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ススム編、第一章。《Lv255の赤ちゃん爆誕》
34《面倒臭い》
しおりを挟む今日もいつも通り朝の特訓という名の虐待を受けた俺は、ようやくの自由時間をゴロゴロ……
はせず、領地にある家の中で、1つの書類に目を通し悩んでいる。
「……どうすんだよこれ」
うちのギルド、本来なら俺はまだ赤ちゃんだしな~って理由でほったらかしとくつもりだったんだけどな……
今回、剣聖であるシルマ、それにまだ初級ではあるにしろ、冒険者であるリオンがギルドの一員に加わったことで、少し面倒なものが届いたんだ。
それはまぁ、ギルド維持に必要になる、ノルマの引き上げが書かれた書類だな。
王都から来たんだが……そういや、このゲームって……ギルメン増えたら、ギルド維持に必要な貢献ポイントってのを毎月増やす必要があるんだったと、今更ながらに思い出したよ。
「はぁ……にしてもまじかぁ」
いやさ、別にそれだけなら良かったんだ。
シルマなんてほっといたら勝手に依頼達成してくるから、剣聖分の貢献ポイント、りおんのなんてついででポイント達成してくるから問題ないんだ。
ただ面倒だと思ったのはこっち。
《ランクアップクエストのお知らせ》
ギルド、イノセントロアー殿へ、魔王の幹部撃退の貢献を称し、此度、ギルドのランクアップが可能となりましたことをお知らせします。
つきましては、ギルド、イノセントロアー殿は今回行われるランクアップクエストに参加する義務があります。
ランクアップクエストを達成出来なかった場合は、ギルドランクが1つ下がりますのでご注意下さい。
……ほぼ半強制的なイベント。
ていうか、考えてみたらこれ……かなり無理やりだよな。
ギルドってのはギルメンさえ居なければ……持つ必要がないからどうでもよかったんだがな。
領地だけお得に手に入る、それだけで良かったというのに……今回、シルマとリオンがギルドに参加したことで、正式なギルドに認定されたって訳だ。
そうなるとまぁ俺の領地はギルドって事になる。
ギルドになったって事はそりゃギルドランクってのがある。
そして……現在のギルドランク、下位5級魔道士ギルド。
1番下の1番最低ランクのギルドだな……うん。
そんなギルドがもしもランクを落としたらどうなると思う? 答えは簡単だ……何も変わらない。ではない……
このクソゲー世界、絶対俺のしてたユグシルト・オンラインと同じ設定なんだろ?
つまりあれだ、1番最低ランクのギルドがランクダウンした場合だな、答えはとても簡単。強制解散。
領地は取り上げられ、領地に建てた建物は没収、次に領地を手に入れるには1年後、しかも結局ランクアップクエストとやらに、1人で挑む必要が出てくる。
…………いやまぁ、別にギルドなんて無くなっていいと思うんだけどさ。
最近母さん、領地の家に居ることが多くなってて、俺のプレゼントって事で大変お気に入りな様子なんだよな。
「……やるしかないかぁ」
この肉体に転生したせいからだと思うけど、なんとなく……母さんの悲しむ顔って、想像もしたくないぐらい嫌なんだ……はぁ。
♢
という訳で、母さんが夜ご飯を作ってる間に早速相談。
「いてら」という名の独断を押し付けられた俺です。
「えっ……ねこのこ、こないのか?」
「ちち、ねこのこに頼る、ロリコン」
……言葉の使い方間違ってる。ていうか……「俺はロリコンじゃねぇ」ここだけはしっかり訂正させてもらおうか……
「マザコン」
……………………………………………
「ちっちが!?」
「ちち、おそい、認めた」
「……もうなんでもいいわ、とりあえず……ねこのこは来ないんだな」
「ちち、1人でやる、強くなれ」
そういやこいつ、勇者をサポートする生き物だっての忘れてたわ……簡単そうなクエストは1人で行って経験値稼げってことね。
あわよくば、ねこのこのスイッチ入って全部やってくんねぇかなぁ……なんて思ってたが、そう上手くいかないか……
ちなみにシルマとリオン、2人はギルドに来た2泊3日の依頼に出掛けたんだよな、だから……今回はマジで一人で行くことになりそうだ。
「ふふ、母さんついていってあげよっか?」
「それだけは断る」
「えぇ~母さんショック~」
……受けてない癖に、ねこのこがマザコンとか言ったから、俺をからかってるのは丸わかりなんだよ……ったく。
「はいはい、俺一人で行ってくるよ……」
ちなみにランクアップクエストは明日、内容は現地に到着してから発表とのこと……ゲーム通りなら一番最初のランクアップクエスト、大したクエストじゃない事は確かなんだけどな……
なんと言うか、この間のこともあって……1人がちょっと心細かったりするだけ……はぁ、なんか情けないな俺。
んーにしても、最初のランクアップクエストとかぜんっぜん覚えてないなぁ……確か、ギルメン全員で行って……俺は何もせずに終わった筈なんだが……何もしてないからこそ、内容がぜんっぜん出てこない。
まぁでも、なるようになるよな?
「おまたせ! 今日のご飯はススムが明日何が来ても勝てるように、カツカレーよ!」
をを、カレーの匂いがしてたから、すごく嬉しかったんだが……まさかカツまで乗ってるなんて!!
無駄にテンションが上がるな、なんか明日余裕な気がするわ。
なんて……ちょろい俺、嬉しくて母さんにお礼を言う。
「母さんありがと………え」つもりだったんだけど……
何故か俺の目の前から、目にも止まらぬ早さでカツが消えた。
「もぐもぐ」
俺の目の前、ハムスターかってぐらいに口いっぱいに頬張りくってる猫1匹「ごくり、うまま……はは、うまい!」
何が起きてるのか? もう硬直するしかない俺にその猫は自慢げな表情でニヤッと八重歯を覗かせ言ってきた。
「ちち、おそい」
ああ、どうしてくれようかこのクソ猫……
「…………」俺の……俺の……俺の……
プツンっ、何かが切れる音と同時に俺の口は開く。
「こんの……ばっ!!! ………あれ?」
絶対許さんと切れようとした俺の目の前、そっと置かれたのは……カツ???
「ふふ、ねこのこちゃん? おかわりはあるんだから、他の人の食器からご飯を取っちゃダメよ? せっかく可愛いのにはしたないと勿体ないからね?」
さすが母さんだ……ねこのこの行動を読んでて、取るのを怒らず……こうして優しく説教しつつ、俺の怒りも静まるようにもう1つ用意してるとは……
「母さん、大好き!!」
俺はこの人が母さんでよかった……カツは大好物だ、カレーも勿論大好物、もう少しで……俺は、俺を抑えきれなかった。
そして口に運ぶカツ、サクッとしてて……カレーの香ばしい香りが食欲をそそる。
幸せが訪れるだろうその時、ぼそっと言われる。
「マザコン」
「……………………………………………………………」
否定できない虚しさを胸に、俺はカツカレーを堪能し、明日のランクアップクエストに備えるのであった。
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