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ススム編、第一章。《Lv255の赤ちゃん爆誕》
37《甘えん坊赤ちゃん》
しおりを挟むふむふむ、なんだろう……こいつに腹立てた俺が情けないというか……
やる気が失せたな。
「ははっやはり図星だったか」
このサウザントライスの団長さんが嬉しそうに吠えてる理由は、俺がこいつの仲間たちから剣を撤収したからだろうな。
なんか俺がやばいと思って剣を引っ込めた。そんな勘違いしてるようだけど……もちろん理由は違う。
単純に俺が剣を引っ込めた理由、それは俺が剣を突っ立ててたせいで、びびって何も言えなかったみたいだからな、優しい俺はこうして剣を引いたんだ…………ふむ。
やはりというか、まず最初に言葉を発したのはそのサウザントライス団長のすぐ後ろにいた女性団員。
凄く怒った様子で、俺の剣より貫くんじゃないか? ってぐらい容赦なく言い放つ。
「……団長、仕事だからと我慢してましたがもう無理です……私は今を持ちまして、ギルドを脱退させてもらいます!!」
まぁ当然の結末なんだよな。
本来なら団長ってのは団員を守るもの、それをああも簡単に切り捨てようとしたんだからさ。
「は? 何言ってんだお前!! 今はランクアップクエスト中だぞ!!」
怒る団長さんだが、こうなる事を考えられなかった、考えの浅い残念なやつだな。
1人が言い放つと続くように次々と声が上がる。
「私も辞めます」「俺も」「あー無理」「なんで俺こんなギルドに入ったんだろ、辞めるわ」「勝手に俺様ギルドやってろっての、俺も降りるわ」「お前が死ね!」
もうなんか、半分ぐらい悪口だもんな。
流石に気付いたか? よろける団長さん。
「なっなんなんだ!? なにが……もしかしてお前か!? 精神コントロール系の──」全然自分の言った事に気づいてないみたいだな。
見た目通り、頭の中もガキってとこか? こりゃそもそも団長に向いてないわ。
団員は見事に全員脱退、こうなると……あの団長1人なのだがな、こうなるとまぁ1つ問題がある。
馬鹿なこいつは現状を理解してないようなので、わかりやすいように提案をもちかけよう。
「そう思うならそう思ってたらいい、ところでどうするかな? 確かこの試合のルールって、どちらかのギルド団長が負けを認める、もしくは戦闘不能になるまで決着がつかないんだけどさ」
「………何が言いたいんだ?」
こいつ、本当に馬鹿だよなぁ。仕方ないしはっきり言ってやろう。
「お前弱いだろ? だからまぁ……団員が居なくなって、多勢に無勢じゃなくなった今、俺に万に一つも勝つ可能性はない。
そうなるとただの弱いものいじめになっちまうからさ、ギブアップしてくれないかなって思ってさ?」
いや、別に煽ってないぞ? これは真実で……嘘偽りない俺の本音。
だからまぁ
「おっおおお……!! 俺様を舐めてんじゃねぇーーーーー!!!!!」
こうやって、ブチ切れて襲ってくるのは計算外だよ? うん。
それに自業自得とはいえ……少し可哀想だなーって思ってもいるよ? うん。
とはいえ……だ。
「がはっ!!!」
容赦はしないんだけどな。
突撃する身体の意志とは無関係に、半回転した後、遠く離れた観客席の壁を砕く勢いで激突したのは、もちろんサウザントライスの団長。
「やっぱ弱いものいじめになってしまった……」
俺のこぼす言葉のすぐ後、少しの沈黙の後にそれは鳴った。
「けーーーーーーっちゃくーー!!!!! まさかまさかのどんでん返し!!! 下位ギルドの中で上位に君臨するサウザントライス!! 突然1人になってしまった団長だったが、赤子相手に果敢に挑むも呆気なく沈没!!! 長い長い会話の後、勝負は一瞬!! 先程入った情報によれば、そちらにおられる赤ん坊はまだ2歳、けれど驚くなかれ!! 1歳半の診断の際……彼は、なんと!! 神級の魔法適性と診断された神童!! 今回のランクアップクエスト、波乱の予感がします!!」
……うっわぁ……余計なこと言うなよ……
俺の一撃によって盛り上がった会場だったのだが、今は恐ろしいぐらいに静かになってしまっている。
神級って嘘だろ? とか、なんの誤診だよ、とか、でも本当だったら魔王を……などなど、言いたい放題な状況だな。
そしてこいつらもこいつらだよな。
「どうしよう……こんな辞め方したら、他のギルドに入れるかどうか……」
「ウザかったけど……俺、ギルド辞めてしまったら、家族を養えないかも……」
……ふむ、まぁ確かに最低な団長だけどな、ギルド自体は言うなれば会社みたいなもの、そりゃまぁ突然辞めたらこうなるわな。
「うちなんて、来月の家賃払えなかったら家追い出されちゃう……家にはまだ、産まれたばかりの赤ん坊だっているのに」
………………………「はぁ」ほんと、ため息でるわ。
「おいお前ら、交換条件だ」なんで俺って、こんななんだろ。
「……?」驚いた様子で俺の方を見る元サウザントライス団員達に俺は言う。
「今回のランクアップクエスト、俺は1人だからな……まぁ、もしも手伝うってんなら、うちのギルドで雇ってやるぞ」
「……!!」
俺の言葉にズラっと俺の前に並ぶ冒険者達。
「「「「お願いします!!!!」」」」
本当都合がいいというかなんというか、でも……これをほっとけなかった俺も大概、馬鹿だよなぁ……はぁ
「ならそのサウザントライスの制服を今すぐ捨てろ」
俺の言葉に一同は一斉に上に羽織るサウザントライスの紋章が付いた服を捨てた。
……にしても、全員弱っそうだなぁ……
でも、言ってしまったものはしょうが無い、こいつらはまぁあれだ……シルマに育ててもらおっと! 俺しーらね!
てなわけで、何か知らんがうちのギルド、20人程冒険者が増えた。
そしてまぁ、そんな数の冒険者を雇うなら……
「ちなみにうちはまだ最低ランクのギルドだからな、この数雇うには最低でも準決勝ぐらいには勝ち進んで下位ギルド2級になる必要があるから、よろしくな~」
適当すぎだろ!! とか言われると思ったんだけどな。
「はい!! 全身全霊で頑張ります!! えぇと……」
なんかこいつら、気合い入りすぎじゃね? まぁいいけど
「俺の名前はススムだ、一応団長兼勇者にもならないといけない可哀想な赤ちゃんだから、俺を全力で甘やかすように!! 特に女性に抱かれるの大好きだからよろしくな!!!」
「はい!!!!」
すっごい真面目に返事する新たなギルメン達。
俺は思った。
……ここは突っ込んでくれなきゃ、俺マジに甘えまくるぞコノヤロー
なんかこいつら、好きかもしれない。
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