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第五章 四種族対立編
ファーヴニル討伐
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皆は普段と変わらず朝食を食べていた。いつも通り談笑しながら、食後の紅茶を優雅に楽しんでいる。
……ただ一人、ルシフェルを除いては。
彼の皿には、パンとスクランブルエッグ、そして山のようなハッシュポテトが積まれている。朝からどれだけポテトが好きなのかしら。呆れるのを通り越して感心するわ。
「皆、緊張はある?」
「緊張? する必要ないだろ。ボクが完璧に守るからね」
アレクサンドが鼻で笑う。頼もしいこと。
「いい自信ね。魔法を放つ魔物なら、ワタシが全部吸い尽くしてあげるわ」
ホテルを追加予約し、大きな荷物は部屋に置いたままにしておく。ファーヴニル山には昼前には着くだろうから、昼食の準備だけをして出発した。
目的地に向け、皆無言で飛ぶ。
予定通り、太陽が頂点に達する前には目的地に到着した。
山の麓に降り立った時点で、肌が粟立つほどの途轍もない魔力を感じる。けど、禍々しさはない。純粋で強大な力、といった感じね。
「シュエンちゃんは、リーベン島の魔物は禍々しい魔力だったって言ってたわよね。封印されてたのが関係してるのかしら」
「怒りや怨念といったものが、魔力を変質させていたのかもしれませんわね……」
サランが緊張した面持ちで山頂を見上げる。
「よし、テメェら、サクッと倒して宴会しようじゃねーか!」
ルシフェルが剣を担いで吼える。
「身体強化は大丈夫? 行くわよ!」
目を瞑っていても位置が分かるほど強烈な魔力の発生源へ向かって、ワタシ達は一気に飛翔した。
いた。間違いなくあれが『ファーヴニル』だ。
燃えるような深紅の鱗に覆われた四足歩行のトカゲ。背中にはドラゴンの様な巨大な翼が生えている。体長はワタシの身長の二倍……いや、それ以上か。
こちらの姿を認めても、いきなり襲ってくる事はない。向こうもかなり警戒しているようね。知性を感じるわ。
「よし、皆ボクの後ろにね」
アレクサンドが前に出て、アズガルシス鋼の盾を構える。
『守護術 堅固な城壁』
ドッシリと構えたアレクサンドを前にしても、ファーヴニルは動かない。四足で地面に深く伏せ、力を溜めているように見える。相当慎重な魔物だわ。
睨み合いが続くかと思った、その時だった。
ファーヴニルの姿がブレた。
……え?
次の瞬間、巨体はアレクサンドの目の前にあり、凄まじい衝撃音が響いた。
「グァッ!!」
あのアレクサンドが、展開していた守護術ごとボールのように吹き飛ばされた。
一瞬で盾役を失い、パーティは無防備な状態で危険に晒された。
「皆! 防御よ!」
ワタシが叫び終わらないうちに、それぞれが反射的に守護術や闘気を纏った。
『仙術 途絶!』
ワタシとサランが同時に拘束術を放つ。
けど、捕らえられない。ファーヴニルは残像を残すほどの速さで躱し、一瞬でワタシの眼前に迫っていた。
巨大な顎が開かれる。喰われる──!
ガギィン!!
金属音が響き、牙が目前で止まった。吹き飛ばされたはずのアレクサンドが戻り、張り直した守護術で防いでいた。
一瞬の攻防に、皆が言葉を失っている。
「これは驚いた……コイツ相当だね……」
「助かったわ……えぇ……速すぎるわね……」
「すまない、ボクが突き飛ばされるとはね……気合いを入れるよ」
アレクサンドの顔つきが変わった。ヘラヘラした優男の仮面が剥がれ、歴戦の戦士の顔になっている。
ファーヴニルの敵意は、初撃を防ぎきったアレクサンドに一身に向けられている。
「サラン! アレクサンドのサポートに回って! 彼を死なせないで!」
「分かりましたわ!」
「ルシフェル! テン! とにかく攻撃するわよ! 止まってちゃ的になるだけよ!」
「おう!」
瞬間移動レベルの速さから繰り出される体当たりは、単純だけど質量と速度が乗ってとてつもない威力だ。
アレクサンドはその動きに合わせて盾を傾け、衝撃を逃しながら耐えている。サランの高精度な強化術がなければ、盾ごと腕を持っていかれていたかもしれないわね。
『風魔術 風魔召喚!』
ルシフェルが放つ強力な風の刃がファーヴニルを襲う。
直撃コースだ。皆がヒットしたと思った。
しかし……ヤツは掻き消えた。
「どこいった!?」
「おい! 上だ!」
テンの叫び声に上を向いた瞬間、視界が真っ赤に染まった。
災害級の火魔法が、空から降り注いでくる。
『魔力吸収!』
ワタシは両手を掲げた。
間に合った。降り注ぐ炎の奔流を、全て体内に吸い込む。熱い、重い。けど、許容範囲内だ。
『解放!』
吸収した魔力に、さらに自然エネルギーを上乗せし、極限まで圧縮して空にいるファーヴニルに向け解き放った。
ドォォォン!!
