37 / 82
ススム編、第一章。《Lv255の赤ちゃん爆誕》
36《VSサウザントライス》
しおりを挟むトクトクトクトクトクトクッ
俺は改めて思う。赤ちゃんの心臓音って速いのな。
そんな心音が気になる程に緊張してる自分、本当に早く終われと切に願いつつ、けれどその時は来て欲しくないと矛盾した思考の最中、その時は容赦なく訪れる。
「では、両ギルド……入場です!!!!!!」
わぁーーーーーーーーー!!!!!
大盛り上がりを見せる会場、ビビる俺の先を越して入場する向こうの選手が見える。
ゾロゾロゾロと……数は目視出来るだけでおよそ20。
「……なんで下位ギルドにそんなに人数集まってんだよ!」
もう心の声を抑えきれず零してしまう。
「あれ? イノセントロアーの方~もう入場は始まってますよー?」
そんなこと言われなくてもわかってらい!!
ちなみに俺の横にいる係の人、赤子の俺に行けと言うのが無理なんだろう、どうしようどうしようと焦りつつも何も言ってこない。
「はぁ……仕方ない、さっさと負けて終わるかな」
流石に数が違いすぎるからな、これはもう強さ云々じゃない。やる前に勝負は決してるってもんだ。
盛り上がりを見せる会場だったのだが、とことことこと歩き現れた俺のせいで、どよどよとしたざわめきへと変化する。
「え? 赤ちゃん……よね?」
「……これは演出か?」
「変身魔法……にしては、赤ちゃんの姿でなんて……卑怯だわ」
まぁこうなるのは分かってた、分かってたが……逃げたらランクダウンの領地没収、母さんとねこのこに合わせる顔がないからな……
「こっこれはどういうことでしょう!? イノセントロアーギルド、現れたのはどう見ても赤子1人!! 変身魔法なのか? はたまた身体を消す魔法で隠れているのか!? 先程の開会式でも確かに団長として現れていた赤ちゃん!! なぞだぁーー!!」
最終わからんならいちいち解説すな、というか……真面目に恥ずかしいからさっさとして欲しい。
とりあえず中央でたってる俺、正面にいるのは茶髪の金ピカの装備来た坊ちゃんみたいなやつ。
「ん?」と俺を見て何か言いたげだな。
「どうかしました?」
目線がムカつくので聞いてみた
「いやな、イノセントロアーには元剣聖が入ったと情報を聞いてたから驚いたんだ……まぁでも、考えてみたら俺たちサウザントライスにビビって逃げてもおかしくはないな、なんせ俺たちは下位ギルドの中でもかなり上位に与するギルド、元剣聖とはいえ所詮年寄り、恥をかくだけだもんな! あーはっはっはっ!」
なんか腰に手を当てて高笑いをしてる。
………あっこいつムカつくわ。
「では、両者挨拶も済んだところで……これより、トーナメント式総力戦、下位ギルドランクアップクエストを開始します!!
第1試合、サウザントライスVSイノセントロアー、両者正々堂々戦うように……初め!!!!」
と、言われてもな。
「ほらガキンチョ、さっさとギブしろ、どーせ代打か何かでギブだけしに来たつまらねぇギルドなんだろ? お前みたいなのぶっ飛ばしたらこっちの評価が落ちちまう、ほら、待ってやるからさっさと泣きわめいてギブアップでもなんでもしたらいい、なんならこの俺様に一撃だけ攻撃をさせてやろうか? そしたら力の差がありすぎましたァ~って言い訳も立つぞ」
……………ふむ。
「なら、お言葉に甘えて一撃だけいいかな?」
「ん? ようやくギブする気になったか、ほらここ、しっかり狙えよ~」
と、なんか腹のとこを指さしてる。
腹か……どうしたもんか……まぁ死なないだろ。
にしても、俺……どうしてこんなにイライラしてんだろ?
まさかシルマを馬鹿にされたからか? でも俺って別にシルマの事をそんなに好きでもないんだよなぁ。
なんせ毎日毎日、飽きもせず毎朝やる気のない俺に頑張りましょうって声掛けてきて、半強制的に特訓をやらされる。
しかも俺ってば……シルマにまだ一打も攻撃を入れられたことがない、どちらかと言えば……少しムカつくぐらいだな。
「どうした? びびって小便でもちびっちまったか?」
笑い声が聞こえる。こいつだけじゃない、こいつの周りにいる奴らも大声で笑っている。
いやまぁ、正直……俺は赤ちゃんだし、舐められて当然だから笑われてもそんなにムカつかないんだよな。
「はぁ……わかったわ」
「ん? なんだ? 何しても俺たちに勝てないことがわかったのか?」
こいつの言ってることは的外れだな。
俺がわかったのはまぁ、どうしてこんなに苛つくのか、だ。
俺は俺自身をどれだけ言われようが、むしろ油断してくれてるラッキー! ぐらいにしか考えないんだけど、どうも俺……昔っから────
「俺の事はいい、けどな……ギルメン共のこと言われて、イラつかない団長は居ないってことがわかったんだよ!!!」
「何言ってんだこのガキ、初戦代打の分際で団長発言かよ!」
どうやらこいつらは俺の敵ではないなって事もよく分かったわ。
俺はシルマとの特訓において、自分がどれだけ頑張っても……シルマに対してまともな方法じゃ永遠に一撃も入れられないってことが分かった。
だから……俺はシルマに教わりつつも、シルマを追い詰める別の方法を考え続けたんだ。
そして、一昨日、1番最後にシルマと手合わせした日、一撃は入れられなかったものの……かなりいい線までいった、自分の持つ能力を最大限生かし、かつ剣を使った戦闘法。
「なっなんだ!!??」
今更になって気付いたようだな、やはり雑魚どもと言った所かな?
俺がしたのは異空間収納から剣を取り出し、それをウィンドハンドで操ってるだけの簡単な事だ。
異空間収納ならば剣は幾らだって持ち歩ける、ウィンドハンドなら数十本の剣ぐらいなら簡単に操れる。
新たな剣技、シルマはそう言ったあと名付けてくれた。
「《魔手剣術法、阿修羅》」
「なっなんだよ、こんなもん……聞いたことねぇぞ!!!!」
もう既に散布は済んでいる、他の奴らは声も出せないぐらいにびびっているな。
まぁ当然だろう、こいつら全員の後頭部に剣の切っ先を立てさせてもらっているからな。
「さて、どうする? お前は腹に一撃受けるだけで済むが、他の奴らは確実に死ぬ、ギブアップするかしないか、決めさせてやる」
形勢逆転といったとこか、多勢に無勢……まぁこの様子だと普通にやってもぶっ飛ばせてたが、調子に乗ってた罰だな……沢山の観衆の面前で恥をかかせてやる。
「……………いやだ」
「ん?」
「いやだいやだいやだ!!! 俺のギルドは最強なんだ!! 絶対ギブアップなんてするもんか、ギルメンなんてまた集めりゃいいだけだ……それにお前、これだけの魔法を使ってんだし、こいつらを殺ってる間なら、俺はお前を倒せるってことだろ?」
あっこいつ、そういうタイプのやつだったの?
0
あなたにおすすめの小説
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる