33 / 82
ススム編、第一章。《Lv255の赤ちゃん爆誕》
32《シルマ》
しおりを挟む魔物の緊急討伐依頼を達成した俺達。
家に帰ると、出迎えてくれるのは当然母である。
むぅ~~にゅぅ~……最っ高、生きててよかったわ。
やっぱこれだと思うわ、この包み込むような胸を惜しげも無く使い抱きしめてくれる。
赤ちゃんとして転生したんだ、このぐらいないとやってられないからな。
だからさ
「むぅ」その汚物を見るような目で俺を見るのはやめていただきたい。
流石のねこのこも母のする事には口を出さない。出さないが……
「貸せ」「あら? ねこのこちゃんも寂しかったの?」
適当にコクコクと頷くねこのこ。
えっ、やだ、やめて……「かっかあさんがいい!!」
「こらこら、ねこのこちゃんだって寂しい思いしてたのよ? 迎えにも来てくれたんでしょ?」
母さん、あんた美人だし包容力あるし女として最高だと思うわ……けどな、ほんと……人を見る目だけ養った方がいいと思う。
そんな俺の思いも虚しく、ひょいっと無慈悲に渡される俺、迎え入れるのはねこのこ。
「……ちち」
この抱っこされ至近距離で見るねこのこ、これだけならやっぱ可愛いんだよな。
でも……「いでで……いでででで!!! いってーーーーよ!!!! やっ優しく抱いてくれぇーー!!!」
この間、ねこのこは俺を普通に抱けたことがある……つまり、これはわざとだ。
わざわざ何も無い頑強な胸にぐぐぐぐっと強く押し付けてくるあたり、まじで凶悪きまわりない。
「ふふ、ススムったら、大きな声出してはしゃいじゃって」
耳鼻科も行った方がいいと思う。
ところで俺は思ってたんだ。
こいつらなんで着いてきたんだ?
魔物討伐を終え、この2人の故郷であるド田舎村を通ったってのに、何故かここまでついてきて、今は現状においてけぼりを食らったのか黙って立ちつくしている奴ら。
シルマとりおんだな。
シルマってのはおじいさんのこと、なんか自己紹介が遅れたとかで名前を教えてきた。
……今日でどーせ合わなくなるのにな~なんて思ってたが……?
そのシルマ、ようやく意を決したのか、もがく俺を放置して母さんに礼儀正しく頭を下げ言う。
「すみません、お楽しみ中のところ申し訳ないのですが、少しよろしいでしょうか?」
なんか……すげぇ紳士だ。
ド田舎村の時、1度家に帰ってから来たのだが、服もおじいさんっぽい服から、やたらと真面目そうな紳士服に着替えてる。
黒いハットを片手に、母さんに頭を下げてる姿……大人だ。
なんか、ねこのこと母さんと暮らしてたせいだろうか? 別人種に感じてしまうのだが……
けど、俺が驚くのはここからだった。
「……あっ、これはこれは……とても丁寧にありがとうございます」この人、普通に対応したが……外面はこんな感じなのか? 女ってすげぇ……ただのちょっとネジが取れた優しい母親じゃなかったんだな。
で、母さんはいいとしてだな……シルマ、わざわざ母さんに挨拶したってことは……この家に何か用ってことなのか?
なんて思いつつ、何故か次はリオンに抱かれながら俺は話を聞いている。
「突然ですが……単刀直入に申し上げます」
「あっはい」
「私を、この赤子……いえ、勇者ススム殿の傍に置いては頂けないでしょうか!!」
「へ?」「え?」「にゅ?」
俺、母さん、ねこのこ、同時に反応した。
……えと、俺ってば……さすがにおじいさんには興味が……それならまだ、こっちのぺたん娘だけど美少女達の方……が……
「いでででで!!! なっなにすんだリオン!!」
「ススムが悪い事言ってる気がしたんだけど……」
こいつもねこのこ並の直感の持ち主!?
「りおん、ねこのこにそれ貸せ」
「ふぇ? うっうん……」
「いっ!? 痛い痛い痛い!!??」
誰か、赤ちゃん虐待でこいつを捉えて欲しいんだけど!?
なんて、2人によく分からんが心を読まれ虐められる中、勝手に話しは進んでいた。
「ご丁寧に、あとはススムに決めてもらってください」
「かしこまりました、親切にありがとうございます」
この2人の大人っぽい会話、だと言うのに何故中身は大人の俺が……
「ねっねこのこちゃん、それやりすぎじゃ……」
「だいじょぶ、ちち、つよい」
ふむ、たしかに慣れたがな……なぜ俺は今、逆さで宙ぶらりんにされてるのだろうか?
ていうか、俺もそっちの大人の会話に混ぜて欲しい。
と、ここでようやく声がかかった。
「勇者殿、良ければ私の腕をあなたのギルドで役に立てて貰えないだろうか? 2度失うはずの命を救ってもらった恩、返すにはあなたのそばでつかえさせて頂きたい」
何を今更こんな喋り方で畏まってんだろ、まぁでも……ぷるぷる震える声よりマシか……俺の傍で……
「ならさ、とりあえず……助けてくんね? 俺は今この2人に殺されそうなんだ」
「ふむ? …………その程度の事で勇者殿が死ぬとは思えませんが……ねこのこ殿、それにりおんよ、何に怒ってるのか分からぬが、わしの顔に免じて1度許してもらっても良いかの?」
……いやいや、そんな言葉だけで許してくれるなら、そもそも俺はこんな目にあってな……あれ?
何故か足にかけられた風魔法ウィンドハンドはすぐに解かれた。
「ちち、ゆるす」
「おじいちゃんがそう言うなら……」
あらら、なんかすごい簡単に許された……
「んっしょっと……」ウィンドウェアで宙に浮き、俺は言う。
「ならば今後、俺の身を守る役目をお願いしよっかな……」
「かしこまりました」
ふむ、これで今後……俺はこの子供二人に虐められずに済みそうだな。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる