- Mix blood -

久悟

文字の大きさ
195 / 260
第五章 四種族対立編

家族団欒

しおりを挟む
 
 その後は部屋でゆっくりと過ごし、夕暮れ時に城の門前で待ち合わせた。

「おまたせユーゴ!」

 そこには、綺麗にドレスアップした母さんと、いつも通り地味な服を着た父さんが並んでいた。
 母さんはクリーム色のワンピースに身を包み、髪も綺麗に結い上げている。一方父さんは、着慣れたシルクのシャツとズボンだ。

 こんな日が来るなんてな。感慨深いな。

「どう? 似合う? 父さんと一緒に選んだの」
「うん、よく似合ってるよ。でもこれ、ほぼ母さんが選んだんだろ?」
「あら、よく分かってるわね。父さんほんと服に無頓着なのよね」
「俺には分からん。動きやすい絹のシャツが一番良いからな」

 父さんが困ったように頭をかく。
 母さんは、母親と言うよりは年の離れた姉の様だ。見た目は今のオレより少し年上くらいにしか見えない。

「さぁ、行こうか。オレたちがいつも行く大衆酒場だけど、味は保証するよ」
「そう、楽しみね!」

 南門に向けて三人で歩き出す。
 記憶にある最後のハイキングの時は、オレを真ん中にして手を繋いで歩いていた。
 でも今日は、母さんを真ん中にして並んで歩いている。ふと横を見ると、オレの目線が一番高いことに気づく。いつの間にか、父さんの背も追い越していたんだ。
 両親から見たら、オレはしっかり成長して見えているんだろうか。二人の横顔を眺めながら、石畳を踏みしめる。

「着いた、ここだよ」
「あら、冒険野郎。懐かしい名前ね」
「知ってるのか?」
「あぁ、俺たちも良く行ってたな。ここのチェーンは他の町にもあったからな。懐かしい、良い店を選んでくれた」

 活気あふれる店内に入り、三人ともとりあえずビールを注文した。料理のチョイスは「息子のオススメで」と任された。

 運ばれてきた黄金色の液体が入ったジョッキを掲げる。

「あんなに小さかったユーゴとお酒を飲めるとはね」
「あぁ……あの魔神が解放されたと言う事実はあるが、今日くらいは楽しんでも罰は当たらないだろう。マモンやアレクは、案外あの魔神を上手く扱う気もするしな」
「えぇ。シュエン……本当に、苦労かけたわね……」

 母さんの声が湿っぽくなる。
 いけない、今日はそういう会じゃない。

「はいはい! そんな空気じゃ酒が不味くなるって!」
「あぁ、そうだな。すまん」
「じゃあ、再会と未来に乾杯!」
「「乾杯!」」

 ジョッキがぶつかる軽快な音が響く。
 喉を通り過ぎるビールが最高に美味い。
 そういえば、父さんが酒を飲んでいる姿を見るのは初めてかもしれない。オレの中に魔神を封じていたから、気を緩めるわけにはいかなかったのだろう。
 目の下に常に張り付いていた濃いクマも、すっかり消えている。本当に良かった。

「ん! このソーセージ、パリッとしてて美味しい!」
「あぁ、本場のベールブルグの物には敵わないが、ここのも十分美味いな」
「へぇ……あぁ、そうか。二人とも王国内を旅してたんだもんな。オレも行ったことない所ばっかだなぁ」

 二人には二人の冒険があったんだ。

「明日から向かうのはレトルコメルスでしょ?」
「あぁ、そうだな。何泊かしようって話だったな」
「良かったね、ユーゴ」

 母さんがニヤリと笑う。

「良かった? 何が?」
「何がって、エマちゃんに会えるじゃない」

 ドキリとした。
 あっ……そうか、母さんオレの中にいたから全部知ってるんだ……!
 エマへの感情も、あの時のやり取りも、全部筒抜けだったのか。

「おい! 趣味悪いぞ母さん!」
「フフフッ、あなた結構モテるのよね」
「おいおい、エマって誰だ?」

 父さんが興味津々といった様子で身を乗り出す。

「ユーゴの良い子よ。また紹介してもらいましょ」
「ほほう、それは楽しみだ」
「まだ紹介する様な間柄じゃねーよ……勘弁してくれ……」

 顔が熱いのは酔いのせいだけじゃないだろう。
 でも、あのハイキング以来の家族団欒だ。明るい母さんのお陰で、いつも笑いが絶えない家庭だったのを思い出した。
 これからは、いつでもこんな時間を過ごせるんだ。

