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6.実技判定
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(うぅ、頬、舐められた……)
私はなんだかげっそりと次の検査会場に向かって、歩みを進めていた。さっきのオーランドとの邂逅で、私のなかの何かかにかがゴッソリと削られた気がする。
記憶に残るゲームのなかでは、にっこり笑って属性を判定するスチルしかないはずだったから、油断していた。
あんなセリフも頬を舐めることもなかったはずなのに……!
朝もアルレーヌとキースと遭遇してしまったし、何か変わってるんだろうか……?
う、それはまずい……んじゃ……。考えたくない。
魔力属性の判定の後に、今度は普段は騎士が使う広い闘技場にて魔力の測定がある。魔力測定はいわば実技披露みたいな感じで、自分の魔力でなにか得意な魔法を発動させるものだ。そして実技の高さで、それに見合ったクラス分けがされる。
(うーん、私、本当に大したこと出来ないんだけどなぁ……)
私が一人思案していると、他方から歓声が挙がった。
そちらに目をやると、歓声の先にアルレーヌがいた。測定に参加することになったのだ。王族はそれでなくとも、きらめく金の髪をもち、測定なんて必要ないほどの魔力をもつから、ここにいるのは義理かなと思ったのに。
ゲームにそんなイベントあったっけ?
皆の視線を一身に受け、アルレーヌは、ふ、と微笑みを返した。
女生徒から悲鳴に似た歓声があがる。
(うっっ! なんて微笑みの破壊力!! アルレーヌの王子オーラヤバい!!)
腹黒でヤンデレなことを知っていてなお、アルレーヌの一つ一つの動作は本当に美しい。
アルレーヌは左手を、スッと掲げると、光輝く弓を顕現させた。
アルレーヌの背の半分はあろうかという大きな弓。
それだけでも周囲からは感嘆の吐息が漏れる。
そして見る間に、右手に眩しい光が集中して段々と輝く矢の形をつくっていく。
輝く弓と矢を持つアルレーヌは息をのむ程美しい。
アルレーヌは鷹揚な微笑みをこちらに向けると、それを構え、光の矢を虚空に向けて放った。
光の矢はキラキラと光の飛沫をあげて、シュンッという音と共に消えていった。
その神々しさと言ったら、本当天の使いなんじゃないかと、その場にいた皆が呼吸を忘れて見惚れてしまった程だ。
「きゃあー!アルレーヌ殿下ぁ~~~!!」
女生徒から上がる黄色い歓声に、アルレーヌは片手を挙げてこたえて、また微笑みを浮かべる。
(うん、自分の美貌を称えてくれる子猫ちゃんはかわいいよね。ナルシストだし)
次はキースもやるみたいで、他方からも歓声が上がった。まぁ主人のあの姿を見たら、近衛もやらざるをえないのかな。
近衛のキースはその冷たい容貌に反して、表面はにこやかで、一見すれば軽率そうな雰囲気すら持っている。
(まぁこれは周囲に対する警戒されないための処世術であって、中身は立派なヤンデレなんだけどね)
キースはいつものように、にこにこと口元に笑みを浮かべて、周囲に一礼すると、近衛にだけ学園の中でも帯刀が許されている剣を抜いた。
周囲が「あっ」と声を発するや否か、剣がビシビシっと冷気を纏う。
キースは白い冷気を纏った剣を、素早くザクッとその地面に突き刺した。
すると、そこから白い冷気の道筋がピキピキと走り、キィンッと大きな音をたてて、50メートル程離れたところに鋭く巨大な氷柱がそそり立った。
その一瞬の出来事に、周囲から歓声が挙がる。
(おぉーーー! 実際見るとアルレーヌといい、キースもかっこいい~~!!)
