- Mix blood -

久悟

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第五章 四種族対立編

三人の連携

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 まどろみの中、陽の光と共に、香ばしいベーコンが焼ける匂いが鼻をくすぐった。

「おはよう、ユーゴ君!」
「あぁ、よく寝た……おはよう」

 キッチンから、エプロン姿のエマが振り返る。その姿を見るだけで、胸がいっぱいになる。

「ベーコンとスクランブルエッグ好きだったよね? トーストも焼いたから、温かいうちに食べてね」
「うん、大好物だ。ありがとう」

 テーブルには完璧な朝食が並んでいた。
 トーストの上にスクランブルエッグとカリカリのベーコンを全部乗せ、豪快にかぶりつく。口いっぱいに広がる塩気と卵の甘み。最高だ。

「ユーゴ君ってば、口にスクランブルエッグ付いてるよ」

 そう言ってエマは、オレの口元に手を伸ばし、指先で優しく取ってくれた。
 そして悪戯っぽく微笑む。

 ん~可愛い……幸せすぎる。

 このまま流されるのも悪くないが、今しかないと思った。

「なぁエマ。ずっと言いたかった事、言っていい?」
「え、何……? 改まって。怖いんだけど……」

 エマが少し身構える。
 オレは居住まいを正し、彼女の瞳を真っ直ぐに見つめた。

「オレの彼女になってください!」

 エマが目を丸くする。

「えー、私ずーっとそのつもりだったんだけど!」
「オレもそうだ。でも、言葉ではっきりと伝えた事なかったからな……どう?」
「もちろんです。お願いします」

 エマが照れくさそうに頷く。
 愛おしさが込み上げ、オレは彼女を抱き寄せると、その唇に軽くキスをした。

「……ん」

 離れると、エマの白い頬にケチャップの赤い染みができていた。

「もう! フフッ、でもこれで正式にユーゴ君の彼女だね」
「あぁ。いい男が店に来たって、浮気するなよ?」
「こっちのセリフ!」

 朝食を食べ終え、エマは鏡の前で軽くメイクを直す。

「ほっぺにケチャップ付いてたんだけど! 言ってよ!」
「気付いたか。そのまま外に出るかなと思って、楽しみにしてたんだけどな」
「女の子は依頼受けるにもお洒落するの! もう!」

 エマは鏡越しにべーッと舌を出した。
 ん~、やっぱり可愛い……。

 マンションの外に出ると、ちょうどロンが歩いてくるのが見えた。

「あ、ロン君! おはよう!」
「あ、ユーゴさん、エマさん、おはよう!」

 ロンが爽やかに手を振る。

「おはよう。しっかり起きれたな。朝には強くなったか?」
「うん、たまに寝過ごすけどね……今日はバッチリだよ!」
「まぁ少し成長だな、頑張れ」

 オレたちは談笑しながら、狩猟者協同組合ハンターギルドへと向かった。

 ギルドの前には、既に皆が待っていた。

「おはよう、待たせた?」
「いや、さっき来たところだよ。早速行こうか」

 トーマスが答える。
 皆、準備は万端のようだ。

「みんな練気の扱いがだいぶ上手くなったし、属性魔力もかなり理解した。これなら『浮遊術』も出来ると思うんだよな。どうする?」
「えっ、空飛ぶやつ!? やりたい!」
「じゃあ、少し練習しようか。まだ朝だしね」

 エマたちが目を輝かせる。
 いつもは簡単な弁当を買っていくが、どうせなら現地調達といこう。

「昼は魔物を調理して食べないか? スレイプニルも美味いし、ウサギは食べた事ないけど、昨日わりと高く売れたからな」
「いいね、アルミラージの肉は高級食材だよ。臭みも少なくて柔らかいんだ」
「賛成! 食べてみたい!」

 昼食のメニューは決まった。
 ユーゴの空間魔法には大量の調味料が眠っている。トーマスと一緒に腕を振るおう。

 門を出て少し走り、森の手前の開けた場所で足を止めた。
 ここなら邪魔も入らないだろう。

「さて、三人にはこれから自然エネルギーを感じてもらう。まずは浮遊術だな。先生はジュリアだ」
「任せな!」

 ジュリアが三人の前に進み出ると、フワリと宙に浮いて見せた。

「浮遊術を基礎に、自然エネルギーを扱う術を総称して『仙術』と言う。始祖四種族の仙族の術だ。簡単に言えば、呼吸で自然エネルギーを体に取り込み、気力に混ぜて扱うんだ。お前らは昨日、各属性を理解したよな? 今日はまず、一番身近な風のエネルギーを取り込んでもらう。深呼吸してみろ」

