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第五章 四種族対立編
失恋
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私には、リナさんがお皿を落とした原因が分かってる。あのタイミング。ユーゴの言葉を聞いた瞬間の、絶望したような顔。
私は急いで彼女の後を追った。
バックヤードの隅で、リナさんは同僚のメイドさんたちに慰められながら泣いていた。
「リナさん、大丈夫?」
「エミリー様……申し訳ございません……」
「謝る事ないよ。皆さん、リナさんと少しお話してきてもいいですか?」
「えぇ、では私達は持ち場に戻りますね。リナちゃん、大丈夫だからね」
同僚たちが気を利かせて戻っていく。
リナさんは皆の背中に深々と頭を下げている。
「ちょっと! リナさん手切ってるじゃん! ちょっと見せて」
破片を片付ける時に切ったんだろう、指先から血がポタポタと落ちている。
「あっ、これくらい大丈夫です!」
「ダメ。痕が残ったら大変だよ」
『治療術 再生』
傷口が塞がり、滑らかな肌に戻る。
「えっ……綺麗に治った……ありがとうございます」
「どういたしまして。……向こうで座って話そうよ」
私は魔法で水を出したコップを渡し、二人で夜風の当たるテラスのベンチに座った。
少しの間、沈黙が流れる。遠くから宴の賑わいが聞こえてくるのが、余計に切ない。
「エミリー様……私、無謀な恋をしてるって分かってました。叶うことなんてないって。でも……いざユーゴ様の口から、はっきりと交際相手のお名前が出ると……身体の力が、全部抜けてしまって……」
そう言って、リナさんは肩を震わせて泣き始めた。私は何も言えず、ただ彼女の華奢な背中をさすることしか出来ない。
「私……メイド失格ですね……公私混同して、あんなミスをして……」
「そんな事ないよ! リナさん程の気配りができるメイドなんて、探してもいないんだから!」
「……今日も、ユーゴ様に手作りのマドレーヌを差し上げたんです……用事なんて無いのに、クリーニングを口実にお休み中のお部屋をノックしてまで……。私……最低です……」
彼女の告白に胸が締め付けられる。
「そんな事ない。ユーゴに喜んで欲しいって、リナさんが一生懸命考えてとった行動だよ?」
でも、彼女は自分を責め続けている。
そして私も、自分を責めた。
私は言えなかった……。リナさんの気持ちを知ってたのに、ユーゴには大切な人がいるって、残酷な事実を言えなかった……。
期待を持たせたままにしてしまった私の罪だ。
涙が溢れてきた。どうする事も出来ない無力感。これが失恋なんだ。
私たちは二人で抱き合って泣いた。今の私には、一緒に泣いてあげることしか出来ない。
ひとしきり泣いた後、私は顔を上げた。
「よし! リナさん、遊びに行くよ! パーッと気晴らししよう! 次の休みはいつ?」
「えっ……? 宜しいのですか……? えっと、次のお休みは明日です」
「明日なの!? ジャストタイミングじゃん! 明日の朝、門前に集合ね! 美味しいもの食べて、買い物して、全部忘れさせてあげる!」
私の提案に、リナさんは驚いた顔をした後、顔をくしゃくしゃにしてまた泣き始めた。
「えっ……行きたくなかった……? ごめんごめん! 無理強いして!」
「違うんです……うぅ……エミリー様のお優しさが嬉しくて……ありがとうございます……」
リナさんは私の胸でしばらく泣き続けた。
そしてフゥっと大きく息を吐き、涙を拭いて立ち上がった。その瞳には、少しだけ光が戻っていた。
「よし……もう大丈夫です。お仕事に戻ります。エミリー様、本当にありがとうございました。明日、楽しみにしてます!」
◇◇◇
エミリーがリナさんを連れてホールに戻ってきた。
リナさんは少し目が赤いものの、毅然とした態度で皆に深々と頭を下げた。
「皆様、お騒がせして大変申し訳ございませんでした」
「いいょいいょ、仕事多いもんね……少しお休み増やしてあげてもいいんじゃない? レオナード」
「そうだなぁ……少し働き方を見直すべきなのかもね。皆の不満を聞くことにしよう」
「そんな! 滅相もございません! 私の不注意です!」
リナさんが慌てて手を振る。テキパキと元気な普段のリナさんに戻ったようだ。
「リナさん、怪我はなかった?」
「はい、驚かせてしまい申し訳ございませんでした……あっ、ユーゴ様、お飲み物はいかが致しましょう? グラスが空いていますよ」
「あぁ……そうだな、ビールお願いしようかな」
「かしこまりました! すぐにお持ちします!」
オレへの受け答えも、いつもの最高の笑顔だ。プロだなぁ。
宴会は大盛り上がりで終わった。
