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脱線し始めた少年の人生

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 その日は、顔には表情として出ないが朝から精神ココロが『楽』という気持ちに支配されていた。久方ぶりな、家族でお出かけの日だ。そして、自分の誕生日でもある。
 蕪崎尚和かぶさきなおかずは、昨日の夜からワクワクしていてなかなか寝付けなかった。
 「ふぁーぁ」間の抜けたあくびが出てしまう。
 「尚ちゃん。早く支度しないとおいていくわよー?」
 「だからさ、もう尚ちゃんはやめてくれよ。母さん。俺はもう高校生なんだから」
 「あら? 私にとっては尚ちゃんが例え何歳になろうが尚ちゃんですよ? 私がお腹を痛めて産んだ大切な子供タカラモノなんだから」
 「あー、わかったから出てくれよ。これじゃ支度出来ないから」
 「はいはい」
 尚和の母である順那かずなとの会話のキャッチボールはここで終わった。

 着替えを済ませ、階段を早足で降りていく。

「お? 重役のお出ましか」
「茶化さないでよ。父さん」
「冗談だ。誕生日おめでとう、尚和」
そんな言葉を交わしながら朝食の席へと着いた。
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