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ススム編、第一章。《Lv255の赤ちゃん爆誕》
16《イノセントロアー》
しおりを挟む目を疑う程に広い、ここが……与えられる領地ってやつなんだなと、俺は改めて感動している。
うちの母さんでも驚きが隠せない様子の広さは確か、初期段階で1つの県が収まるぐらいの大きさだって、何気ないチャットでフレが言ってた気がするな。
「ここって……全部、ススムの領地になるのかしら……」
「まぁそうなるらしいね」
「ほへぇ~……」
驚くのも無理はないな。なんせ俺たちの住む家、あれですら土地代で結構な額するからな。
こんな広い土地をポンっと渡されるのは、正直普通の人なら何をどうしていいかわからなくなるもんだと思う。
「ごろごろ~ごろごろごろ~」
逆に広い草原に転がるこの、ノーテンキなねこのこの神経が特殊ってもんだ。
「まぁ僕の土地って言っても、結局は魔物を飼ったり精霊を作ったりして人員を増やして、お店とかを作って外から人に来てもらうから、案外自由に使える土地は限られてると思うけどね」
基本的に領地は自分のギルドの資金源になるぐらいにしか考えたこと無かったもんな。
「それに経済が得意なギルドメンバーが増えなきゃ、そもそも管理するのが大変だし、今後少しづつ触ってく感じかな」
得意げにぺらぺらと喋る僕に母さんは言ってくる。
「…………ススム、本当にあなたって……」「あっ」
しまった!! ここまで知ってたらおかしいし、流石の母さんに怪しまれ……と、まぁ僕はこの人の事をまだまだ分かってなかったようだな。
「本当に良くお勉強してるのね……母さんも少しはススムを見習って勉強しないといけないわ」
うん、今回は母さんのこの鈍感さ加減に助かったけど……僕も母さんは人に騙されないために、勉強を少しした方がいいと思う。
「さて、とりあえず……」
僕は悩む母さんを置き去りに手を前方に構える。
なんせ僕はこの世界は完全にやり尽くした訳だからな。
新作の方はした事ないが、今のところ旧作と全くおなじの世界、たぶんそろそろ現れるはずなんだ。
と、俺が予想するように、まず反応したのはねこのこ。
「にゅ! はは、ねこのこと居る!」
ふむ、なんだかんだでねこのこは使えるのかもしれない。
変な気配を察知したんだろう、ごろごろ転がってたのにサッと立ち上がり、母さんの前に立った。
つまりまぁ……この世界での初戦闘となる訳だな。
本来なら、領地が手に入る段階で出てくる敵だから、序盤の終わりの方の敵だな。
ここだといざとなればライフリングで逃げることが出来るし、1度戦いってもんは体験しときたかったんだ。
「ねこのこ、今回は僕に任せてくれないか?」
「にゅ? ちちは1人で戦え!」
あっ……はなからそのつもりだったのね……
「はは、ねこのこ守る」
……いつも思うけど、ねこのこって俺にだけ扱い酷い時ないか?
まぁいいけど
俺たちの前の地面がぼこぼこと盛り上がって行く。
めリ上がる地面の音なんて、ゲームの中だけだと思ってたが……実際に聴くと、本当にあるんだなって思ったよ。
めりめりめりと地面の中にある硬い部分が割れるような擦れるような音。
どんっ! と振動とともにまず出てきたのは苔の生えた岩の腕、地面を鷲掴みにその巨体を引き上げ姿を現した。
ーーユグシルトゴーレムが出現しました。
頭の中に声が聞こえてくると、目の前にメニューと同じような可視化された文字が表示された。
名前《ユグシルトゴーレム》種族《ゴーレム》
世界樹ユグドラシルの葉に産まれるという、全身が岩で出来たゴーレムの一種。ゴーレムの起源とも言われるユグシルトゴーレムは、ユグドラシルが葉に付く虫を払う為に産むとされている。
岩で出来た肉体はとても頑丈で、ちょっとやそっとの攻撃ではダメージを通すことは無い。
……ふむふむ、つまり俺たちはユグドラシルからしたら、葉に付く害虫みたいなものって訳だな。
「ススム、大丈夫なの!?」
「ん? 多分大丈夫かな、攻撃パターンは全部覚えてるし」
「……攻撃パターン……って、そこまで勉強してるの!?」
「……………あっうん」
むしろ逆にこの人に怪しまれる方が難しいと思うわ。
とりあえずだな、このユグシルトゴーレムってのは、レベル上げの時に散々湧きスポで倒しまくったからな……楽に倒せるとは思うんだ。
まずは流石にこの一歳半の身体で普通に戦うのは無理。
なので……《ウィンドウェア》身体に風を纏い、空中で戦うことにする。
空を翔け、とりあえず一直線にゴーレムを通り過ぎてみる。
ごごごっと岩が摺れる音、振り返る俺の視線の先に居るゴーレムなのだが、やはりというか「ヘイトはやっぱ俺だな」これなら母さんやねこのこが襲われる心配はないから気軽にやれそうだな。
「……ていうかこれ、俺が空中にいる限り……攻撃されないんじゃ……」
これにてクソゲーが完成、そういやユグシルト・オンラインの世界において……空飛ぶ敵は沢山いたが、空を飛べるプレイヤーは居なかったからな……陸上の魔物に対して、オリジナル魔法でこうして空飛ぶ俺は無敵なんじゃ……
なんかチートしてる気分でやるせないが、一応ここはゲームの世界と似てるとはいえ、ゲームと違って命があるからな。
「死ぬ可能性は極力避けたのがいいし悪く思うな……げっ!?」
ズドン!! 一瞬爆発音のような音が聞こえた気がした。
そしてそれに気付いた頃には俺の身体は何やら巨大な岩に囲まれていた。
一瞬で俺は理解した。
「飛べるのね?」
ゴーレムの腕力は軽く岩を砕く程だと聞いた事がある。
俺の赤子の身体はそのゴーレムの手に、ガシッと掴まれたのだった。
「……!!?? ススム……ススム!!!!」
「にゅ? ちち、死んだ?」
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