歓声を挙げる生徒たちに礼をとったキースを眺めながら、私も拍手を送った。
そう、この誰ともかかわらず、傍観者の、それこそゲームを操作する側視点でこの世界を生きたい……。私のことは壁のシミとでも思ってもらえれば……。うぅ、関わり合いにならないことを切に祈ろう……。
私はなんだかげっそりと次の検査会場に向かって、歩みを進めていた。さっきのオーランドとの邂逅で、私のなかの何かかにかがゴッソリと削られた気がする。
記憶に残るゲームのなかでは、にっこり笑って属性を判定するスチルしかないはずだったから、油断していた。
あんなセリフも頬を舐めることもなかったはずなのに……!
朝もアルレーヌとキースと遭遇してしまったし、何か変わってるんだろうか……?
う、それはまずい……んじゃ……。考えたくない。
魔力属性の判定の後に、今度は普段は騎士が使う広い闘技場にて魔力の測定がある。魔力測定はいわば実技披露みたいな感じで、自分の魔力でなにか得意な魔法を発動させるものだ。そして実技の高さで、それに見合ったクラス分けがされる。
(うーん、私、本当に大したこと出来ないんだけどなぁ……)
私が一人思案していると、他方から歓声が挙がった。
そちらに目をやると、歓声の先にアルレーヌがいた。測定に参加することになったのだ。王族はそれでなくとも、きらめく金の髪をもち、測定なんて必要ないほどの魔力をもつから、ここにいるのは義理かなと思ったのに。
ゲームにそんなイベントあったっけ?
皆の視線を一身に受け、アルレーヌは、ふ、と微笑みを返した。
女生徒から悲鳴に似た歓声があがる。
(うっっ! なんて微笑みの破壊力!! アルレーヌの王子オーラヤバい!!)
腹黒でヤンデレなことを知っていてなお、アルレーヌの一つ一つの動作は本当に美しい。
アルレーヌは左手を、スッと掲げると、光輝く弓を顕現させた。
アルレーヌの背の半分はあろうかという大きな弓。
それだけでも周囲からは感嘆の吐息が漏れる。
そして見る間に、右手に眩しい光が集中して段々と輝く矢の形をつくっていく。
輝く弓と矢を持つアルレーヌは息をのむ程美しい。
アルレーヌは鷹揚な微笑みをこちらに向けると、それを構え、光の矢を虚空に向けて放った。
光の矢はキラキラと光の飛沫をあげて、シュンッという音と共に消えていった。
その神々しさと言ったら、本当天の使いなんじゃないかと、その場にいた皆が呼吸を忘れて見惚れてしまった程だ。
「きゃあー!アルレーヌ殿下ぁ~~~!!」
女生徒から上がる黄色い歓声に、アルレーヌは片手を挙げてこたえて、また微笑みを浮かべる。
(うん、自分の美貌を称えてくれる子猫ちゃんはかわいいよね。ナルシストだし)
次はキースもやるみたいで、他方からも歓声が上がった。まぁ主人のあの姿を見たら、近衛もやらざるをえないのかな。
近衛のキースはその冷たい容貌に反して、表面はにこやかで、一見すれば軽率そうな雰囲気すら持っている。
(まぁこれは周囲に対する警戒されないための処世術であって、中身は立派なヤンデレなんだけどね)
キースはいつものように、にこにこと口元に笑みを浮かべて、周囲に一礼すると、近衛にだけ学園の中でも帯刀が許されている剣を抜いた。
周囲が「あっ」と声を発するや否か、剣がビシビシっと冷気を纏う。
キースは白い冷気を纏った剣を、素早くザクッとその地面に突き刺した。
すると、そこから白い冷気の道筋がピキピキと走り、キィンッと大きな音をたてて、50メートル程離れたところに鋭く巨大な氷柱がそそり立った。
その一瞬の出来事に、周囲から歓声が挙がる。
(おぉーーー! 実際見るとアルレーヌといい、キースもかっこいい~~!!)
歓声を挙げる生徒たちに礼をとったキースを眺めながら、私も拍手を送った。
そう、この誰ともかかわらず、傍観者の、それこそゲームを操作する側視点でこの世界を生きたい……。私のことは壁のシミとでも思ってもらえれば……。うぅ、関わり合いにならないことを切に祈ろう……。
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