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第五章 四種族対立編
マイ箸
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夜にはオーベルジュ城に戻り、龍族の幹部とジュリア、そして父さんと母さんを交えて食事をとった。
豪華な晩餐だ。皆、ぎこちなかったナイフとフォークの扱いにも、ここ数日でだいぶ慣れてきたようだ。
ただ一人、ヤンさんだけは例外だった。
ヤンさんは懐からマイ箸を取り出し、器用に肉をつまんでいる。どうやらこの国の食器は、彼の性分には合わないらしい。その姿が妙に親しみやすくて、オレはつい口元を緩めた。
食事が終わり、香ばしいコーヒーや芳醇な香りの紅茶が運ばれてくる。
カップを置く音が静かに響く中、里長が口を開いた。
「仙王とは話したが、儂らがここにおる意味は無くなった。そろそろ里に帰ろうと思うが、明日はそれぞれゆっくりと過ごし、明後日の朝にここを立とうと思う。皆それで良いか?」
その言葉に、全員がこくりと頷いた。
「父上、俺もソフィアと帰りたいと思います。結婚してから一度も二人で帰っていないので」
「えぇ、ご一緒させてもらっても良いですか?」
父さんと母さんが里長を見る。
「当然だ。お主の屋敷は定期的に掃除しておるし、ユーゴも使っておったしの。では明後日の朝に皆でここを立つ、準備しておくように。シャオウ、騎士団の宿舎に世話になっておる兵たちにも伝えておいてくれるか?」
「へい、任せてつかぁさいや」
シャオウさんが胸を叩いて返事をする。
両親共にリーベン島に帰る事が決まった。これで一安心だ。
「オレたちはどうする?」
オレが問いかけると、ジュリアが目を輝かせた。
「アタシも行ってみたいな。龍族の料理、美味いんだよなぁ!」
「じゃ、私達も帰ろっか!」
「僕も久しぶりだな。そうしよう」
トーマスとエミリーも賛成だ。
里長達は相当久しぶりに里から出たようだ。レトルコメルスでも何泊かして、観光がてら帰ろうということになった。オレもエマの店の状況を見たいし、ちょうどいい。
ゆっくりとコーヒーを味わい、ダイニングルームを出る。
廊下を歩いていると、後ろから声をかけられた。
「ユーゴ、ちょっと」
「ん? どうした母さん?」
「明日の夜、父さんと三人で食事でもしない?」
「あぁ、いいね。じゃあ店選びは任せてくれ。どこでもいいよな?」
「うん、任せたわね」
家族三人で食事か。
ふと、胸が熱くなる。そうだ、これからはいつでも出来るんだ。
夢でも幻でもない、本物の家族の時間。
今日は精神的にもかなり疲れた。湯船に浸かるのも面倒だ、シャワーで済ませよう。
自室のベッドに入り目を瞑ると、すぐに深い眠りに落ちていった。
◇◇◇
翌朝。
窓から差し込む柔らかな陽の光で目を覚ました。夢も見ない程ぐっすりと眠れたのは、いつぶりだろう。
自分の中に、もう一つの意識がない。母さんはオレの中ではなく、外にいる。そして父さんも戻ってきた。
最高の目覚めだ。
身支度を整えて食堂へ向かう。
「あ、リナさんおはよう」
「おはようございます、ユーゴ様!」
給仕のリナさんは朝から満開の笑顔だ。彼女の笑顔は、一日の始まりをいい気分にしてくれる。
食堂にはメイファさんと娘さんが、優雅に紅茶を飲んでいた。皆、朝はゆっくりしているらしい。二人に挨拶をして、少し離れた席に着いた。
「いつもありがとね。頂きます」
「はい、ごゆっくりどうぞ」
運ばれてきたのは、厚切りトーストとふわふわのスクランブルエッグ、それにカリカリに焼かれたベーコン。オレが一番好きな朝食コンボだ。
香ばしい小麦とベーコンの脂の匂いが食欲をそそる。もちろん、里の卵かけご飯と味噌汁には敵わないが、これはこれで格別だ。
食べ終わると、リナさんがタイミングよく食後の紅茶を持ってきてくれた。
「ありがとう。オレたち、明日から当分ここを出るよ」
「そうですか……寂しくなりますね」
リナさんが少し眉を下げて残念がる。
「オレの父さんと母さんが帰ってきたんだ。母さんなんて十五年振りに会ったよ。だから今日、久しぶりに家族三人で食事に行くんだ」
「十五年振りですか……! それは楽しみですね! 両親かぁ……私も会ってないですね……」
「リナさんが帰省する時の護衛はオレが請け負うよ。狩猟者としてじゃなく、友達としてね。また言ってよ」
「ええっ、ユーゴ様ほどの狩猟者にお願いするって……そんなお金無いですよ……」
リナさんが慌てて手を振る。
その時、紅茶を飲み終えたメイファさんたちが立ち上がり、こちらの席を通った。
「ごちそうさま、美味かったよ。随分と仲がいいな、ユーゴの彼女か?」
「えぇっ!? かっ……かっ……彼女だなんてっ! ユッ……ユーゴ様に失礼です!」
リナさんは顔を真っ赤にして、首がもげるほどの勢いで否定している。
そこまで全力で拒否されると、少しヘコむな……。
「こんな可愛い子が彼女だったらいいんですけどねぇ……ハハッ」
「かっ……可愛いだなんてユーゴ様ったら!」
バシンッ!