明日はエミリーとリナさんが出かけるらしい。二人には思いっきり楽しんできてもらいたい。
私は急いで彼女の後を追った。
バックヤードの隅で、リナさんは同僚のメイドさんたちに慰められながら泣いていた。
「リナさん、大丈夫?」
「エミリー様……申し訳ございません……」
「謝る事ないよ。皆さん、リナさんと少しお話してきてもいいですか?」
「えぇ、では私達は持ち場に戻りますね。リナちゃん、大丈夫だからね」
同僚たちが気を利かせて戻っていく。
リナさんは皆の背中に深々と頭を下げている。
「ちょっと! リナさん手切ってるじゃん! ちょっと見せて」
破片を片付ける時に切ったんだろう、指先から血がポタポタと落ちている。
「あっ、これくらい大丈夫です!」
「ダメ。痕が残ったら大変だよ」
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「えっ……綺麗に治った……ありがとうございます」
「どういたしまして。……向こうで座って話そうよ」
私は魔法で水を出したコップを渡し、二人で夜風の当たるテラスのベンチに座った。
少しの間、沈黙が流れる。遠くから宴の賑わいが聞こえてくるのが、余計に切ない。
「エミリー様……私、無謀な恋をしてるって分かってました。叶うことなんてないって。でも……いざユーゴ様の口から、はっきりと交際相手のお名前が出ると……身体の力が、全部抜けてしまって……」
そう言って、リナさんは肩を震わせて泣き始めた。私は何も言えず、ただ彼女の華奢な背中をさすることしか出来ない。
「私……メイド失格ですね……公私混同して、あんなミスをして……」
「そんな事ないよ! リナさん程の気配りができるメイドなんて、探してもいないんだから!」
「……今日も、ユーゴ様に手作りのマドレーヌを差し上げたんです……用事なんて無いのに、クリーニングを口実にお休み中のお部屋をノックしてまで……。私……最低です……」
彼女の告白に胸が締め付けられる。
「そんな事ない。ユーゴに喜んで欲しいって、リナさんが一生懸命考えてとった行動だよ?」
でも、彼女は自分を責め続けている。
そして私も、自分を責めた。
私は言えなかった……。リナさんの気持ちを知ってたのに、ユーゴには大切な人がいるって、残酷な事実を言えなかった……。
期待を持たせたままにしてしまった私の罪だ。
涙が溢れてきた。どうする事も出来ない無力感。これが失恋なんだ。
私たちは二人で抱き合って泣いた。今の私には、一緒に泣いてあげることしか出来ない。
ひとしきり泣いた後、私は顔を上げた。
「よし! リナさん、遊びに行くよ! パーッと気晴らししよう! 次の休みはいつ?」
「えっ……? 宜しいのですか……? えっと、次のお休みは明日です」
「明日なの!? ジャストタイミングじゃん! 明日の朝、門前に集合ね! 美味しいもの食べて、買い物して、全部忘れさせてあげる!」
私の提案に、リナさんは驚いた顔をした後、顔をくしゃくしゃにしてまた泣き始めた。
「えっ……行きたくなかった……? ごめんごめん! 無理強いして!」
「違うんです……うぅ……エミリー様のお優しさが嬉しくて……ありがとうございます……」
リナさんは私の胸でしばらく泣き続けた。
そしてフゥっと大きく息を吐き、涙を拭いて立ち上がった。その瞳には、少しだけ光が戻っていた。
「よし……もう大丈夫です。お仕事に戻ります。エミリー様、本当にありがとうございました。明日、楽しみにしてます!」
◇◇◇
エミリーがリナさんを連れてホールに戻ってきた。
リナさんは少し目が赤いものの、毅然とした態度で皆に深々と頭を下げた。
「皆様、お騒がせして大変申し訳ございませんでした」
「いいょいいょ、仕事多いもんね……少しお休み増やしてあげてもいいんじゃない? レオナード」
「そうだなぁ……少し働き方を見直すべきなのかもね。皆の不満を聞くことにしよう」
「そんな! 滅相もございません! 私の不注意です!」
リナさんが慌てて手を振る。テキパキと元気な普段のリナさんに戻ったようだ。
「リナさん、怪我はなかった?」
「はい、驚かせてしまい申し訳ございませんでした……あっ、ユーゴ様、お飲み物はいかが致しましょう? グラスが空いていますよ」
「あぁ……そうだな、ビールお願いしようかな」
「かしこまりました! すぐにお持ちします!」
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宴会は大盛り上がりで終わった。
明日はエミリーとリナさんが出かけるらしい。二人には思いっきり楽しんできてもらいたい。
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