 言われて三人娘は両手を広げ、大きく息を吸い込んだ。

「集中してみろ、肺の中に風魔力に似たものを感じないか? 大気の中にあるエネルギーだ」

 三人は目を閉じ、深呼吸を繰り返している。
 静かな風が森を吹き抜ける。

「あっ、これか! うん、分かります」

 最初に声を上げたのは、やはりニナだった。
 昨日は基本の遁術を放てる程に成長しただけあって、魔力感知のセンスが抜群だ。

 エマとジェニーは一度深呼吸をやめ、軽く風の生活魔法を放って風の魔力の感覚を再確認している。いい方法だ。
 再度深呼吸を繰り返し、ニナに少し遅れて理解したようだ。

「あぁ! これか!」
「うん、私も分かった! 身体の中を巡る感じ!」

「よし、鼻から吸って口から吐く。深呼吸を繰り返し、それを身体に取り込む。それを練気に混ぜて、浮力に変換してみろ」

 ジュリアの指示に従った、次の瞬間。

『ドォォォォン!!』

 恒例の肉弾打ち上げ花火が、盛大に三発打ち上がった。

「きゃぁぁぁぁぁぁ!!」

 三人は空中でバタバタと手足を動かし、大パニック。
 予想通りの展開に、オレとトーマス、ロンがそれぞれ飛び上がり、三人を受け止めた。オレの腕の中にはエマが収まる。

「キャハハッ! やっぱりこうなるんだな!」
「はぁ……ビックリした……死ぬかと思った……」

 エマが心臓を押さえて息を整える。

「混ぜる練気の量を間違えるとこうなる。最初は少しずつからで、まずは浮く感覚を掴んでみよう」

 オレが優しく下ろし、再トライを促す。
 今度は慎重に。
 まずはニナがふわりと少し浮きあがり、続いてエマ、ジェニーも浮き上がった。

「浮いたー! 見て見て!」
「理解が早いな。そこまで出来れば後は早い。移動しながら慣れてくれ」

 最初はフワフワと頼りなくノロノロと進んでいた三人は、すぐにコツを掴んでスピードに乗った。

「まさか私が空を飛べるようになるとはね……」
「ホント、強くなるって楽しいね!」
「二人とも、私を誘ってくれてありがとうございます!」

 空中で楽しそうに笑い合う三人。
 店の女の子全員強くしそうだな……武闘派クラブでも作りたいのだろうか……。

 依頼の『ロックリザード』棲息地付近まで来た。
 練気による浮遊術だ。オレたちの本気にはまだまだ遠いが、これだけでも移動速度は徒歩とは比べ物にならない。
 太陽はまだ低く、昼食にはまだ早い。

「よし、ササッとロックリザード倒してランクアップしようか!」

 着地し、周りを見回しながら少し歩く。
 岩場に巨大な影を見つけた。

「あんなに大っきいの……?」

 エマが息を呑む。

「あぁ、かなり大型だな。オレが見た中でもトップクラスのサイズだ。でも、ただデカくて硬いだけだ」

 盾役のジェニーを先頭に、エマ、ニナと続く。
 エマは刀を抜いた瞬間から練気を込め続けている。
 ……ん?

「おい……エマ、練気と一緒に風エネルギーを纏ってるな……」
「ほんとだ……僕達もした事ないよね」

 隣でトーマスも驚いている。
 それを見ていたジュリアが、ポツリと呟いた。

「おいおい、あれ『仙神剣術せんしんけんじゅつ』だぞ?」

 仙神剣術……?
 初めて聞く。後でジュリアにゆっくり聞こう。

 ニナは短く詠唱し、自分を含め全員に強化術を施した。各自強化術を覚えたけど、専門特化したニナの術が一番効果が高いし、持続時間も長い。

『グォォォォォォ!』

 ロックリザードがこちらに気付き、咆哮を上げた。
 だが、皆の準備は万端だ。

守護術しゅごじゅつ 堅牢けんろう!』

 ジェニーが前に出て守りを固め、ロックリザードの敵意を一身に集めた。防具を媒介にして上手く張れている。かなり良くなった。トーマス直伝の守護術だ。

治療術ちりょうじゅつ 継続再生!』

 ジェニーに緑色の光が纏わりつく。
 守護術で、ロックリザードの強烈な一撃を難なく受け止めている。そこにニナの継続再生が加わり、削られた体力も即座に回復する。
 全く危なげない鉄壁の盾だ。

「継続再生まで教えたのか」
「うん、ニナはかなりセンスいいよ。属性魔力の扱いが上手いんだ」

 エミリーが誇らしげに言う。

 その時、エマが動いた。
 迅速でかなりスピードアップしてはいるが、ロックリザードは危険を感じ取り、エマの方に敵意を向けた。
 クレバーな個体だ。

風遁ふうとん 風刃ふうじん!』

 その瞬間、ニナがジェニーの背後から風遁を放った。
 鋭い風の刃がロックリザードの首下、装甲の薄い部分にヒットする。
 痛みで奴の敵意は再びジェニーとニナに向かった。
 上手い。完璧なタイミングでのヘイトコントロールだ。

 その隙に、エマが死角から踏み込んだ。
 刀身に纏わせた風エネルギーと練気が唸りを上げる。

剣技けんぎ 斬罪ざんざい!』

 完全に意識の外からの一撃。
 風を孕んだ刃が、岩のような鱗を紙のように切り裂き、ロックリザードの首が宙を舞った。
 ドォンと、巨体が地に沈む。

「やったー!」
「Aランクだよ私達!」

 三人娘が抱き合って喜ぶ。

「いやぁ、見事だな。この連携ならSランクもすぐだな」

 オレは心から感心した。
 ゼロから一年足らずで、よくここまで成長出来たものだ。
 彼女たちの努力と、ロンの指導、そして才能が見事に噛み合った結果だろう。
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