手で顔を覆ったリナさんに、強烈な平手打ちを背中に食らった。
「あっ……失礼しました……」
「い、いえ、いいよいいよ……!」
背中の痛みをさすりながら、オレは苦笑した。平和な朝だ。
豪華な晩餐だ。皆、ぎこちなかったナイフとフォークの扱いにも、ここ数日でだいぶ慣れてきたようだ。
ただ一人、ヤンさんだけは例外だった。
ヤンさんは懐からマイ箸を取り出し、器用に肉をつまんでいる。どうやらこの国の食器は、彼の性分には合わないらしい。その姿が妙に親しみやすくて、オレはつい口元を緩めた。
食事が終わり、香ばしいコーヒーや芳醇な香りの紅茶が運ばれてくる。
カップを置く音が静かに響く中、里長が口を開いた。
「仙王とは話したが、儂らがここにおる意味は無くなった。そろそろ里に帰ろうと思うが、明日はそれぞれゆっくりと過ごし、明後日の朝にここを立とうと思う。皆それで良いか?」
その言葉に、全員がこくりと頷いた。
「父上、俺もソフィアと帰りたいと思います。結婚してから一度も二人で帰っていないので」
「えぇ、ご一緒させてもらっても良いですか?」
父さんと母さんが里長を見る。
「当然だ。お主の屋敷は定期的に掃除しておるし、ユーゴも使っておったしの。では明後日の朝に皆でここを立つ、準備しておくように。シャオウ、騎士団の宿舎に世話になっておる兵たちにも伝えておいてくれるか?」
「へい、任せてつかぁさいや」
シャオウさんが胸を叩いて返事をする。
両親共にリーベン島に帰る事が決まった。これで一安心だ。
「オレたちはどうする?」
オレが問いかけると、ジュリアが目を輝かせた。
「アタシも行ってみたいな。龍族の料理、美味いんだよなぁ!」
「じゃ、私達も帰ろっか!」
「僕も久しぶりだな。そうしよう」
トーマスとエミリーも賛成だ。
里長達は相当久しぶりに里から出たようだ。レトルコメルスでも何泊かして、観光がてら帰ろうということになった。オレもエマの店の状況を見たいし、ちょうどいい。
ゆっくりとコーヒーを味わい、ダイニングルームを出る。
廊下を歩いていると、後ろから声をかけられた。
「ユーゴ、ちょっと」
「ん? どうした母さん?」
「明日の夜、父さんと三人で食事でもしない?」
「あぁ、いいね。じゃあ店選びは任せてくれ。どこでもいいよな?」
「うん、任せたわね」
家族三人で食事か。
ふと、胸が熱くなる。そうだ、これからはいつでも出来るんだ。
夢でも幻でもない、本物の家族の時間。
今日は精神的にもかなり疲れた。湯船に浸かるのも面倒だ、シャワーで済ませよう。
自室のベッドに入り目を瞑ると、すぐに深い眠りに落ちていった。
◇◇◇
翌朝。
窓から差し込む柔らかな陽の光で目を覚ました。夢も見ない程ぐっすりと眠れたのは、いつぶりだろう。
自分の中に、もう一つの意識がない。母さんはオレの中ではなく、外にいる。そして父さんも戻ってきた。
最高の目覚めだ。
身支度を整えて食堂へ向かう。
「あ、リナさんおはよう」
「おはようございます、ユーゴ様!」
給仕のリナさんは朝から満開の笑顔だ。彼女の笑顔は、一日の始まりをいい気分にしてくれる。
食堂にはメイファさんと娘さんが、優雅に紅茶を飲んでいた。皆、朝はゆっくりしているらしい。二人に挨拶をして、少し離れた席に着いた。
「いつもありがとね。頂きます」
「はい、ごゆっくりどうぞ」
運ばれてきたのは、厚切りトーストとふわふわのスクランブルエッグ、それにカリカリに焼かれたベーコン。オレが一番好きな朝食コンボだ。
香ばしい小麦とベーコンの脂の匂いが食欲をそそる。もちろん、里の卵かけご飯と味噌汁には敵わないが、これはこれで格別だ。
食べ終わると、リナさんがタイミングよく食後の紅茶を持ってきてくれた。
「ありがとう。オレたち、明日から当分ここを出るよ」
「そうですか……寂しくなりますね」
リナさんが少し眉を下げて残念がる。
「オレの父さんと母さんが帰ってきたんだ。母さんなんて十五年振りに会ったよ。だから今日、久しぶりに家族三人で食事に行くんだ」
「十五年振りですか……! それは楽しみですね! 両親かぁ……私も会ってないですね……」
「リナさんが帰省する時の護衛はオレが請け負うよ。狩猟者としてじゃなく、友達としてね。また言ってよ」
「ええっ、ユーゴ様ほどの狩猟者にお願いするって……そんなお金無いですよ……」
リナさんが慌てて手を振る。
その時、紅茶を飲み終えたメイファさんたちが立ち上がり、こちらの席を通った。
「ごちそうさま、美味かったよ。随分と仲がいいな、ユーゴの彼女か?」
「えぇっ!? かっ……かっ……彼女だなんてっ! ユッ……ユーゴ様に失礼です!」
リナさんは顔を真っ赤にして、首がもげるほどの勢いで否定している。
そこまで全力で拒否されると、少しヘコむな……。
「こんな可愛い子が彼女だったらいいんですけどねぇ……ハハッ」
「かっ……可愛いだなんてユーゴ様ったら!」
バシンッ!
手で顔を覆ったリナさんに、強烈な平手打ちを背中に食らった。
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背中の痛みをさすりながら、オレは苦笑した。平和な朝だ。
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