空中で爆発が起きる。だが、次の瞬間、ファーヴニルは既に地面に戻り、アレクサンドに爪を振るっていた。
「なっ……なんなんだコイツの速さは!」
「クッソ……魔眼さえあれば、こんなトカゲ……!」
ルシフェルが悔しげに吐き捨てる。
……本当に瞬間移動してるのかしら。物理的な速度の限界を超えているように見える。
サランの決死のサポートを受けながら、アレクサンドは必死の防御を続けている。ワタシ達三人も隙を見て攻撃を繰り出すが、残像を斬っているようで手応えがない。ようやく掠る程度で、致命傷には程遠い。
最初は分散していたファーヴニルの敵意は、今は完全にアレクサンドに固定されている。
「もうコイツの敵意はボクから逸れることはないよ! 背中を気にするな、存分に攻撃してくれ!」
「分かったわ!」
ただ、速すぎる。
こちらの攻撃動作を見てからでも回避が間に合うほどの反応速度だ。
……どうすれば当たる? 予測して動くしかない。
「ルシフェルはヤツの上から! テンはワタシの反対側に行って! ワタシが攻撃するから、避けた隙を狙って斬りかかって!」
「分かった!」
二人が散開するのを確認し、ワタシは強化術を最大出力で掛け直した。
練気で爆発的に加速する。
愛剣デュランダルに全神経を集中させ、渾身の一突きをお見舞いしてやる。
「鬱陶しいわね! いい加減止まりなさい!」
『剣技 刺突剣!』
ワタシの渾身の一突きは、回避行動を取ろうとしたファーヴニルの左肩辺りを深々と貫いた。
……え?
当たった?
さっき一瞬、ファーヴニルの動きが不自然に止まったような……?
「シャァァァァ――ッ!!」
痛みと驚愕で、ファーヴニルはパニックに陥った。動きが鈍る。
「今よ!!」
ワタシの号令より早く、上空と側面から二つの影が襲いかかった。
ルシフェルが脳天から右肩ごと腕を斬り落とし、テンが足元を薙いで右脚を切断する。
巨体が崩れ落ちる。
ワタシもこの好機を見逃さない。
『剣技 光創の一撃!』
肩に刺さったデュランダルを引き抜き、練気の光を纏わせた刃を真上から両手で振り降ろした。
ズンッ。
赤い鱗も強靭な筋肉も関係ない。胴体が真っ二つに分断された。
「……やったわね……」
「あぁ……強かったな……マジで……」
動かなくなったファーヴニルの前で、皆、糸が切れたようにその場へへたり込んだ。
間違いなく、今まで戦った中で最強の相手だったわ。
……ただ一人、ルシフェルを除いては。
彼の皿には、パンとスクランブルエッグ、そして山のようなハッシュポテトが積まれている。朝からどれだけポテトが好きなのかしら。呆れるのを通り越して感心するわ。
「皆、緊張はある?」
「緊張? する必要ないだろ。ボクが完璧に守るからね」
アレクサンドが鼻で笑う。頼もしいこと。
「いい自信ね。魔法を放つ魔物なら、ワタシが全部吸い尽くしてあげるわ」
ホテルを追加予約し、大きな荷物は部屋に置いたままにしておく。ファーヴニル山には昼前には着くだろうから、昼食の準備だけをして出発した。
目的地に向け、皆無言で飛ぶ。
予定通り、太陽が頂点に達する前には目的地に到着した。
山の麓に降り立った時点で、肌が粟立つほどの途轍もない魔力を感じる。けど、禍々しさはない。純粋で強大な力、といった感じね。
「シュエンちゃんは、リーベン島の魔物は禍々しい魔力だったって言ってたわよね。封印されてたのが関係してるのかしら」
「怒りや怨念といったものが、魔力を変質させていたのかもしれませんわね……」
サランが緊張した面持ちで山頂を見上げる。
「よし、テメェら、サクッと倒して宴会しようじゃねーか!」
ルシフェルが剣を担いで吼える。
「身体強化は大丈夫? 行くわよ!」
目を瞑っていても位置が分かるほど強烈な魔力の発生源へ向かって、ワタシ達は一気に飛翔した。
いた。間違いなくあれが『ファーヴニル』だ。
燃えるような深紅の鱗に覆われた四足歩行のトカゲ。背中にはドラゴンの様な巨大な翼が生えている。体長はワタシの身長の二倍……いや、それ以上か。
こちらの姿を認めても、いきなり襲ってくる事はない。向こうもかなり警戒しているようね。知性を感じるわ。
「よし、皆ボクの後ろにね」
アレクサンドが前に出て、アズガルシス鋼の盾を構える。
『守護術 堅固な城壁』
ドッシリと構えたアレクサンドを前にしても、ファーヴニルは動かない。四足で地面に深く伏せ、力を溜めているように見える。相当慎重な魔物だわ。
睨み合いが続くかと思った、その時だった。
ファーヴニルの姿がブレた。
……え?
