56 / 82
ねこのこ編予告、第一章《偽りのねこのこ》
09《最強の幼なじみ》
しおりを挟むねこのこの身体からはもう闇の魔力は溢れていなかった。
「……ススム……ごめんなさい」
「……お前はまた、そうやって……俺には見せないんだな」
魔力が出ていない。
その理由を一目ですすむは悟った。
ねこのこと共に育ったすすむにとっては、それはあまりにも簡単な事だから理解した。
ねこのこが……目の前のススムに何もしたくない、自身の中にある醜いそれを、進むの前で見せたくない、その一心で闇の魔力を堰き止めているからだと──
「……ススム、あのね……もう、ダメだから……逃げて……」
「はは、何言ってんだよ……我慢なんてする必要ないさ、俺は……その為にこうして強くなったんだからな」
ねこのこが必死に抑えている、今こそが……殺すのに絶好の機会。けれど勇者は手を出さない。
そしてそれを咎めるものは誰もいないだろう。
これが今生の別れだと言うことを皆が理解しているから……
「……えへへ、ススム……ごめんなさい、私ね……こんな時なのに……凄く嬉しいの」
「はは、それを言うなら俺もだな、ようやく……ずっと勝てなかったお前に勝てるんだしさ」
「うん、今のススムなら大丈夫……だよ……ね、はるるも……居るし……だから、ちゃんと、今度は……殺してね!」
「ああ、約束だからな……お前にもうこれ以上……怖い思いはさせねぇ!!」
「うん! あのね……私、みんなが……だーいすき──」
潜む闇を必死に繋ぎ止めていた最後の鍵は、友への信用と言う形で解かれた。
「ねこのこ!!!」「ねこのこちゃん!!!!」
泣く事を辞めた天は、まるでどうしようも無い物語に腹立てるように雷を纏い轟いた。
「はは……ふはははは!!!! とうとう手に入れたぞ!!」
空高く突如舞い上がったねこのこは歓喜を上げるように叫んでいる。
勇者は剣を再び強く握りしめた。
大賢者は杖に想いを再び込める。
「魔王の肉体に脆弱な心など不要!! 無駄に足掻くこれの精神力には苦労したが……肉体だけは歴代魔王の中でも最強……ははは!! ようやくだ……ようやく世界を滅ぼせる!!」
長く紡いだ幼なじみ達の物語にハッピーエンドはもう訪れない。
どう転んでも訪れるのはバッドエンド。
けれど勇者も大賢者も諦めていない。
「ふぅ……ねこのこの為とはいえ、黙ってるのはきついものがあるな」
「ねこのこちゃん……ボクは君が絶望して終わる世界なら、そもそも救う気なんてないよ!」
2人は力を抑えていた……いや、振るえなかった。
大切な女の子に、大切な親友に……
そんなことが出来るわけが無い──
「ねこのこちゃんは強い、弱くなんてない……あなたはボクの大切な友達を傷付け過ぎた……もう手加減なんてしてあげない!! あなたは滅ぶべき存在だから!!」
大賢者の光の魔力は突如膨れ上がり、いつの間にか大陸すら飲み込む程に強大となっていた。
「なっ!? なんだこれは!!!」
その光は巨大すぎる故、魔王種であるねこのこの精神をも破壊しかねないとハルは抑えていた。
光の魔力は魔神王の精神を容赦なく犯し、その動きの一切を封じ込めた。
「ねこのこが頑張ってくれたからな、俺達はその間に充分強くなったって訳だ……だからまぁ、出てきたとこ悪いが……さっさと死んでもらうぜ!!! 魔神王!!
その身体に──お前みたいな醜い心は──似合わねぇ!!」
勇者の剣は雷鳴轟く暗雲をも切り裂く巨大な光の聖剣となる。
勇者はこの日、この時、この瞬間の為だけに、自らの魔力を生命力すらを全て聖剣へ注ぎ込んできた。
「なんだ……なんなんだお前らは!!!!」
「その子の……「そいつの……「「幼なじみだ!!!」」
振り下ろされた聖なる剣はとうとう魔神王の身体を切り裂いた。
聖なる剣は邪な心のみを切り裂く。
「ぐっ……ぐあーーーーーーーー!!!!!!! 許さぬ……許さんぞ人間どもぉ……だがな、この娘だけを助けたつもりだろうが……そうはいかん、我らは怨念……その娘の中で永遠を生きる者、その娘が子を産めば子に移ろう、更にその子にも移ろう、いずれ……闇の心を持つ者が表れし時……ふたたび……」
数十年にも渡る物語はようやく幕を降ろそうとしている。
産まれた日より身体に闇を抱えていた少女の身体は、生まれて初めて優しい友達により作られた光に包まれた。
凶悪な魔王の角は消え去り、赤い魔物の瞳はエメラルドの美しい瞳を取り戻し、妖美なまでに成長した身体もまた……幼き、あの日のままの小さな身体へ──
0
あなたにおすすめの小説
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる