- Mix blood -

久悟

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第五章 四種族対立編

世界の化物

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「もちろん、ルシフェルは知らないでしょうけど、ここからはワタシ達の話ね。ルシフェルは天界のゲートを通り、リーベン島に降り立ったと言ったわよね。あの島には何かがあると見ていいわ」

 ワタシは思考を巡らせる。
 シュエンの話では、リーベン島にはとてつもない化物が封印されていた。龍王達の手で封印されていたその「ヤマタノオロチ」の封印が解けた後に、シュエンはそれを退治した。その後、ルシフェルが憑依していた少女ソフィアと出会っている。
 タイミングはバッチリね。

「そのゲートは、化物が封印されていた場所と繋がってたって事ね。ゲートの番人だったのかもしれないわ」

 シュエンの名前を聞いて、ルシフェルはようやくポテトチップスを取る手を止めた。

「……あの黒髪のクソ野郎か。オレ様はあいつだけは許さねぇ」
「考えてみなさいよ。子供から得体の知れないナニカが出てきたら、どうにかしようとするでしょ。逆恨みもいいところよ」
「まぁ……そうだが……」
「シュエンちゃんは優秀だったのよ。向こうに帰っちゃったじゃない」
「チッ……魔力障害で暴れて野垂れ死んでりゃいいんだがな」

 憎まれ口を叩くルシフェルを見て、ふと確認したいことを思い出した。

「そうそう、アレクサンド。王都で会った時、ユーゴとアナタの娘が『父さんは治せる』って言ってたの覚えてる?」
「あぁ、確かに言ってたな」
「ねぇサラン、医療の知識があるアナタに聞きたいんだけど、魔力障害を治せる程の術ってこの世にあるの?」
「いいえ、見当もつきませんわ。脳と精神の不可逆的な破壊ですもの。そんな事が出来たら、わたくしがとっくに治して差し上げてますわよ」

 それもそうだわ。サランでさえ匙を投げる難病。
 となると、アレクサンドの娘はおそらく回復術師、しかも常識外れの腕を持っていると見ていいわね。血は争えないということかしら。
 
「話を戻そう。シュエンはその化物の革鎧を身につけていたが、あれはSSランクレベルの魔物の素材じゃない。もっと上だ」

 アレクサンドが地図を指差す。

「ねぇ、他にそんなレベルの魔物いるの?」
「あぁ、パラメオント山脈には『ニーズヘッグ』という個体種がいる。あれは王都のギルドではSSSトリプルエスランク指定されていたよ」

 ……SSS。確かに化物ね。
 
 それなら、と三兄弟が口を開いた。

「魔都の一番東の山は、おそらく金山だろうと言われているねぇ。山裾の川でも砂金が取れるからねぇ」
「あぁ、その山には『ファーヴニル』と呼ばれるドラゴンが住み着いているが、あれも固体種だろう。一体しか確認していないし、繁殖するようなものでは無いと見ている。リリスの指示で何度か軍を討伐に向かわせたが、結果は全滅だ。あのドラゴンのせいで採掘も出来ない。こっちから手を出さない限りは、山から動く事もないがな」

