとしても、あの時家ごと焼き殺したと思っていたからね」
「エミリーは、初めて会った時から眼の色を隠してたからな。何か訳があるとは思ってはいたが……お前に相当な恨みを持っていたぞ」
「オーベルジュと言ってたな。だとしたらボクが国を追われる原因になった女か。名前も顔も忘れたが、面倒な種を残してしまったもんだよ」
悪びれもせずに言うアレクサンドに、ワタシは呆れ半分、感心半分でため息をついた。
酷い男だこと。
美味しい魚料理で腹を満たしたけど、まだまだ飲み足りない。ワインを一本追加し、グラスを揺らしながら今後の計画を話し合う。
「さて、明日から何処に向かう?」
「宝玉を奪い合っていたのは事実のようね。龍王の反応を見る限り、信憑性が増したわ」
「ただ、『翠』の宝玉の在処は分からずじまいだな」
手詰まり感が漂う中、ワタシは以前から温めていたアイデアを口にした。
「ねぇ、鬼人の封印を解いてみない? ワタシ達なら、万が一ヤツが暴れたって正気に戻せるわ」
「そうだな、俺の様に自我崩壊は魔力過多が原因だろうしな。俺達なら対処できる」
「わたくしはどこでもついて行きますわ」
「ボクも異論はないよ。退屈しのぎには丁度いい」
皆の同意を得て、方針は固まった。
「じゃ、決まりね。レトルコメルスからジョカルドに戻って、旅支度をしましょうか」
遅くまで魚料理とワインを楽しみ、ワタシ達はルナポートの夜を満喫した。
翌朝、レトルコメルスに向け全力で空を駆けた。
途中、街道を外れた森で牛の魔物ホーンオックスを討伐し、シュエンが手際よく肉の処理をする。
「いい時間だな、野営地はあの辺でどうだ?」
緩やかに流れる川の畔に、手頃な開けた場所がある。
「あぁ、いい感じだね。まだ暑いし、水浴びもできそうだ」
「テントは任せるよ。良い肉も採れたし、約束通り龍族の伝統料理を振舞おう」
「楽しみですわ。龍族のお酒も買ってますわよ。川で冷やしておきますわね」
「ほう! 気が利くねサラン!」
三人で手際よくテントを設営する。
日が沈んだとはいえ、まだ熱気が残っている。
「サラン、水を浴びてこようか 」
「マモン、覗かない様に見張り頼みますわね」
「えぇ、いつも通り任せなさい。不審者がいたら消し炭にしておくわ」
「チッ……仙神国は混浴だったぞ? 良いじゃないかたまには一緒に浴びても」
「何回言っても無駄よ。諦めなさい」
ブツブツと文句を言うアレクサンドを追い払い、時間差で水浴びを済ませると、シュエンから食事の準備が出来たと声がかかった。
「嗅いだことない匂いね。甘ような……」
「あぁ、『スキヤキ』と言う。食べてみてくれ」
鍋の中では、牛の魔物の薄切り肉が、野菜と共にグツグツと煮込まれている。そして、手元のお皿には溶いた生の卵。
「生の卵は勘弁して欲しいんだが……」
アレクサンドが露骨に嫌な顔をする。
「騙されたと思って、卵を絡めて肉を食べてみてくれ。生卵ありきの料理だ」
ワタシも勿論、初の試みだ。
恐る恐る、熱々の肉を卵にくぐらせ、口に入れた。
「……!」
濃厚な調味料が絡んだ肉を、卵がまろやかに包み込んでいる。肉はとろけるように柔らかい。
「美味しいわ、なにこれ」
「ホントだな……美味い。卵がソース代わりになるとは」
「えぇ、わたくしの故郷のプルコギとはまた違う美味しさですわ」
「そうだろう? 俺も四十年振りだ。吟醸酒まで飲めるとはな……サラン、礼を言う」
「この酒も美味しいわね。スッキリしていて」
「ほんと、買ってきて良かったですわね」
スキヤキは本当に美味しかった。
これは是非また作って貰わなくちゃね。
◆◆◆
次の日の夕方にはレトルコメルスに着いた。
特に滞在する用事もないので、一泊して翌朝には出かけることにした。
更に二日後、ジョカルドに到着した。
「料理もお酒も美味しかったし、いい旅だったわ」
「あぁ、少しゆっくりしてから次の旅に出ようか」
サランの屋敷で夕食を済ませ、食後のリラックスした空気の中で今後の事を話し合う。
「鬼人を解放すると言っても、何処に封印されているか知っているのか?」
「ワタシが知ってる訳ないじゃない」
「おいおい、どうやって探すんだ」
シュエンが呆れる。そういえば言っていなかったわね。もちろん当てはある。
「ワタシが魔都で世話になったメイドがいたの。『エナリア』っていうんだけどね。ワタシとモレクが出て行った後に、彼女は故郷に帰ったわ。そこがシルヴァニア領の最南端にある町で、ノースラインから北の山を超えた所にあるの」
「モレクか、懐かしいな。そのメイドに聞けば分かるのかい?」
「そうね、彼女の父親がかつて鬼人討伐の部隊に参加したって聞いた事があるわ。何かしらの手がかりは聞けると思うわよ」
「なるほどな、次の目的地はその町か。魔都に入るのは初めてだ」
シュエンが納得して頷く。
そして、その後の話に移る。
「鬼人の封印を解いた後の事は考えてますの?」
「そうね、ワタシ達は相当強くなった。その勢いでシルヴァニア城を落として、国を乗っ取るのも悪くないわね」
「では、この屋敷ももう用無しですわね。メイド達に売りに出して、その金を分配するよう伝えておきますわ。彼女達の退職金としては十分過ぎますわね」
サランの決断は早い。
「退職金で思い出したけど、魔都で人族の通貨は使えないだろ?」
「あぁそうね、何かに変えて向こうで売るのが良いかもね。宝石ならどこに行っても高値で売れるわ」
「じゃあ、各自手持ちの金を宝石に変えておくとしよう。荷物も減るしな」
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