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12.キースの妹
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「え、そうなの?」
「えぇ、また王都で貴族令嬢の誘拐があったそうよ。……なんでも、キース様の妹君も数年前あったことがあるそうね……」
「そんなことが……」
"誘拐"衝撃的な単語にしばし言葉を失う。
「以前噂を聞いたことがあるの。誘拐から半年程たって発見されたそうよ。その後のお話は聞かないわね。なんでも領地で静養されているそうだけど……」
「それは辛い話ね……。キャロラインも貴族令嬢じゃない、気を付けないと!」
「そうね……。私の住んでいた領地では聞いたことがなかったけど、王都周辺では何年か前からあるらしいわね。貴族ばかり狙うなんて、本当恐ろしいわ……」
今日も学園の中央に位置する大きな中庭でいつものようにキャロラインと昼食をとっていた。ここは他の生徒も多く昼食をとっていて、朗らかな昼下がりの光景そのものだ。
この学園は私のような一般市民は少ないほうで殆どの多数が貴族の令嬢、子息たちだ。そこの生徒に係るところで、そんな事件が起こっているなんて……。
「あ」
(思い出した……! これキースのルートに関係する……!)
「? どうしたの? セラ」
「う、ううん、なんでもない! 本当に! キャロラインも気を付けて!!」
「? うん、わかったわ?」
「ふぅ……」
その日の授業を終え、寮に戻った私はため息をついた。備え付けの自習用の机、そこの椅子に腰をかけた。
今日キャロラインからもたらされたショッキングなニュース。……今私はとっても悩んでいる……。と、いうのもキースのこと。
キースのルートはGOODもBADもどっちもお断りなので、キースとは関わりあいにならないようにするっていうことで良かったんだけど、思い出してしまったことがある。
キースがヤンデレ化するのには、原因になる、ある事件がある。
……その原因となった事件とは、キースの妹エリーゼが行方不明になってしまうというものだ。
社交界デビューを果たしたばかりだったエリーゼは、お披露目の舞踏会が開かれたその次の週、お茶会からの帰り道、王都で忽然と姿を消した。
ここ数年貴族の令嬢ばかりを狙った誘拐が頻発しているらしい。そしてその誘拐の不可解な点は、特に身代金などの要求もなく、攫われる令嬢に共通点もないこと。神隠しのように、突如としてその場から姿を消してしまうということだ。
そして数か月したらまたふらりと姿を現す。だが、戻ってきたとしても皆同様にその間の記憶を失くし、殆どがまともな自我が残っていない。
半年程で、エリーゼは発見された。……そして生還を喜んだのも束の間、御多分にもれず、記憶を失くし、エリーゼは言葉すら発することが出来なくなっていた。
それ以来エリーゼは感情を表すこともなく、領地に閉じこもったまま……。
それがあってキースは「大切なものは奪われないように、閉じ込めておかなければならない」という思いを強くしてしまうんだ。
そしてキースは犯人一味を、エリーゼの自我を取り戻す方法を、探し続けている。学園の魔道士にも尋ねてまわっているシーンがあった。
この事件が語られるのはキースルートの時だけなんだけど、オーランドルートの時に、私との亡命を企てていることを察知したキースが、オーランドに向かって事件の存在を匂わせるセリフを言うことがある。
(「オーランド、君は大切なものを見つけてしまったんだね。ダメだよ、大切なものは奪われないように閉じ込めておかないと。後悔することになるよ」)
いやいや、監禁すすめんな。
まぁ、そんななので、誰のルートでも表立って語られるかどうかの違いだけで、きっと発生している事件なんだと思う。
今日キャロラインから聞かされたことで、それが奇しくも証明されてしまった。
―――月の魔力は癒しの力。もしかしたら、私のもつ月の魔力なら、エリーゼの傷ついた心身を癒すことができるかもしれない……。
「でもなぁ……」
机に突っ伏す。
私のような一同級生以下の、認識されているかも怪しいレベルの女に「あなたの妹さんを助けたい」なんて言われて、誰が信用するだろう?