 なるほど……リリスの指示で軍の壊滅を繰り返してるのね。貴重な戦力をドブに捨てるようなものだわ。そりゃ国も傾くはずよ。

「鬼国にもおったのぉ。山脈の名前……何じゃったかのぉ?」

 ベンケイが記憶を探る。

「エルドワース山脈ね」
「そう、その山脈に連なる山に『ヤトノカミ』と呼ばれる大蛇がおったのぉ。誰も手を出した事がない、触らぬ神じゃな」

「地図に印をつけてみよう。分かるだけでも四箇所か」

 アレクサンドが地図に印を付けてテーブルに広げた。
 ルシフェルが身を乗り出し、油のついた指で地図をなぞる。

「へぇ、こりゃ興味深いな。四つの位置関係が、天界のゲートの位置に似てるぞ」

 四方を守るように配置されている。

「ビンゴだね。かなり強力な魔物が天界へのゲートを守ってるって事だ。龍王はおそらくそれを見抜いているね」

 一番近いのは、東の山にいる『ファーヴニル』だ。
 ついでに金山を解放できれば、大量の金で国を立て直す資金源にもなる。一石二鳥ね。

「じゃあ、ファーヴニルってのを倒しに行く? ついでに大量の金で国を富ませてあげるわよ」
「SSSの魔物か、腕が鳴るよ」
 
 方針は決まった。
 明日は各自ゆっくり休養を取るよう伝え、食事会はお開きになった。

 ルシフェルを解放して、また面白そうな事が動き出した。楽しみだわ。

 
 ◇◇◇

 
 一日ゆっくりと過ごし、次の日の朝を迎えた。
 今日はファーヴニルの討伐に向かう。
 メンバーは、盾役のアレクサンド、回復サポートのサラン。そしてワタシ、ルシフェル、テンの三枚アタッカーという攻撃的な五人パーティだ。あまり大人数で行っても足手まといになるだけだ。
 討伐メンバーで、出立前のティータイムを過ごす。

「ねぇルシフェル、アナタの『魔術』ってのは闘気を使ってるわよね?」
「んぁ? トウキ? 何だそりゃ?」

 ルシフェルが首を傾げる。
 テンが立ち上がり、無造作に闘気を右手に纏い実演して見せた。空気が歪む。

「あぁ、そうだな。特に名前は知らねぇが方法は同じだ。それを属性魔力に混ぜ込んで放つのが『魔術』だ。簡単に言えばな。気力の変質とは言ってたが、面倒だしオレ様も闘気と呼ぶ事にするか」
 
「そういえば、テンの闘気には魔力が混ざってるって言ってたな。無意識だと」
「うん、無意識だな。混ぜる魔力量を増やせと言われても方法も分からねぇ」
「なるほどな。今のところ、意識的にそれを操作できるのはルシフェルだけというわけか」

 シュエンの守護術を突破し、瀕死のダメージを与える程の術だ。使いこなせれば強力な武器になる。

「で、アナタ剣は使うのよね? あの時、ワタシの剣を使ってトドメをさそうとしたくらいだから」
「あぁ、剣は使う。でも、眼の力を失ってオレ様の異空間は開かないからな。また開いたとしても、その中にオレ様の剣がそのまま残ってるかは分からねぇ」
「じゃあ、あげるわね。好きな方を選びなさい」

 そう言って、ワタシは龍国で拾った残り一本のリンドウの刀と、サランの父親ラオンが使っていた一級品の剣を差し出し、選ばせた。

「ほぉ、見事な武器だな。悩ましい……オレ様の剣は両手剣だったが」

 ルシフェルは少し考え、リンドウの刀を手に取った。

「これは綺麗な剣だな。こっちにする」

 割と長めの刀だ。体格のいい彼には丁度いいかもしれない。

「刀よ。斬ることに特化した片刃の武器ね。持ち方は教えるわ」

 ワタシはシュエンから教わった持ち方を、見様見真似でルシフェルに伝授した。

「ほぉ、両手剣と通ずるものはあるな。違うのは形状と片刃ってだけか。道中の魔物を斬って慣らすとするか」
「剣には闘気を纏うのか?」
「あぁ、そうだな。身体に闘気を纏うことで防御もするし、身体能力をあげるのにも使う。基本だろ?」
「ほぼ鬼族の戦闘法だな……それプラス魔術って事か。反則じみてるね」

 アレクサンドが苦笑する。
 長々と話していても仕方ない、詳しい話は道中で出来る。距離でいえば一泊は必要だけど、夕方には麓に着くだろう。山に近い町に寄って一泊してから、万全の状態でファーヴニル討伐に向かう事で話は纏まった。
 
 各自準備を整え、ワタシ達はシルヴァニア城を出発した。
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