次の瞬間、巨体はアレクサンドの目の前にあり、凄まじい衝撃音が響いた。
「グァッ!!」
あのアレクサンドが、展開していた守護術ごとボールのように吹き飛ばされた。
一瞬で盾役を失い、パーティは無防備な状態で危険に晒された。
「皆! 防御よ!」
ワタシが叫び終わらないうちに、それぞれが反射的に守護術や闘気を纏った。
『仙術 途絶!』
ワタシとサランが同時に拘束術を放つ。
けど、捕らえられない。ファーヴニルは残像を残すほどの速さで躱し、一瞬でワタシの眼前に迫っていた。
巨大な顎が開かれる。喰われる──!
ガギィン!!
金属音が響き、牙が目前で止まった。吹き飛ばされたはずのアレクサンドが戻り、張り直した守護術で防いでいた。
一瞬の攻防に、皆が言葉を失っている。
「これは驚いた……コイツ相当だね……」
「助かったわ……えぇ……速すぎるわね……」
「すまない、ボクが突き飛ばされるとはね……気合いを入れるよ」
アレクサンドの顔つきが変わった。ヘラヘラした優男の仮面が剥がれ、歴戦の戦士の顔になっている。
ファーヴニルの敵意は、初撃を防ぎきったアレクサンドに一身に向けられている。
「サラン! アレクサンドのサポートに回って! 彼を死なせないで!」
「分かりましたわ!」
「ルシフェル! テン! とにかく攻撃するわよ! 止まってちゃ的になるだけよ!」
「おう!」
瞬間移動レベルの速さから繰り出される体当たりは、単純だけど質量と速度が乗ってとてつもない威力だ。
アレクサンドはその動きに合わせて盾を傾け、衝撃を逃しながら耐えている。サランの高精度な強化術がなければ、盾ごと腕を持っていかれていたかもしれないわね。
『風魔術 風魔召喚!』
ルシフェルが放つ強力な風の刃がファーヴニルを襲う。
直撃コースだ。皆がヒットしたと思った。
しかし……ヤツは掻き消えた。
「どこいった!?」
「おい! 上だ!」
テンの叫び声に上を向いた瞬間、視界が真っ赤に染まった。
災害級の火魔法が、空から降り注いでくる。
『魔力吸収!』
ワタシは両手を掲げた。
間に合った。降り注ぐ炎の奔流を、全て体内に吸い込む。熱い、重い。けど、許容範囲内だ。
『解放!』
吸収した魔力に、さらに自然エネルギーを上乗せし、極限まで圧縮して空にいるファーヴニルに向け解き放った。
ドォォォン!!
空中で爆発が起きる。だが、次の瞬間、ファーヴニルは既に地面に戻り、アレクサンドに爪を振るっていた。
「なっ……なんなんだコイツの速さは!」
「クッソ……魔眼さえあれば、こんなトカゲ……!」
ルシフェルが悔しげに吐き捨てる。
……本当に瞬間移動してるのかしら。物理的な速度の限界を超えているように見える。
サランの決死のサポートを受けながら、アレクサンドは必死の防御を続けている。ワタシ達三人も隙を見て攻撃を繰り出すが、残像を斬っているようで手応えがない。ようやく掠る程度で、致命傷には程遠い。
最初は分散していたファーヴニルの敵意は、今は完全にアレクサンドに固定されている。
「もうコイツの敵意はボクから逸れることはないよ! 背中を気にするな、存分に攻撃してくれ!」
「分かったわ!」
ただ、速すぎる。
こちらの攻撃動作を見てからでも回避が間に合うほどの反応速度だ。
……どうすれば当たる? 予測して動くしかない。
「ルシフェルはヤツの上から! テンはワタシの反対側に行って! ワタシが攻撃するから、避けた隙を狙って斬りかかって!」
「分かった!」
二人が散開するのを確認し、ワタシは強化術を最大出力で掛け直した。
練気で爆発的に加速する。
愛剣デュランダルに全神経を集中させ、渾身の一突きをお見舞いしてやる。
「鬱陶しいわね! いい加減止まりなさい!」
『剣技 刺突剣!』
ワタシの渾身の一突きは、回避行動を取ろうとしたファーヴニルの左肩辺りを深々と貫いた。
……え?
当たった?
さっき一瞬、ファーヴニルの動きが不自然に止まったような……?
「シャァァァァ――ッ!!」
痛みと驚愕で、ファーヴニルはパニックに陥った。動きが鈍る。
「今よ!!」
ワタシの号令より早く、上空と側面から二つの影が襲いかかった。
ルシフェルが脳天から右肩ごと腕を斬り落とし、テンが足元を薙いで右脚を切断する。
巨体が崩れ落ちる。
ワタシもこの好機を見逃さない。
『剣技 光創の一撃!』
肩に刺さったデュランダルを引き抜き、練気の光を纏わせた刃を真上から両手で振り降ろした。
ズンッ。
赤い鱗も強靭な筋肉も関係ない。胴体が真っ二つに分断された。
「……やったわね……」
「あぁ……強かったな……マジで……」
動かなくなったファーヴニルの前で、皆、糸が切れたようにその場へへたり込んだ。
間違いなく、今まで戦った中で最強の相手だったわ。
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