 一通り料理を楽しんだ後、オレは切り出した。

「そうだ。父さん、『春雪しゅんせつ』はどうする? 元々、母さんが使ってた刀だろ?」
「でも、あなた今二刀流じゃない」
「ユーゴ、二刀流なのか?」
「あぁ、里長から、リンドウさんが打った刀を貰ったんだ。これだよ」

 オレは異空間から取り出した『龍胆りんどう』を、鞘ごと父さんに渡した。
 ずしりとした重みを受け取り、父さんが少しだけ鯉口を切る。

「これがリンドウ兄さんの……? おいおい、とんでもない物貰ったんだな……」

 父さんも流石に驚いたようだ。伝説の刀匠が打った刀だ。

「メインはこの龍胆を使ってるから、もう一本ヤンさんから買おうかなと思ってる。父さんの置き手紙の通り、春雪はオレと里を繋いでくれた。母さんが帰ってきたなら、この刀は母さんが使うべきだ」
「そう? じゃあ、預かるわね」

 オレは春雪を母さんに手渡した。
 刀が本来の持ち主の元へ戻る。春雪自身も喜んでいるように見えた。

 店を出ると、夜風が心地よかった。

「ふぅ……いっぱい食べたわね……ユーゴ、今から父さんとデート行ってくるわね!」

 母さんが父さんの腕にギュッと抱きつく。

「あぁ、十五年振りだもんな。ゆっくり楽しんできてよ」

 冒険野郎の前で二人と別れた。
 二人は腕を組んで、繁華街の路地へと消えていく。その後ろ姿は、どこにでもいる仲睦まじい夫婦そのものだった。

 楽しかった。
 仲間たちと飲むのとはまた違う、家族ならではの安らぎがあった。

 さぁ、城に帰ろう。
 部屋に戻り、シャワーを浴びてベッドに横たわる。
 天井を見上げながら、今日一日の心地よい余韻を噛みしめる。
 本当に、いい一日だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

マンションのオーナーは十六歳の不思議な青年 〜マンションの特別室は何故か女性で埋まってしまう〜

美鈴
ファンタジー
ホットランキング上位ありがとうございます😊  ストーカーの被害に遭うアイドル歌羽根天音。彼女は警察に真っ先に相談する事にしたのだが…結果を言えば解決には至っていない。途方にくれる天音。久しぶりに会った親友の美樹子に「──なんかあった?」と、聞かれてその件を伝える事に…。すると彼女から「なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」と、そんな言葉とともに彼女は誰かに電話を掛け始め… ※カクヨム様にも投稿しています ※イラストはAIイラストを使用しています

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

エレンディア王国記

火燈スズ
ファンタジー
不慮の事故で命を落とした小学校教師・大河は、 「選ばれた魂」として、奇妙な小部屋で目を覚ます。 導かれるように辿り着いたのは、 魔法と貴族が支配する、どこか現実とは異なる世界。 王家の十八男として生まれ、誰からも期待されず辺境送り―― だが、彼は諦めない。かつての教え子たちに向けて語った言葉を胸に。 「なんとかなるさ。生きてればな」 手にしたのは、心を視る目と、なかなか花開かぬ“器”。 教師として、王子として、そして何者かとして。 これは、“教える者”が世界を変えていく物語。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
 女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!  HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。  跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。 「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」  最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

助けた騎士団になつかれました。

藤 実花
恋愛
冥府を支配する国、アルハガウンの王女シルベーヌは、地上の大国ラシュカとの約束で王の妃になるためにやって来た。 しかし、シルベーヌを見た王は、彼女を『醜女』と呼び、結婚を保留して古い離宮へ行けと言う。 一方ある事情を抱えたシルベーヌは、鮮やかで美しい地上に残りたいと思う願いのため、異議を唱えず離宮へと旅立つが……。 ☆本編完結しました。ありがとうございました!☆ 番外編①~2020.03.11 終了

処理中です...