よくある、”あの日あの時に戻れたら”っていう話。戻れて、例えば自然災害を伝えたとして、動いてくれる人がどれだけいるんだろうか……。
しかも、ひと一人の命がかかっているとはいえ、動機はキースのヤンデレ回避、しいては私のBADエンド回避。結局は私自身の幸せのためだなんて……。
……すごく悩む……。
「……会ったこともない、しかもキースの妹だけど、みすみす放っておけないし……」
『助けを求めるひとに手を貸さないことは、それ自体が悪ですよ』
育ての親のマキアの言葉が耳にこだまする。
うん……、やっぱり信じてくれるかどうかは別として、今の私のできることはしておこう。もしキースが信じてくれたら、助かる人は私もいれて3人だから。これは大きい。
「よしっ!」
……という訳で、逡巡を終えた私は今日入手してきた魔石をもった。
魔力を使い果たした後の空っぽの魔石。石の塊のように、何の輝きも纏っていない。使用済みの魔石は、魔法科棟に無造作に落ちているものを見繕ってきた。
成功するかは分からない。でもゲームや伝説にあるような月の魔力ならば、きっと……!
両手で包むように石をもった。
今日は運よく満月だ。月の力を借りて、祈りを込める。
私はカーテンを開けて満月を見つめた。瞼を閉じ、すぅっと深呼吸をする。
(どうか、どうか加護を…!月の女神様…どうか癒しの力を貸してください…!)
私を覆うようにして白銀の煌めきが広がる感覚があった。その魔力を魔石に込めるように祈りを続ける。
(どうか、どうか―――!)
どのくらいの時間そうしていただろうか。
いつも通りしばらくしたら、月の魔力が凪いで弱く消えていってしまう、それでも消えていくまで祈りを続けた。
「……できた……?」
そこには先ほどの灰色の塊ではなく、乳白色と銀のまだら模様になった魔石があった。
次の日、Aクラスの近くでオーランドと話しているキースを見つけた。
キースはいつもアルレーヌに付き従うか、アルレーヌがいない時は女子生徒達に囲まれている。運よく、今日はアルレーヌは王城に行っていて不在のようだ。
キースのファンの女子生徒達の前で贈り物を渡す勇気はないけど、まぁオーランドならいいかな。
「―――キースさまっ」
「はい……? あぁ、貴方はCクラスのセレーネ・アイルス嬢ですね。どうされましたか?」
そういって、キースは人当たりのいい社交スマイルを向けてきた。
「は、はい、あの……!」
「……君、何を持っているの? 魔力の気配を感じる……」
ずいっ、オーランドが向き合った私とキースの間に、顔を突っ込んでくる。
「ぅえっ!? いえ、あの、あの……、キース様にご静養されている妹君がいらっしゃるとの話を聞いたものですから……、。教会で祈りを込めたお守りをさしあげたくて……、」
「……お守り、ですか?」
キースの顔が胡乱に、不愉快そうに歪む。
……そうだよね、やっぱりよく知らない女にいきなりこんなこと言われてもね……。でもうまく話す方法なんて思いつかなかった。
キースにキャーキャー言ってる他の女生徒と同じでもいいから、これをエリーゼに渡してもらえればそれでいいんだけど……。
「へぇ……、これ、すごいね……」
「わっ!」
私が持っていた魔石のネックレスの入った包みをひょい、とオーランドがつまみ上げた。
「キース、これ、すごい……膨大な魔力が、込められている。こんなの、見たことない。すごい癒しの力……、祈りの力を感じる」
「……それほどですか?」
よしっ!キースが興味を持った!
「はい、私のいたフィオーナの教会では、癒しや守りのお守りを作っていたんです。どうぞこちらをお持ちください」
包みからネックレスを出したキースが驚愕に目を見開く。
「ですが、確かにこちらはすごい魔力が込められているようですが……? これは君が?」
「……えっと……、私は教会の教えの通りに祈っただけで……、魔力のことはヨクワカリマセン……」
「ぷっ」
横でオーランドがこみ上げる笑いに肩を震わせている。
え、何かおかしいこと言った?私。
「くくっ……、キース、もらっておいた方が、いい。それはきっと、エリーゼの心を、癒すはず」
「オーランドがそこまで言う程ですか……。セレーネ嬢、……それではお言葉に甘えていただきます」
「はい! 気休めにしかならないかもしれませんが、どうぞ!」
お引止めしてすみませんでした~!と私は足早にそこを立ち去った。
チラリと振り返るとオーランドはまだ肩を震わせていた。そんなにおかしいこと言ったかなぁ……? でも受け取ってもらえて良かった。
まぁBADエンド回避の為にも、出来ることからコツコツと! うん!
