- Mix blood -

久悟

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第四章 魔人の過去編

龍国散策

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 魔都と同じね。
 上に立つ王が愚かだと、国が傾き、民が苦しむ。どこも同じ構図だわ。

「なるほどね、魔都シルヴァニアも暗君リリスのせいで傾いたわ。ワタシもリリスに個人的な恨みを持ってる。アレを殺そうと思ってるの。ねぇアナタ達、まずは皆で鬼国を落とさない? 他種族の戦闘法を取り入れると戦闘能力が跳ね上がるわ。ワタシ達が指南してあげる」
「なるほどのぉ。確かに皆の戦力を上げるのが先決じゃのぉ」

 ベンケイが重々しく頷き、皆が賛成した。
 まずは、ワタシ達が習得した戦闘法がどんなものなのか、実演を交えてベンケイに見せることにした。記憶の共有も便利だけれど、百聞は一見にしかずよ。

「なっ! なんじゃこれは!」

 脳裏に流れてくる奔流に、ベンケイが目を丸くする。

「心配しないで。ワタシの能力よ。これが『錬気術』、これが『仙術』。そしてこっちが魔族の魔法よ」

 一通りの説明を聞いたベンケイは、顎髭を撫でながら考え込んだ。

「……なるほどのぉ。錬気術と言うのは気力を体内で練り上げ、変質させるものじゃな? おそらくじゃが、その練気という物を、ワシらが使う『闘気』にそのまま変えるのは難しそうじゃな……」
「そうか。確かに気力を変質させる点では同じだが、根本的な質が違う。俺達も練気を更に変質させろと言われれば難しいな」

 シュエンが同意する。

「だが、自然の力を闘気に組み込むのは効果が上がりそうじゃ。後は闘気の圧縮解放か。このために錬気術を習得する意味は大いにありそうじゃのぉ」
 
「ところで、鬼族に回復術はあるの?」
「うむ、自身の患部に闘気を集めると治癒の効果がある。他人に闘気を注いで治す事も出来る。それを『加療』と言う」
「ホント、闘気って万能なのね……」
 
 方針は決まった。
 まずは仙術の習得を第一にする。
 すべての基本である魔法を習得し、各属性の魔力を扱える様になる事で自然エネルギーを知り、取り入れる感覚を養う。
 
 自然エネルギーを自由に扱えるようになれば、錬気術の習得へのハードルは下がる。
 更に修練し、練気で空を駆けることが出来れば、空中戦で相手を翻弄出来るだろう。その身体操作の感覚は、必ず闘気の扱いにも寄与するはずだわ。

「最終目標は、練気を使って空を駆ける事よ。ワタシ達もそれで大幅に戦闘能力が上がったわ。アナタ達の闘気にも必ずいい影響を与えるはずよ」
「オラ、絶対強くなってイバラキを殺す。皆、頑張ろう!」
『オォ――!』

 テンの掛け声に、鬼族たちが呼応する。いい士気だわ。

 早速、集落全体での修練が開始された。
 鬼族の戦闘には、属性という概念は無い。まずは魔法の習得、属性を知ることからスタートだ。
 
 彼らは優秀だった。魔法の習得が出来た者は、次々と仙術の習得に移行していく。
 二ヶ月程で、集落の戦士の殆どが仙術と錬気術の基礎を習得してしまった。

「さすが、皆優秀な戦士ね。覚えが早いわ」
「次の段階は俺が指導する」

 シュエンが前に出る。

「で、やはり練気を闘気に変えるのは無理か?」
「あぁ、無理じゃな。ワシらにとっては使い慣れた闘気で戦った方が良い。ただ、練気は浮遊の術などに使うのに適しておる。闘気も気力の節約になるが、燃費の良さでは錬気には劣るのぉ。闘気の圧縮にも練気の理論が応用できそうじゃ」

「そうか、分かった。よし、では次は練気を使って空を駆けて貰う。これが出来れば身体操作の精度が跳ね上がる。闘気の精度も必ず良くなるはずだ。ただ、難易度は高い。半年を目処にしようか。出来なくても、挑戦する過程で必ず成長はする」
「後は皆の努力次第ね。シュエンちゃんがいれば、ワタシ達が教える事はもう無さそうだわ」

  
 次の日から最終段階に入った。
 皆が空を駆ける訓練に悪戦苦闘しているのを見届け、ワタシはアレクサンドに提案した。
 
「ねぇ、皆が頑張っている間に、龍族が放棄した土地に行ってみない?」
「そうだね、宝玉同士が近付くと淡く光る事が分かったからな。埋めたとなると見つけるのは難しいかもしれないが、行ってみる価値はある」

 シュエンとサランに指導を任せ、ワタシとアレクサンドは南下して、かつての龍族の国へ『すい』の宝玉を探しに出かけることにした。

「ワタシ達も鍛錬ついでに、楽な浮遊術じゃなくて空を駆けて行かない?」
「そうだな、時間はあるからね。そうしよう」

 
 ◆◆◆

 
 村を出て十日。ワタシ達はそれらしき場所に到着した。
 荒涼とした大地に、かつての文明の痕跡が残っている。

「アレクサンド、アナタここに来たことあるんでしょ?」
「あぁ、千年も前の話だけどね。あまり覚えてない上に、こうも変わってしまっているとね……」

 龍族の島の建物は全て木造だったらしい。
 所々に風化した木材が散乱し、土に還りかけている。ここで間違いは無いはずだ。

「これは本当に骨が折れるわね」
「あぁ、来るんじゃなかったよ……」

 二つの宝玉はアレクサンドが管理していたけど、二つを外に出すと互いに干渉して光ってしまうため、片方の『』の宝玉はサランに預けてきた。手元には『あか』がある。

「さて、この紅の宝玉が淡く光れば、その辺に翠の宝玉があるって事だね」
「えぇ、地道に歩き回りましょうか」

 国と言うからにはかなり広い。
 瓦礫を越え、草をかき分け、隅から隅までどれくらい歩き回っただろう。
 結局、翠の宝玉は見つからなかった。

「十日は歩き回ったわね……」
「これだけ歩き回って反応が無いということは、そういう事だろうね」
「少し怒りが湧いてきてるわ……」
「少しで治まってるのは、思わぬ収穫があったお陰だな」

 徒労感に襲われる中、唯一の救いがあった。
 歩き回っている途中、朽ちかけた木箱の中から、所々錆びてはいるが刀を五本見つけた。
 アレクサンドが言うには、引越しの際に忘れた物だろうとの事だ。

「そうね、シュエンちゃんの刀を見てワタシも一本欲しいとは思ってたのよね。メインはデュランダルなのは変わらないけど、サブウェポンとして魅力的だわ」
「あぁ、ボクもだ。コイツをベンケイ爺さんに渡せば、見事に研ぎ直してくれるだろうね。ここまで古いと価値が分からないが、龍族が使っていた物なら、いい品である事を願おう」

 宝玉は見つからなかったけれど、たまたま見つけた刀を土産に、ワタシ達はまた十日間の空中散歩で戻ることにした。
 いい運動にはなったわね。
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