「えぇ、また王都で貴族令嬢の誘拐があったそうよ。……なんでも、キース様の妹君も数年前あったことがあるそうね……」
「そんなことが……」
"誘拐"衝撃的な単語にしばし言葉を失う。
「以前噂を聞いたことがあるの。誘拐から半年程たって発見されたそうよ。その後のお話は聞かないわね。なんでも領地で静養されているそうだけど……」
「それは辛い話ね……。キャロラインも貴族令嬢じゃない、気を付けないと!」
「そうね……。私の住んでいた領地では聞いたことがなかったけど、王都周辺では何年か前からあるらしいわね。貴族ばかり狙うなんて、本当恐ろしいわ……」
今日も学園の中央に位置する大きな中庭でいつものようにキャロラインと昼食をとっていた。ここは他の生徒も多く昼食をとっていて、朗らかな昼下がりの光景そのものだ。
この学園は私のような一般市民は少ないほうで殆どの多数が貴族の令嬢、子息たちだ。そこの生徒に係るところで、そんな事件が起こっているなんて……。
「あ」
(思い出した……! これキースのルートに関係する……!)
「? どうしたの? セラ」
「う、ううん、なんでもない! 本当に! キャロラインも気を付けて!!」
「? うん、わかったわ?」
「ふぅ……」
その日の授業を終え、寮に戻った私はため息をついた。備え付けの自習用の机、そこの椅子に腰をかけた。
今日キャロラインからもたらされたショッキングなニュース。……今私はとっても悩んでいる……。と、いうのもキースのこと。
キースのルートはGOODもBADもどっちもお断りなので、キースとは関わりあいにならないようにするっていうことで良かったんだけど、思い出してしまったことがある。
キースがヤンデレ化するのには、原因になる、ある事件がある。
……その原因となった事件とは、キースの妹エリーゼが行方不明になってしまうというものだ。
社交界デビューを果たしたばかりだったエリーゼは、お披露目の舞踏会が開かれたその次の週、お茶会からの帰り道、王都で忽然と姿を消した。
ここ数年貴族の令嬢ばかりを狙った誘拐が頻発しているらしい。そしてその誘拐の不可解な点は、特に身代金などの要求もなく、攫われる令嬢に共通点もないこと。神隠しのように、突如としてその場から姿を消してしまうということだ。
そして数か月したらまたふらりと姿を現す。だが、戻ってきたとしても皆同様にその間の記憶を失くし、殆どがまともな自我が残っていない。
半年程で、エリーゼは発見された。……そして生還を喜んだのも束の間、御多分にもれず、記憶を失くし、エリーゼは言葉すら発することが出来なくなっていた。
それ以来エリーゼは感情を表すこともなく、領地に閉じこもったまま……。
それがあってキースは「大切なものは奪われないように、閉じ込めておかなければならない」という思いを強くしてしまうんだ。
そしてキースは犯人一味を、エリーゼの自我を取り戻す方法を、探し続けている。学園の魔道士にも尋ねてまわっているシーンがあった。
この事件が語られるのはキースルートの時だけなんだけど、オーランドルートの時に、私との亡命を企てていることを察知したキースが、オーランドに向かって事件の存在を匂わせるセリフを言うことがある。
(「オーランド、君は大切なものを見つけてしまったんだね。ダメだよ、大切なものは奪われないように閉じ込めておかないと。後悔することになるよ」)
いやいや、監禁すすめんな。
まぁ、そんななので、誰のルートでも表立って語られるかどうかの違いだけで、きっと発生している事件なんだと思う。
今日キャロラインから聞かされたことで、それが奇しくも証明されてしまった。
―――月の魔力は癒しの力。もしかしたら、私のもつ月の魔力なら、エリーゼの傷ついた心身を癒すことができるかもしれない……。
「でもなぁ……」
机に突っ伏す。
私のような一同級生以下の、認識されているかも怪しいレベルの女に「あなたの妹さんを助けたい」なんて言われて、誰が信用するだろう?
よくある、”あの日あの時に戻れたら”っていう話。戻れて、例えば自然災害を伝えたとして、動いてくれる人がどれだけいるんだろうか……。
しかも、ひと一人の命がかかっているとはいえ、動機はキースのヤンデレ回避、しいては私のBADエンド回避。結局は私自身の幸せのためだなんて……。
……すごく悩む……。
「……会ったこともない、しかもキースの妹だけど、みすみす放っておけないし……」
『助けを求めるひとに手を貸さないことは、それ自体が悪ですよ』
育ての親のマキアの言葉が耳にこだまする。
うん……、やっぱり信じてくれるかどうかは別として、今の私のできることはしておこう。もしキースが信じてくれたら、助かる人は私もいれて3人だから。これは大きい。
「よしっ!」
……という訳で、逡巡を終えた私は今日入手してきた魔石をもった。
魔力を使い果たした後の空っぽの魔石。石の塊のように、何の輝きも纏っていない。使用済みの魔石は、魔法科棟に無造作に落ちているものを見繕ってきた。
成功するかは分からない。でもゲームや伝説にあるような月の魔力ならば、きっと……!
両手で包むように石をもった。
今日は運よく満月だ。月の力を借りて、祈りを込める。
私はカーテンを開けて満月を見つめた。瞼を閉じ、すぅっと深呼吸をする。
(どうか、どうか加護を…!月の女神様…どうか癒しの力を貸してください…!)
私を覆うようにして白銀の煌めきが広がる感覚があった。その魔力を魔石に込めるように祈りを続ける。
(どうか、どうか―――!)
どのくらいの時間そうしていただろうか。
いつも通りしばらくしたら、月の魔力が凪いで弱く消えていってしまう、それでも消えていくまで祈りを続けた。
「……できた……?」
そこには先ほどの灰色の塊ではなく、乳白色と銀のまだら模様になった魔石があった。
次の日、Aクラスの近くでオーランドと話しているキースを見つけた。
キースはいつもアルレーヌに付き従うか、アルレーヌがいない時は女子生徒達に囲まれている。運よく、今日はアルレーヌは王城に行っていて不在のようだ。
キースのファンの女子生徒達の前で贈り物を渡す勇気はないけど、まぁオーランドならいいかな。
「―――キースさまっ」
「はい……? あぁ、貴方はCクラスのセレーネ・アイルス嬢ですね。どうされましたか?」
そういって、キースは人当たりのいい社交スマイルを向けてきた。
「は、はい、あの……!」
「……君、何を持っているの? 魔力の気配を感じる……」
ずいっ、オーランドが向き合った私とキースの間に、顔を突っ込んでくる。
「ぅえっ!? いえ、あの、あの……、キース様にご静養されている妹君がいらっしゃるとの話を聞いたものですから……、。教会で祈りを込めたお守りをさしあげたくて……、」
「……お守り、ですか?」
キースの顔が胡乱に、不愉快そうに歪む。
……そうだよね、やっぱりよく知らない女にいきなりこんなこと言われてもね……。でもうまく話す方法なんて思いつかなかった。
キースにキャーキャー言ってる他の女生徒と同じでもいいから、これをエリーゼに渡してもらえればそれでいいんだけど……。
「へぇ……、これ、すごいね……」
「わっ!」
私が持っていた魔石のネックレスの入った包みをひょい、とオーランドがつまみ上げた。
「キース、これ、すごい……膨大な魔力が、込められている。こんなの、見たことない。すごい癒しの力……、祈りの力を感じる」
「……それほどですか?」
よしっ!キースが興味を持った!
「はい、私のいたフィオーナの教会では、癒しや守りのお守りを作っていたんです。どうぞこちらをお持ちください」
包みからネックレスを出したキースが驚愕に目を見開く。
「ですが、確かにこちらはすごい魔力が込められているようですが……? これは君が?」
「……えっと……、私は教会の教えの通りに祈っただけで……、魔力のことはヨクワカリマセン……」
「ぷっ」
横でオーランドがこみ上げる笑いに肩を震わせている。
え、何かおかしいこと言った?私。
「くくっ……、キース、もらっておいた方が、いい。それはきっと、エリーゼの心を、癒すはず」
「オーランドがそこまで言う程ですか……。セレーネ嬢、……それではお言葉に甘えていただきます」
「はい! 気休めにしかならないかもしれませんが、どうぞ!」
お引止めしてすみませんでした~!と私は足早にそこを立ち去った。
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